雨の記号(rain symbol)

ふくろうの子

これも五十年近く前の話である。
伊勢湾台風で道路がやられてバスが走らなくなり、僕は本校に通っていけなくなった。やむなく弟や妹と一緒に分校に通って勉強した。と言っても、分校の先生は将棋が好きで、僕は先生の相手をよくさせられた。勝負は互角だった。先生は受け将棋で僕は攻め将棋だった。
授業は四年生と一緒に受けたからあまり身が入らなかった。というより、当時の僕は勉強する意味があまり分かっていなかった。
母が勉強しろと言ってわめくようになったのは僕らが都会に出てからの話だ。
山の道路を歩いて分校に通うようになり、面白いことにも遭遇した。ひとつは昼間にふくろうの子が路上に迷い出ていたことだ。彼は僕らの前で蝶々のように飛んでいた。捕まえたら、確かに図鑑で見るふくろうの顔をしていた。捕まるとあまりバタバタしないところが実にかわいらしかった。どこか傷ついていたのだったろうか。それには気付かなかったものの、かわいそうだったからすぐ山の中に戻してあげた。今から思えば、彼が親のもとに無事戻れたかどうかは分からない。
途中の山の断層の中から六法石を見つけたりした。六角の結晶の集まった白っぽい石だった。土を掘ったら後から後から出てきた。
秘密の場所として誰にも教えなかったが、あの場所に行けば今もその石はあるのだろうか。
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