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二人は向日葵がユニフォームを水に投げ込んだ場所に戻った。
梓は言った。
「やっぱり、向日葵のことが忘れられなくて・・・!」
「・・・ヒルがいややったんです」
「・・・うん」
「・・・初めて舞さんの試合を見た時、衝撃が走りました。まぶしかった。太陽みたいやった」
「・・・」
「うちもいつか舞さんみたいになるんや、って」
「・・・」
「だから、ずっとビックデビルがいややったんです」
「・・・」
「こんなんじゃ、いつまでたっても舞さんみたいに輝けへん。太陽のほう追うだけの向日葵のままじゃいややった・・・」
心の中を素直に打ち明けた向日葵に梓は軽い笑みとともに口を開いた。
「私のお父さんが向日葵にビックデビル託した意味、わかる?」
向日葵は黙って梓を見た。
「お父さんはね・・・向日葵だからビックデビル任せたんだよ。向日葵が誰よりも練習して、誰よりもプロレスが好きで、誰よりもお客さんを楽しませたいって思ってたから・・・だから、一番お客さんを盛り上げて楽しませる場所を、お父さんは向日葵にあげたの」
「・・・」
「そこで輝いてほしくて」
「・・・」
「夏の向日葵はね。太陽に憧れて太陽を向いてるんじゃない」
「・・・」
「その光で、自分がもっと成長して輝くために太陽のほうを向いてるの」


向日葵の目から透明の涙が流れ出た。
「・・・ひとつだけ、聞いていいですか?」
「なに?」
「うち・・・輝けてました?」
梓は黙ってビックデビルのユニフォームを向日葵の手に押し付けた。それが彼女の答えだった。
「それ、特注なんだからね!」
そう言って、梓は思い切り笑い出した。
向日葵もつられて笑った。
郷原はスカル杏子に向って叫んだ。
「向日葵が白鳥に戻った!?」
「はい」
郷原は苛立ちでそばにある物を蹴飛ばした。
その頃、舞とつかさと薫はビューティー向日葵の写真を見ながら吹き出していた。

「あっはは、あっはははは・・・!」
「笑うの、いい加減やめてくださいよ」
しかし、舞たちは笑うのをやめない。
「あっはは、あっはははは・・・!」
「こういうの、着てみたかったんです」

「あっははは。何なんですかビューティー向日葵って!?」
「ヤダ、ほんと気持ち悪いです」
「あっはは、あっはははは・・・!」
「もう、何で笑うんですか! ああ、もう・・・!」
彼女らを微笑ましそうに眺めながら、梓は胸を撫で下ろしていた。

「よかったですね、向日葵さんが戻ってきてくれて」とジホ。
「うん」
拡げられた敷布にはおにぎりなどの食べ物がいっぱい並んでいる。
ジホは言った。
「ごめんなさい。嫌いだなんて言って」
梓は少し照れ臭そうにした。
「・・・いいって、もう」
「あれ、嘘です」
「・・・あたしもごめん」
「・・・」
「ジホがあたしや白鳥プロレスのことを一生懸命考えてくれてたのに・・・ジホに当たっちゃって・・・!」
「大丈夫でーす。僕、丈夫ですから」
「だね・・・うふふふふ」
二人は一緒になって笑った。
「梓さんの作ったお弁当おいしそうです」
「おいしいよ。・・・特にね・・・これ。はい」

ジホの口に放り込んであげる。
食べて、ジホは感激の声をあげる。
「うん、おいしい!」
「でしょう?」
「うん。ほっぺた落ちました」
「あら、落ちちゃ駄目だから」
「あっ、はい」
「うふふふふ」
「じゃああ、僕が作った・・・」
ジホも何か取り出した。
「得意料理を食べてください」
ジホは楊枝でついて、それを息で吹いた。
梓は苦笑いした。
「ジホ、私、猫舌じゃないから」
「ああ、そう・・・でした。じゃあ、はい」
食べて、梓は悲鳴をあげる。
「辛い!」
「辛いですか? あっ、すみません」
二人はおかしそうにまた笑いだした。
薫が二人を指差した。
「ちょっと、あれ」
他の三人も反応した。
「おっ!」
「何か、あの二人いい感じですね」とつかさ。
「やあ、じれったい!」と向日葵。
「はい、食べて」と梓は大きなおにぎりを差し出す。
「ちょっとだめです。梅干見えますよ。僕、梅干駄目です」
「大丈夫よ」
「はい、これもっと食べて」と矛先をかわそうとするジホ。
それは誰が見てもアツアツカップルの姿なのだった。
