「私もゲフェニア行きたいなー」
15分くらい前のことだった。
ギルメンから新ダンジョンの話を聞いて、相棒の♀プリースト、ドラキュリアちゃんが騒ぎ出した。
「無理だよー。ニーゲさんとか、シルバさん達でも全滅だったんだから」
90代半ばの4人PTが、30分持たずに死に戻っているのだ。80代後半の私たちが行ける場所ではない。
「第一、前衛いないじゃん」
WIZの私じゃ、敵の攻撃に耐えられっこない。INT=DEX二極予定だから、なおさらだ。
私が言うと、ドラちゃんは傍らのモンクに声をかけた。
「ブルホワちゃん、行かない?」
「俺、これからご飯で落ちるとこ。ごめんね」
「ぶーぶー!」
他のギルメンは、今戻ったばかりで、行く気配はない。
「仕方ない、ディーク君、『私達』だけで行こう」
「ボク、行くなんて一言も言ってないよう」
半ば無駄と思いつつ、一応抵抗を試みる。
「私が行くって言った時点で、決定に決まってるじゃない」
「そろそろ、デスペナ気にするお年頃なんですが……」
なお食い下がる私に、WISが飛んでくる。
「行かないと、ディーク君が女の子だって皆にバラすわよ? それと今度会ったら、お仕置き」
私がリアル女で、ROでは男キャラを演じてるというのは、今のところ2人だけの秘密なのだ。
それにしても、お仕置きって……。先週会った時の事を思い出し、体の奥がジュンと熱くなる。
「もう、分かりましたよ! 行きますよ!」
彼女が言い出したらきかないのは、良く分かってる。それに、ドラちゃんなら本当にバラしかねない。
「何だかんだ言って、ちゃんと来てくれるから、ディーク君すきー」
あなたが脅すからでしょうが!!
ドラちゃんがキスエモを飛ばす。私は涙エモ。
「じゃ、準備しようか?」
「うん!」
そんな感じで、意気揚々と(ドラちゃんは)狩に出発。
ひょっとしたら、ゲフェン行っても誰も入り口を開けてくれないんじゃ? 淡い期待を持っていたけど、すぐにハイプリさんが開けてしまい。
私達は、新Dに無謀にも突入したのだった。
「ストーム・ガs……」
ダメだ、間に合わない!
呪文が発動すれば、たちまち敵は凍りつき、脱出も可能だったはずだ。しかし、いかんせん敵が多すぎる。
詠唱速度を上回る速さでダメージを受け、HPがどんどん減って行く。
「ならば、ハエで!」
幸い周りに人はいない。すばやくハエのショトカを押す。
「テレポート不可能地域です」
な、なんですとーー!?
あっという間にHPバーは真っ黒に。詠唱途中だった魔法円が空しく消えて行き、私は地に倒れた。
ああ、1%マイナスか……。
「ディーク君、どこ~? 何でいないの? きゃあ、痛い痛い!」
ドラちゃんから、PT会話が飛んでくる。ゲフェニアに入った瞬間、彼女とははぐれてしまっていた。
「ドラちゃん大丈夫? 危なかったら蝶で逃げて!」
「チンダ」
私のアドバイスは、ちょっと遅かったようだ。
「……」
「……」
しばしの沈黙。
「戻ろうか、ドラちゃん」
「戻ろう……」
ゲフェニア・ダンジョンに入って、5分も経たずの出来事だった。
「ただいま~」
「ただ」
「おか」
「おかえりー」
溜まり場に戻ると、仲間は皆、苦笑交じりで迎えてくれた。
「……」
「……」
溜まり場に戻っても、しばし放心。
「早かったね」
「早かったわね」
今までの狩でも1、2を争う早さでの全滅だった。当然、清算も不要だ。
「勉強不足だったね」
「勉強不足よね」
まさか、ランダムで飛ばされるとは。二人でも厳しいだろうに、別々にされては……。
「でも、ダンジョンの感じ分かったし、次は大丈夫」
え、まさか?
