


韓国ドラマ「30だけど17です」(連載204)
「30だけど17です」最終話(幸せの扉)②
☆主なキャスト&登場人物
○シン・ヘソン➡(ウ・ソリ)
○ヤン・セジョン➡(コン・ウジン)
○アン・ヒュソプ➡(ユ・チャン)
○イエ・ジウォン➡(ジェニファー(ファン・ミジョン)
○チョ・ヒョンシク➡(ハン・ドクス)
○イ・ドヒョン➡(トン・ヘボム)
○チョン・ユジン➡(カン・ヒス)
○ユン・ソヌ➡(キム・ヒョンテ)
○チョ・ユジョン(イ・リアン)
○ワン・ジウォン(リン・キム)
○アン・スギョン(チン・ヒョン)
★★★
近くで別のため息が聞こえ、ソリは思わずそっちを見た。
チャンの姿が目の先にある。
「そこにいたの?」
チャンの言葉も同じだった。
「何? おばさんも悩み事?」
ソリは萎れた表情になった。
「チャン君も?」
「うん…」
2人は大きくため息をついた。
★★★
翌日、チャンはすっきりした気分でコーチの前に立った。
コーチは黙って頷いた。
ソリもチャンを見て行動しようと思い立った。
まずリン・キムにメールを返した。
― 思ったより早く、一緒に演奏できそうです。では、ベルリンで。
この返信をリン・キムは喜んで受け止めた。
「私もあなたと早く一緒に演奏したい」
そしてドイツ行の準備は着々と進み、その前日を迎えた。
ソリは航空券を前に思案した。
あたふた準備を進めてきたものの、心の隅に何かもうひとつふっきれないものも抱え込んでいた。なぜか昔のような浮き浮き気分になれないで来たからだった。
周囲は我がことのように喜んで応援してくれている。その応援を無にするわけにいかない思いも引きずっているからだった。
昔の自分はとっくに気持ちはドイツの空に飛んでいたというのに―。
ドアがノックされた。
ソリはあわてて航空券を下に置いた。
「準備はすんだ?」
「ええ」
「僕の経験からいうと」
部屋の外に立ったままウジンは切り出した。
「君が行く町だけど、広場の交差点には信号がないから」
「…」
「その先の横断歩道を渡って」
自分の身を心配してくれているのだ。
ソリは小さく頷いた。
「わかったわ」
ウジンは笑顔になった。
「じゃあ、お休み」
頷いて航空券を手にしようとしたら、行きかけたウジンはいきなり声をあげた。振り向いた。
「ドイツ人にビールを飲もうと誘われたら、ペッパーソースを…いや、ともかく断るんだ。絶対だよ」
「そうするわ…」
ソリは苦笑した。
「でも、もう寝たいんだけど」
「あ、そうだね。ではお休み」
頷くとウジンはすぐさま追加する。
「そうだ。町の情報を少し書き留めておいた」
ポケットからメモ用紙を取り出す。手をのばし、まるごとソリに手渡す。
メモ用紙は何枚もつながり、何やらびっしり書き込まれている。
ソリは悲鳴に似た声をもらす。
「少しどころじゃない…みたい」
ウジンは言った。
「午後5時の便だから、2時前に出よう」
「私はバスに乘って行く」
ソリはさらっと答える。
「なぜ?」
「空港で泣くのは分かってる。もう、2人で泣きたくないの」
ソリはきっぱり言った。
「どうせ10月に会いに来るんでしょ? だから、笑顔で見送って」
「でも…」
「私はそうしたいの。お願い」
「…」
「あなたはそのまま出勤して。私も1人で行くから」
「…わ、分かった。君の意思を尊重する。そうしよう」
夜が明けた。ソリの出発当日となった。
ウジンが起きて2階から降りて来ると、ソリが下で待っていた。
ウジンに向けて心細げな声を出す。
ウジンは歩みより、ソリを抱きしめる。
「よく決心したと思う。君のいう通りだ。もう泣かない」
「…」
「行っておいで。10月に会いに行くから」
ヒスはヒョンにウジンの様子を見に行かせた。
ヒョンは戻ってくる。
「まだ泣いてる?」
ヒョンは答えた。
「号泣してます」
ちらと目をやった。
「このままじゃ洪水になるかも」
ヒスはため息をつく。
帰宅したウジンの前にジェニファーが立った。
「実は…」
ウジンはそれを遮った。
「今日は1人にしておいてください」
そう言って虚ろな姿で階段を上っていく。
二階に上がるとチャンが部屋から出てきた。
「お帰り。知ってる?」
ウジンはチャンが話しかけるのも遮った。
「悪いけど1人でいたいんだ」
泣きはらした目で言った。肩を落して部屋に消えた。
チャンはポカーンとウジンを見送った。
部屋に入ったウジンは大きくため息をついた。ショルダーを床に落とし、そのままベッドに倒れこんだ。
横に身体を返すと、目の先にメッセージ用紙が張り付いている。
ソリから自分に向けられたものだ。
ウジンは用紙を手にした。
涙ながらにソリの名を呼んだ。
力ない手でメッセージを読み始める。
― あなたに手紙を書くのは初めてだと思う。
今頃、私はドイツに向かう飛行機の中ね。
回り道して再会した私たちが―また、お別れだなんてとても胸が痛むわ。でも、幸運な機会よね。みんなが逃しちゃダメって言ってたもの。
すばらしい教授の下で、バイオリンを学び直して…ちょっと待って、
手紙を書きながら思ったけど、私、行きたくないかも…なぜ、私がドイツへ?
あれっ? ウジンは目を皿にして文章の流れを検証する。何だか変な展開だ…?
確かにバイオリンは上達するだろうけど、私は別にそんなこと望んでないわ。
「何だって?」
― 周りがいい機会だというし、年齢を考えたら行くべきかと思ったけど、行きたくない。
「い、行かない? どうして?」
― ここにいたいの。ペンも高齢だし、家族たちと一緒に楽しく過ごしたいし…
ウジンは急いで次のページをめくる。
― 公園で演奏してトッポッキを食べたい。― ドイツに行かないわ。
「ということは」
ウジンは身体を起こした。話の先をどんどん読んだ。
― いい機会だけど、大切なものを失う方がバカよ。裏面へ
「裏面?」
― 家は恥ずかしいから、あそこで待つわ。
「何だって!」
ウジンは部屋を飛び出した。階段を駆け下りた。
颯のように家を飛び出して行った。
「ようやく気付いたようです」
とジェニファー。
「うん。1人で勝手にブルーになってた」
チャンは笑った。
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