ハミルの家

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わ ~messages~ ① ユーメ

2024-10-01 05:49:00 | HAMIRU
メッセージアプリを閉じた

ゆりかもめがユーメを運ぶ

お台場にいた
小中高とサッカーで心身を鍛えてきたユーメはフットサルチームに所属していた
練習を終えて帰宅の路を辿っていた

ゆりかもめから新橋で降車する
東海道線で横浜まで行って、京浜東北線で関内で下車する
そこから10分弱歩いたところにユーメが暮らすアパートがある

軽い振動を右の太腿が受信して、メッセージアプリを開く

「チッ、なんだよ」
(わかったよ、おやすみ)

そのままニュースアプリを立ち上げて、スポーツ関連の見出しをスクロールしていく

・・・・
SEXしたかったな
・・・・

ゆりかもめが新橋に到着して下車した
暗闇の中を行き交うスーツ姿を横目にしながら、烏森口の改札へ向かう
来年に迫った就職活動が脳裏をよぎり、フットサルで高揚した気分を湿らす

改札を通り京浜東北線へ向かった
東海道線の方が早く帰宅できるだろうが、彼女と会えないなら急ぐこともないから
乗換がない京浜東北線を選んだ

ホームに上がり視界が水色を捉えるのを待つ
程よく2,3分したころに、シルバーとスカイブルー の車両の足音がホームに轟き、停車した
この時間だし座ることができるほど空いてはいなかったから、乗り込んだ反対側のドアにもたれかかるように立った

頭をからっぽにして
車窓から見える景色を眺める
いつもの景色は代わり映えはしないが、落ち着くし、生活の一部だった
来年にはその車窓の風景にはネクタイをしている俺が移るんだろう
この変わり映えしない平穏の景色をリクルートブラックスーツが湿らしてしまうのだろうか
現実から逃げるように、目を瞑る


目を閉じながら、ハタチの欲望を乾かす
関内のユーメのアパートで彼女を抱いて、その後あのラーメン店まで散歩してコッテリを食べて、
彼女と手を繋いで家路を辿る
帰宅して風呂に入って、トコに着く
明日の学校は起きた都合で考える
ベッドの中で彼女の胸や太ももを弄りながら、心地良さの中でグッスリと夢を見る

そんなプランだったのに
彼女が今日来る筈だったのに

・・・・

関内駅に着いて田舎の親が借りてくれたアパートに向かって歩く
メッセージアプリを開いて
彼女にメッセージを送る
(いつ会える?)

やはり
SEXに会いたくて事を急いた
SEXの日取りをはっきりさせたかった
それによってマスタベーションのスケジュールを組まないといけない

前回試しに1週間我慢したら、

めちゃくちゃきもちかった

・・・・

メッセージを受け取ったイケルは
(土曜日会えるよ)

・・・・

4日後か

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どうすればいいか
するのか、しないのか
右手の誘惑に悩み苦しむ
20歳の10月が始まった





to be continued
②イケル





馬花 98 MOTHER

2024-09-30 01:17:00 | HAMIRU

おじゃまします

面目躍如、誇らしげな表情でウサポが子供たちを引き入れた

娘がいる
この両腕の届く位置にいるのは、
赤子の時、
3ヶ月で手放してしまった
10年の月日が経っていた



あのヒトリボッチの男に娘を託した
私が執りなした決定なのに
なのに
アイツを恨んでしまった

私はいつも、うまくいかない


ミコルENからは
ミコルの他に
4天王からイシス
20団員の1人プルマ
そして
ミコルの左腕ロオド



右腕にはHANAがいるが
ツッパリスタイルで子供たちが怖がるといけないので遠慮してもらった
コワモテの見かけによらずスーパーが好きで、新鮮な野菜や鮮魚を見たりすることが趣味だった
しかし、いつもじゃがりこを買ってくる



