古くからの小咄に、王様と死刑囚の対話というものがある。
嘘ばかりついてきた死刑囚の男が、明日死刑になるという時
王様はきいた。
「最後に本当のことを言えば、命は助けてやるぞ。」
死刑囚は、しばらくしてこたえた。
「オレは、明日死刑になる。」
王様は考え込んでしまった。
「ムム………」
王様が死刑をやめれば、死刑囚の言葉は間違っており、
死刑を行えば死刑囚は正しく、王様が嘘をついたことになる。
身動きの取れない矛盾した状態は、言葉の限界を明らかに
してくれる。この発想と形式をさかのぼると、次の小咄に
行きつくのかもしれない。
ドジソン先生(ルイス・キャロル)の小咄
一匹のワニがナイル河の河岸で赤ん坊を盗みました。
母親が、赤ちゃんを返してと懇願しました。するとワニは言いました。
「よし、わしが何をするか当てたら、赤ん坊を返してやろう。当たら
なかったら、食ってしまうぞ」。「食うに決まっているわ」、母親は泣き
叫びました。「それじゃ」と狡賢いワニは言いました。「お前の子を返して
やれんな。返したら、お前の答えは間違っていたことになる。最初に
言うたとおり、お前が間違いを言うたらわしは赤ん坊を食う」。
「そうじゃないでしょ」とワニより賢い母親は言いました、「あんたは
わたしの子を食べられないわよ。食べたらわたしの言ったことが正しい
ことになるでしょ。あんたは約束したでしょ。わたしが正しい答えを
言ったら子供を返すって」。
(『数の国のルイス・キャロル』ロビン・ウィルソンから )
嘘ばかりついてきた死刑囚の男が、明日死刑になるという時
王様はきいた。
「最後に本当のことを言えば、命は助けてやるぞ。」
死刑囚は、しばらくしてこたえた。
「オレは、明日死刑になる。」
王様は考え込んでしまった。
「ムム………」
王様が死刑をやめれば、死刑囚の言葉は間違っており、
死刑を行えば死刑囚は正しく、王様が嘘をついたことになる。
身動きの取れない矛盾した状態は、言葉の限界を明らかに
してくれる。この発想と形式をさかのぼると、次の小咄に
行きつくのかもしれない。
ドジソン先生(ルイス・キャロル)の小咄
一匹のワニがナイル河の河岸で赤ん坊を盗みました。
母親が、赤ちゃんを返してと懇願しました。するとワニは言いました。
「よし、わしが何をするか当てたら、赤ん坊を返してやろう。当たら
なかったら、食ってしまうぞ」。「食うに決まっているわ」、母親は泣き
叫びました。「それじゃ」と狡賢いワニは言いました。「お前の子を返して
やれんな。返したら、お前の答えは間違っていたことになる。最初に
言うたとおり、お前が間違いを言うたらわしは赤ん坊を食う」。
「そうじゃないでしょ」とワニより賢い母親は言いました、「あんたは
わたしの子を食べられないわよ。食べたらわたしの言ったことが正しい
ことになるでしょ。あんたは約束したでしょ。わたしが正しい答えを
言ったら子供を返すって」。
(『数の国のルイス・キャロル』ロビン・ウィルソンから )