クリスチャン・ベイル、ラッセル・クロウ主演の西部劇です。
遠くから馬の蹄の音が聞こえてきます。
少年が心配していると、父親のダンが足を引き摺り 銃を杖代わりにして窓辺まで行くと、納屋に火がつけられ 牛馬が鳴声をあげています。
ダンは止めようとしますが、後ろから銃で殴られ、勢いで彼は転倒します。ダンが脱げたブーツを穿こうとして、足首で切断された部分まで見え、彼が片足が不自由なのがハッキリします。
「1週間だ。次は家を焼く」
襲ってきたのはこの辺り一帯の地主ホランダーの一味で、彼らはダンを脅して去って行きます。
少年ウイリアムは、必死でダンや母親が止めるのも聞かずに小屋から馬を引き出しているため、ダンが引き摺って引きとめたおかげで、辛うじて燃え落ちてきた板の下敷きになることは避けられました。
彼は怒りを押さえきれず、銃を構え 走り去っていく男たちに向けて、松明の火を頼りに撃とうとしたところをダンに止められます。
翌朝、燃え落ちた納屋を見ながら、ダンはウイリアムともう一人の息子マークに、牛を連れ戻すのとホランダーに交渉するためにビズビーの町へ行く事を伝えます。
ダンの妻アリスは自分に借金の相談をしてくれなかった事でダンを責めます。
場面替わって、一人の男が荒野でハゲタカのスケッチをしていると、別の男が話しかけてきます。
「ボス、駅馬車がビズビーへ。荷台は金属板、二連式散弾銃とガトリング砲も」
男の口元にニヤッと笑みが浮かびます。
ガトリング砲とは、当時 開発された新式の手動式の機関銃です。
それを聞いた彼も嬉しそうです。
男の名はベン・ウエイド、10人ほどの強盗団のボスです。
ついに ウエイドの手下たちが銃を撃ちながら、駅馬車に襲い掛かります。
駅馬車の面々は彼らのことを知っていたらしく、中の男達4人は一斉に応戦を始めます。その馬車の後部は 幌が開かれ、2人の男がガトリング砲で 残りの男2人は両側の窓から銃撃します。
一方、ウエイドは一人離れた場所で成り行きを眺めています。
激しい撃ち合いの中、ガトリング砲を撃っていた男が 狙撃されますが、御者席の隣に座っている初老のガンマン(ピーター・フォンダ!)が冷静に一人、また一人と敵を撃っていきます。
そのとき、味方の不利を感じたウエイドが放されていた牛の群れを銃で脅かして暴走させ、馬車の行く手を塞ぎます。
突然 前方を遮られた馬車は直ぐには止まれず横転し、御者やその隣で指揮を執っていた初老のガンマンも地上に投げ出されてしまいます。
横転した馬車に追いついた 先程ウエイドに報告しに来た男が、馬車の中で銃撃していた男や御者を次々と撃っていきます。その男の表情は冷たく、一切の感情が見られません。
男はゆっくりと 馬車から投げ出されたガンマンの方へ近づきます。ガンマンは まだ 投げ出された銃を拾い、反撃しようとしています。
「よう バイロン、俺はチャーリー。俺を知ってるか?」 男はガンマンに声をかけます。
「<ブサイクで根性の腐ったチャーリー>ってのはお前だったか」
そう答えたガンマンの腹部をチャーリーと名乗った男は撃ちます。
「ふざけるな」チャーリーは吐き捨てるようバイロンに言います。
「バイロン・マッケルロイか。ずいぶん老けたな」 近づいてきたウエイドは バイロンに話しかけます。
「黙れ、ベン・ウエイド」 バイロンは必死で苦痛を堪えているようです。
「厳重だな。金がかかったろう。ムダな金を使わせちまったな」
どうやら この駅馬車はウエイドたちを誘き寄せて捕らえるための作戦だったようです。
「余計な話はいい。さっさと殺せ」バイロンは いまだ相手に屈しようとしません。
そんなバイロンをウエイドは何故か すぐに殺そうとしません。
「後悔することになるぞ。いつか 捕まえる」 バイロンはウエイドに言います。
「楽しみにしてるぜ」 余裕の笑みさえ見せながら ウエイドは答えます。
そんなとき、彼らの様子が見える小高い丘に ダン親子たちがやってきます。
札束を必死で鞄に詰めていた一味のうちの一人を、馬車に残っていた男が人質にして 金を置くように彼らに言います。
すると ウエイドは先に人質になった手下を撃ち、そして 銃を手下に突きつけていた男も撃ち殺します。
その一部始終を見ていたウイリアムは、その銃の早業に目を奪われます。
「トミー油断したな。まだ生き残りがいた。分かってるな、これが俺たちの掟。
≪犠牲は最小限に≫ だ」 ウエイドは まだ意識のある手下に言います。
そのとき、ウエイド一味がダン親子の気配に気づき、ウエイドとチャーリーがダンたちの前に現れます。
「俺の牛だ。返せ」
怯むことなくダンはウエイドに言いますが、それを聞き チャーリーは失笑して 「 彼はベン・ウエイドだぞ 」と いかにもバカにしたように言います。
それでも 牛の返還を要求するダンにウエイドは答えます。
「牛はいらん。だが 馬は渡せ」 それに続けて、チャーリーが言います。
「バカなマネされちゃ 困るからな」 彼らは通報を警戒しているようです。
ダンはウエイドの言う通り 馬を彼らに渡します。その父の態度に不満を感じながらも、ウイリアム達も従います。
ダン親子は横転している馬車と殺されている人たちに近づきます。
