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韓国ドラマ「病院船」から(連載200)

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  韓国ドラマ「病院船」から(連載200)



「病院船」第19話➡執刀医の不在②


★★★


 この病院で移植手術をさせるのか―それともよその病院に転院させるのか―。
 ソン・ウンジェの手術の決定要望とドゥソングループ・チャン会長による転院指示の狭間で、キム・スグォンの心は揺れ続けた。そして時間は流れた。
 チャン会長はソファに腰をおろした。
 ウンジェとキム・スグォンは立ったまま動かない。
「座ってください」
 チャン会長は言った。
「ソン先生を追い出して2人で話そう」 
 チャン会長に話しかけられる度、キム・スグォンの顔は歪みと苦悩を深めていく。彼にとってチャン会長の言葉は常に威圧的だった。
 彼はいきなりドア口に向かって歩き出す。ドアの取っ手を握ると勢いよく後ろ手で閉めて姿を消した。




 カン・ドンジュンとミョン・セジュンが事の成り行きを心配し、廊下で様子を窺っていた。
 キム院長が1人部屋を出て歩き去ったのを見て2人は顔を見合わせた。ありえない展開となったからだ。
「手術どうするつもりなんだ? やらないつもりなのか?」
 カン・ドンジュンは言った。
「手術を許して、病院を廃業しろとでも言いたいのか?」
「手術をしなければ患者は死ぬんですよ」
「本当に無理か?」
「何がです?」
「手術ですよ。ミョン先生が手術しては?」
「…すみません」
 ドンジュンはミョン・セジュンを見た。
「まったくもどかしいね。目の前に外科医がいるっていうのに・」
 呆れたようにして歩き出す。
「どこへ行くんです?」
「院長の所へ・」
「説得を?」
「わからないよ」
 ミョン・セジュンは頭を掻きむしった。
「何か手はないのか・!」


★★★


 キム院長がいなくなりウンジェはチャン会長と向き合った。
「手術を許可してください。会長が許してくだされば、院長も手術室を使わせてくれます」
「そんなに手術がしたいかね?」
「はい」
「では、しなさい」
「許可してくださると?」
「ただし、条件がある」
「…」
「記者を集めるから、病院船について話してほしい」

「非難をしろとでも?」
 チャン会長は笑った。
「私はそこまで非情ではない」
「…」
「数か月とはいえ、世話になった職場を非難しては道理に反する。ただ、問題点を指摘してくれればそれでいい」
「問題点とは何ですか?」
「無料診療」
「…」
「病院船がタダで診療をするのは間違ってる。問題点も多い。無料診療など絶対やってはいけない。この点だけしっかり強調してほしい」
 ウンジェは口を挟まない。黙っている。1人の命をこんな議論ですり減らしてる場合ではなかった。
「無料診療に対しては先生も私と同意見では?」
「なぜです?」
「あなたは、専門医になるため11年もの歳月を費やした。そして今日に至るまで、寝食を惜しみ、手術に励んで来たじゃないか。その立派な技術を無償で提供すべきではない」
「会長」
「ここは資本主義社会だ。稼ぐチャンスは無限にある。だから必要なものは自分で稼いで買えばいい。もちろん、”健康”も例外ではない」
「…」
「ソン先生のような有能な医者は、その技術を高く売るべきだ。違うかな?」
「いいえ」ウンジェは首を振る。「私の考えは違います」
「違う」チャン会長はメガネの位置を直す。「無償で構わないと?」
「そうです」
「心が広いな」
「称賛する相手が違います」
「確かに。先生は道庁から給料をもらってる身だ。ではこういう話か。税金だからジャンジャン使ってもいいと?」
「そういうことではないです」 
「ろくに働きもしない貧しい連中をなぜ国が面倒を見るのだ? こんな理不尽な話はない」
「懸命に働いても恵まれない人は大勢います」
「働いていれば貧乏になどなるはずはない。単なる言い訳だ」
「その考えには反対です。万一、会長の意見が正しいとしても、働かない人や貧しい人、誰であろうと病に苦しんでいるなら無条件に治療すべきです」
「無償でか?」
「可能な限り、です」
「先生は意外と曖昧なところがあるね。まるで理想主義者だ」
「その理想主義がご子息を救ったのかもしれません」
「…!」
「私は交通事故の患者を救ったのであって―ドゥソングループの後継者を救ったわけではありません」
「…」
「事故当時―ご子息は身分証を持っていませんでした。身元不明だからと彼を見捨てていたらどうなりますか?」
「…」
「身元不明者を手術する場合―意識が戻らなければ、手術費を受け取れません。救急室では珍しくない。お金を払えない患者は救うなという声もあります」
「…」
「もし私も、事故現場でそんな計算をしていたら、ご子息は亡くなっていたでしょう」
「私の息子を助けたと恩に着せるのか?」
「健康をお金で買えば、その瞬間から人の命に値段をつけることになります」
「いいですか、ソン先生。あなたは善人か―それとも偽善者か?」
「…」
「人の命は平等だと―本気で思っているのかな?」
「いいえ」
「では、どういうことだ」
「命の不平等をなくすために、医療は無償で提供されるべきなのです」
「患者の名前はキム・ソンヒ?」
「そうです」
「患者を救いたいか?」
「当然じゃないですか」
「ならば取引に応じなさい」
「命で取引はしません。命は1つです。その価値は神であっても決めることは許されません」
「…」

「どうか、賢明なご決断をお願いします」
 ウンジェは深々と頭を下げた。
「残念だが、話はもう終わりだ」
 チャン会長は立ち上がった。ドアを開けて無言で出ていった。

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