はな to つき

花鳥風月

世界旅行の世界(22)

2019-08-01 22:59:46 | 【世界旅行の世界】
「なんかね、ずっと先生と旅をしているとね、私、いつでも安心していられるの」
「そう?」
「うん。とっても安心。それは、いつも感じているの」
「そうなんだ」
「そうなの。ああ、とっても安心するなあ、って明確な言葉になって、頭に浮かんでくるの」
「どうして、そうやって安心してくれるのかなあ?」
「実はね、それをよく眠るまえに考えるの。どうしてだろうって」
「それで、答えは見つかった?」
「うん。答えかどうかは分からないのだけれど、なんとなくこんな理由かなというのは見つかった気がする」
「そうなんだ。いやでなければ、教えてもらえる?」
「いいよ。あのね、キーワードは、『意味』ということのような気がしたの」
「意味?」

 女の子の言った、『意味』という言葉。
 そこには、『意味あり気』な響きは混ざっていません。
 だから先生は、その『意味』の意味を、素直に知りたくなります。

「そう、意味。人って、どんなことにも意味を求めるような気がしたのね。どうしてそう思ったかというと、意味があることで安心ができるからだと思うの」
「意味があることで、安心ができる?たとえばどういうこと?」
「たとえばね、一番分かりやすいのは、人生だと思う」
「人生?るみちゃんは、すごいところからたとえを持ってくるね」
「そうかもしれない。まだ15だから、もちろん、『人生とは』みたいな哲学的なことは分かりようもないのだけれど、シンプルに考えたとき、どうして私は生きているのかな、もっと遡ると、どうして生まれてきたのかな、っていう私自身の存在の意味ということが、今の私の最大の謎なのね」
「それこそ、哲学の大きなテーゼだよ」
「テーゼって?」
「命題」
「めいだい?」
「あるお題について、その判断を言葉にすること」
「???ーーー先生、もっと簡単に言って?」
「う・・・ん、そのテーマについての答えに、どうやって命を持たせるかということ、かな?」
「題に命を吹き込むってこと?」
「そうかな」
「そうすると、今の私が考えているお題は、『生きる』とか『人生』とかになって、それがどういうものかという答えを言葉にすると、命が吹き込まれるということになるのね?」
「そうだね」
「そっか。でもそれって、とってもむずかしい問題に手をつけちゃったってことになるね?」
「うん、とてもむずかしい問題だね。でも、こういう問題は、学校のテストではないから、答えはすぐに見つける必要のないものだと思うよ?だから、それこそるみちゃんの人生を通して見つけていけばいいものだと思う。それに、大人になってからその答えは変わっていくことも許されるものだと思うしね」
「そうだね。一回決めたら、そのままでなければいけないわけではないもんね」
「そうそう。だから、今、るみちゃんが出した答えは、15歳のるみちゃんの答えでいいのだと思う」
「うん。そうだね」
「それで、今のるみちゃんがたどり着いた答えは、どういうものだったの?」
「私はね、私が死んでしまったら悲しむ人がいると考えた場合、その人たちを悲しませないために生きている、ということでいいんじゃないかなって思ったの」
「たとえば、お父さんやお母さん、兄弟かな?」
「そう。それに、先生」
「わたしも入れてくれるんだ?」
「あたりまえでしょう?だって先生は、私がいなくなってしまったら、すごく悲しむでしょう?」
「想像をしたくないくらいに、悲嘆に暮れると思う」
「そうでしょう?だって、反対だったら、今の私はきっと立ち直れないと思うもん」
「そうか。そんなに悲しませてしまうのか」
「そうだよ?だから、先生にはずっと生きていてもらわないといけないの。それで、ずっと、私のそばにいてもらわないと困るの」
「あはは、なんだかプロポーズみたいだね」
「えへへ、ほんとだ」

(つづく)

最新の画像もっと見る

コメントを投稿