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カン・ミンジュの愛（１）
このドラマに登場する人物たちはそれぞれがキラキラ個性を放っている。
現実世界の人間たちが平板な生活を営んで見えるのは、日々揺れ動く感情を周囲の状況に合わせて抑制し、押し殺しながら生きているからだ。
つまり現実世界の人々のドラマ性は多くがひとりの心内に留まり、他者と触れ合うことなく水面に浮いた泡のように潰れ、大量に消えていっている。
なので現実世界の営みの多くは目に見えない部分で留まっている。
それらの心内の泡を因果性で拾い集め、ストーリーとして与えられてくるのがドラマや小説である。
なのでドラマや小説で偶然や偶発が多いのを笑っていてはドラマや小説の面白さの可能性を否定するか放棄するのと同じと言ってよいだろう。
ウンチェの学友として登場するカン・ミンジュは
財界大物の娘で血統と女優としての名声をほしいままにしながら、プライドと誇りを持ち、奔放で好色な女を世間に印象付けている。
父親は財力にまかせて愛人を何人もつくり、母親は何年も前に若い燕をつくって飛び出したまま家には戻ってこない。
ミンジュは早くしてそんな両親に失意を覚え、愛に飢えた娘となった。自分を包み込んでいる風も空気も空も緑も街も行き交う人も薄っぺらな感触しかもたらさない。彼女には現実のすべてが色あせて感じられる。彼女は現実に背を向け、虚構の世界に惹かれていった。
虚構で愛の世界を遍歴する女優業は自分にふさわしいと思い、ミンジュは芸能界に飛び込んだと見られる。その気持ちを現実でも奔放な女として反映させるのを彼女は厭わなかった。
すり寄ってくる男とも格で見合うなら、愛の感情がなくとも付き合って夜を共にする。ただし、相手に飽きたらすげなく捨てる。世間はそんな彼女に奔放でスキャンダラスな女と見るようになっていた。
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