「い、いはっしゃい」
声が震えた
いつも毅然とした態度のミコルが動揺した

四天王の中でも、あらゆる面において能力最上位のイシスがフォローする
「どうぞこちらへ」

3人の子供たちはリビングへ招かれた
「うわぁ」
お淑やかを決め込んでいたアユラが、本当の声を発した
そこは、ヨーロッパ調の家具、とりわけ北欧ブランドで揃えられたような煌びやかな世界だった
「うわぁ」
アユラのあとにユーリが続いた、声はユーリが視線した大きなスタンド鏡に反響して部屋を包むようだった
ルチカは注意深く部屋の中を見回した

(よく来たわね)
うまく声が出ない
ミコルは明らかな己の変調に焦りを感じた

「どうぞこちらへ」
イシスが場を取り持って、3人掛けのダークブラウンのソファへと誘う
大所帯のミコルENにはレトロ感を醸し出す木目のテーブルを中心に3人掛けのソファが4つ置かれている

子供たちがソファを背にして、左からユーリ、アユラ、ルチカの順番に座る
対面のソファに左からミコル、イシス、プルマが座った

ミコルの前にはルチカ
アユラの前にイシス
ユーリの前にはプルマ

ミコルは避けた
あの娘の正面に腰を据えてしまっては、私の尻は大量のボンドを罰ゲームで仕掛けられたようにベッタリとソファと一体になって、全ての行動を奪ってしまうだろう

ミコルが平常心を失っている様を自然と察知して
左腕のロオドがウサポの耳と耳の間を撫でた
「よくやりましたね」
「シッシ^_^」
早くミコルに褒めてもらいたい

プロタゴ軍団 20名
四天王 4名
ロオドとHANA
ミコル
もう一人ヨーロッパに修行中の人間が1人いる
計28名
世界の片隅の存在の者たちは皆がフォロー仕合い


生きている


・・・・

心情察知能力
プルマが震えている
心、とりわけその場にいる最も上位の者の心の状況が連動して出てしまう
プラマはそんな能力があって、この場ではミコルの心が伝わる
ミコルは緊張を必死で隠し取り繕うが、プルマが震えてしまう
ミコルENの民はプルマの様子を確認して、ミコルを知る



喜びも隠せない

・・・・

「ウサポの友達でしたね」
イシス
「うん、私のクラスに転校してきて。ね、ウサポ!」
「うん、アユラちゃん!」
上機嫌に跳ねた
「そちらのお嬢さんは」
「こっちはユーリで4年生、こっちがルチカ5年生」
真ん中に座っている2人が言葉を交差する
「そうですか。ウサポから聞いておりますが、皆さんハミルENのお子さんということで」
「そうそう、私たちはみんな生まれた時から一緒だから」
アユラが落ち着いてきて、少しばかりの余裕が生まれた。質問を返す
「みんなは?」
「うん、そうですね。私たちはみんなバラバラでしてね。そちらのミコルさんが我々を救ってくださってね」
「ふーん、そうなんだ」
ミコルがまだ落ち着かぬ面持ちで、左の口角を引き攣り上げた


「救うって」
言葉が刺す
「えっ」
ミコルは虚を突かれた
「えぇ救うっていうのは、我々は寂しい存在だったんですよ。それを1つにしてくれたんですよ。1人ずつが集まれば集合体になって寂しさは解消されるのは当然なんですけど。言うのは簡単で。実際にそれを実行する人間が必要なんです。我々には、なんて言いますかね、指導力とか推進力とか言いますかな、持ち合わせてないから可能ではないんです。
可能かつ事を為せる人物と出会えるかと言う」
イシスが落ちかけた我々を掬い上げた女の解釈を講じた
「優しさだろ」

えっ

「根底にあるのは優しさだ。リーダーシップとか主導力なんか言うのは二の次の筈だ。企業とか組織ならそういう資質が問われるだろうけど、此処が築こうとしているのは家族だから、優しさであり、MOTHERの器で皆が乗れる受け皿になること」