「もちろんリベンジ行くわよ!」
「イヤだーー!」
それから間もなく、さらに1%マイナスになったのは言うまでもない。
-END-
15分くらい前のことだった。
ギルメンから新ダンジョンの話を聞いて、相棒の♀プリースト、ドラキュリアちゃんが騒ぎ出した。
「無理だよー。ニーゲさんとか、シルバさん達でも全滅だったんだから」
90代半ばの4人PTが、30分持たずに死に戻っているのだ。80代後半の私たちが行ける場所ではない。
「第一、前衛いないじゃん」
WIZの私じゃ、敵の攻撃に耐えられっこない。INT=DEX二極予定だから、なおさらだ。
私が言うと、ドラちゃんは傍らのモンクに声をかけた。
「ブルホワちゃん、行かない?」
「俺、これからご飯で落ちるとこ。ごめんね」
「ぶーぶー!」
他のギルメンは、今戻ったばかりで、行く気配はない。
「仕方ない、ディーク君、『私達』だけで行こう」
「ボク、行くなんて一言も言ってないよう」
半ば無駄と思いつつ、一応抵抗を試みる。
「私が行くって言った時点で、決定に決まってるじゃない」
「そろそろ、デスペナ気にするお年頃なんですが……」
なお食い下がる私に、WISが飛んでくる。
「行かないと、ディーク君が女の子だって皆にバラすわよ? それと今度会ったら、お仕置き」
私がリアル女で、ROでは男キャラを演じてるというのは、今のところ2人だけの秘密なのだ。
それにしても、お仕置きって……。先週会った時の事を思い出し、体の奥がジュンと熱くなる。
「もう、分かりましたよ! 行きますよ!」
彼女が言い出したらきかないのは、良く分かってる。それに、ドラちゃんなら本当にバラしかねない。
「何だかんだ言って、ちゃんと来てくれるから、ディーク君すきー」
あなたが脅すからでしょうが!!
ドラちゃんがキスエモを飛ばす。私は涙エモ。
「じゃ、準備しようか?」
「うん!」
そんな感じで、意気揚々と(ドラちゃんは)狩に出発。
ひょっとしたら、ゲフェン行っても誰も入り口を開けてくれないんじゃ? 淡い期待を持っていたけど、すぐにハイプリさんが開けてしまい。
私達は、新Dに無謀にも突入したのだった。
「ストーム・ガs……」
ダメだ、間に合わない!
呪文が発動すれば、たちまち敵は凍りつき、脱出も可能だったはずだ。しかし、いかんせん敵が多すぎる。
詠唱速度を上回る速さでダメージを受け、HPがどんどん減って行く。
「ならば、ハエで!」
幸い周りに人はいない。すばやくハエのショトカを押す。
「テレポート不可能地域です」
な、なんですとーー!?
あっという間にHPバーは真っ黒に。詠唱途中だった魔法円が空しく消えて行き、私は地に倒れた。
ああ、1%マイナスか……。
「ディーク君、どこ~? 何でいないの? きゃあ、痛い痛い!」
ドラちゃんから、PT会話が飛んでくる。ゲフェニアに入った瞬間、彼女とははぐれてしまっていた。
「ドラちゃん大丈夫? 危なかったら蝶で逃げて!」
「チンダ」
私のアドバイスは、ちょっと遅かったようだ。
「……」
「……」
しばしの沈黙。
「戻ろうか、ドラちゃん」
「戻ろう……」
ゲフェニア・ダンジョンに入って、5分も経たずの出来事だった。
「ただいま~」
「ただ」
「おか」
「おかえりー」
溜まり場に戻ると、仲間は皆、苦笑交じりで迎えてくれた。
「……」
「……」
溜まり場に戻っても、しばし放心。
「早かったね」
「早かったわね」
今までの狩でも1、2を争う早さでの全滅だった。当然、清算も不要だ。
「勉強不足だったね」
「勉強不足よね」
まさか、ランダムで飛ばされるとは。二人でも厳しいだろうに、別々にされては……。
「でも、ダンジョンの感じ分かったし、次は大丈夫」
え、まさか?
「もちろんリベンジ行くわよ!」
「イヤだーー!」
それから間もなく、さらに1%マイナスになったのは言うまでもない。
-END-