この子

ミコルは正面座る、少年を見つめた

少しこの子は危険かも知れない

・・・・

1年と半年が経った
令和6年に暦が移り
街は少しばかり樹木の葉が色を変えて
枯れ葉の趣きと長袖の腕まくりが散見される
季節は移り変わり

ルチカ!
アユラが追いかける

6年生になったルチカが
振り返る

あゝ、アユラか


もうすぐ中学生だ

・・・・

「親なんていらないし
 私を捨てた。
 ハミルENのみんながいるし
 私は幸せ
 妹のユリリが私の唯一の
 家族だし」


あの日
  流れ流れ着いた
   会話でユーリは話した


        ミコルは微笑を浮かべ、訊いた


    プルマの涙が止まることはなかった


        ・・・・・

 


        ひさかたに


        再会したり


        このははは


        葉は枯れようとも


        涙は枯れぬ

 

 





 

 

 

 

 


10.花々 原田マハ ハミル感想文 本

2024-09-28 02:13:00 | HAMIRU











馬花 97 おかえり

2024-09-25 23:40:00 | HAMIRU

子供が歩く

ウサポを先頭にルチカ、アユラ、ユーリが横一線に歩いて行く

H小学校を出て子供の足で20分ほど、乾の方角にミコルENはある
逆に巽の方向へ、同じく20分ほどの場にハミルENはあった

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車道と歩道が区別されていない名もなき道を4人は歩く
ユーリは傍らに生えている猫じゃらしを左手で遊びながら歩いた

ウサポは軽快に飛ばした
ミコルENにユーリを連れて行くという、女主ミコルの期待に応えることができる
ミコルENのプロタゴ軍団たちは世界で行き場を失った者たちで、救い上げてくれたミコルは

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絶対的母だった

学校は15時に終わったから、30分後にはミコルENに到着する
ウサポはミコルに'よくやったね'と撫でられる至福を想像して軽やかに飛んだ

「ウサポはやっ!」
アユラが吠える
「みんな早くピョン!あと5分くらいだよ」
人は100mを10秒で走れば、時速36kmだ
ウサギは時速70〜80kmで走る種もいるという

・・・・

ミコルENに遊びに行くことを決めたハミルENの子供たち
ウサポに誘われた3年生アユラと4年生ユーリに5年生のルチカを加えて、招待の翌日金曜日に早速ミコルENに向かう

大人たちがなぜかミコルENに行くことを止めようとした
寧ろ子供たちの好奇心に火を灯した

ただ少し、ルチカとアユラは未知の世界への通りを楽しんだが、ユーリはなにか重たい気持ちがしていた

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「着いたピョン!」
「でっか!すごいマンション!」
アユラは興奮を隠しきれない
庶民派、低空を居城としているハミルENの面々には入城したことのないようなマンションだった
「やっぱ、やだな」
ユーリが呟く
「えっなに。ユーリ」
アユラが反応した
「だってこんな大きいマンション入ったことないし、怖いよ」
「そんなことないよ、行ってみようよユーリ。ウサポもいるんだし」
「うーん」
「ユーリ、とりあえず入ってみようか。嫌だったらすぐ帰ればいいさ。その時は僕も一緒に帰るから」
「う、うん、それじゃ」
年長者ルチカが場を説得した

常にルチカの言葉には強さと畏怖があって、その言葉には反駁できない
リーダーの資質はこの頃から示されていた

「行くピョン!」
褒めてもらいたい

ウサポが暗号を入力してガラスが開いた。4人はエレベーターに乗り込み、ウサポは最上階の18Fを押す。
流石のアユラも黙った。最上階の優雅に相応しい態度をとらないと、と子供ながらに弁えた


・・・・

「ただいまピョン!」
ウソポが玄関を開け、光が広がる

ミコルがいる
あの時、恋人に娘を譲ってしまった後悔の念を今、成仏させたい

今目の前に現れた
娘の背丈を確認してまだ間に合う、と
少女を私ので抱きしめ、おかえり、と

君の住処はココだと言いたい

「お邪魔します」




⑨ それから 夏目漱石 ハミル感想文 本

2024-09-24 01:31:00 | HAMIRU