ウイリアムはウエイドに殺されたトミーの傍に落ちていた弾丸を手にとって見つめます。
ダンは倒れているバイロンを起こして医師の所に運ぼうとします。
近くの町ビズビーで、 チャーリーが保安官たちに駅馬車が襲撃されたことを話します。
彼らが襲撃現場に向かったのを、ウエイドとチャーリーは顔を見合わせてほくそ笑んで眺めています。
ウエイドたちはお互いに目配せしながら酒場に入り、死んだ者たちに杯を捧げます。
ウエイドは聖書の箴(しん)言13章3節を諳(そら)んじます。
「≪口を閉じる者は命を保つ 口を開くものは身を滅ぼす≫
トミーは油断した。思慮のなさが死を招いたんだ」
その後、彼らは強奪した金の分け前を受け取りますが、ウエイドは酌をしてくれた酒場の女に興味があるようで 店から出て行こうとしません。
チャーリーは、すぐに保安官たちが戻ってくるので国境を越えよう、とウエイドに声をかけますが、彼の態度を見て、先に行って待っていると告げます。
手下たちが去った後、ウエイドは彼女に声をかけます。
彼女は最初 彼を無視していましたが、彼の巧みな誘い文句につい 答えてしまいます。
「やせてるな。いいさ、嫌いじゃない。瞳がグリーンならいい。見せてくれ」
ようやく振り向いた彼女に、「ー グリーン以外もいい」と言って、くちづけします。
その頃、ダンは、ウエイドに放された馬のいる所まで、 間に合わせの板で作った担架にバイロンを乗せて徒歩で荒野の中を運んでいます。
ようやく馬のいる所に辿り着いたダンは、駆けつけてきた保安官一行と出くわします。
彼らはダンにバイロンやウエイドの事を尋ねて、一味が自分たちの町に来たことを知ります。
一方、ウエイドはベッドに横たわる彼女の裸婦像をスケッチしています。
しかし、窓から 保安官一行が戻ってきたのを見て、彼女に一緒に逃げようと誘いますが、彼女は本気にしません。
保安官たちは、まず 重症の状態のバイロンを医師の所に運びます。
「バイロン・マッケロイ。探偵社の賞金稼ぎだ」
当時は、駅馬車や列車強盗が多発していて、それらを経営する会社が独自に賞金稼ぎを雇って事件を防いだり、犯人を捜して逮捕していました。
バイロンは、腹部に残っている弾丸を取り出せ、と医師に命じます(当然 消毒や麻酔なしで)。
叫び声を一度も漏らさずに弾を引き抜かれたバイロンは、ドクターに「お前は一体何の医者だ?」と聞くと、彼は「言葉を話す患者は初めてです」と苦笑しながら告げます。
そうしているうちにも、保安官たちはウエイドの馬を見つけて、酒場の周囲を包囲しはじめました。
ダンは その様子を横目で見ながら、自分たちを襲った地主のホランダーに文句をぶつけます。
「ひどいことをしてくれた。俺の土地だ。川をせき止め、借金するように追い込んだろ」
「来週には私のものだ。返済しない君が悪い。私の土地を流れている川だ。どう使おうと
勝手だろ。早く出て行け」
ホランダーはダンをにべもなくあしらい、彼の用心棒がダンを引き倒します。
ダンはそれでも諦めずに南北戦争中もらった勲章をホランダーに差し出して水を分けてくれ、と申し出ます。
「現実を受け入れるんだな。鉄道が通る、君達が邪魔なんだ」
ホランダーの態度にはダン親子に対する一片の情けも感じられません。
絶望感で一杯になったダンは銃を取り、ホランダーが向かった、ウエイドがいる酒場に乗り込んで地主の名を叫びます。
その時、ウエイドがゆっくりと階段を下りて来て、彼に声をかけます。
ウエイドはダンが来たのが、彼が放した牛馬の事だと勘違いして彼に死んだ牛の代金や日当を渡しますが、それでも、次々とダンは落ち着き払って彼に弁償金を要求します。
ダンは保安官たちが近づくのを見計らってウエイドを足止めしたのです。
保安官の助手たちはウエイドをその場で撃ち殺そうとしますが、弾丸を抜き取られたばかりのバイロンがそれを止めます。
「やってみろ。住人が皆殺しにされるぞ」
その時、先程から 駅馬車を待っていた鉄道会社のバターフィールドが名乗り出てきて皆に告げます。
「強盗が22件、被害総額は40万ドル。サザン・パシフィック鉄道はベン・ウエイドを訴える。
公開絞首刑だ。見せしめにな。そのためなら いくらでも払う」
ウエイドを護送する事になり、ホランダーの用心棒タッカーとバイロンとドクターが行く事になります。
そして、連隊一の狙撃手だったと言うダンが立候補し、200ドル要求します。
こうしてウエイドを町外れで駅馬車に乗せようとしていると、突然 チャーリーが現れて、保安官と町の男を撃ち殺します。
護送する一行は、バイロンの指示で一旦 ダンの家で集合する事になります。
ダンは心配する妻に、敵を罠にかける、と伝えます。
チャーリーが見張っている中、ウエイドを乗せた馬車が脱輪して横転してしまいます。
実は、ウエイドの替え玉を使ってチャーリーを騙す作戦です。
ダンの家には、護送犯ウエイド、賞金稼ぎバイロン、ホランダー一家の用心棒タッカー、そして、バターフィールドと、不思議なメンツが揃います。
夕食の席に着くとき、ウイリアムはウエイドに好奇心一杯の視線を向け、マークは食前の祈りをしない彼を非難します。
ダンはマークに「動物を狩るのと人間を撃つのとは違う」と言い聞かせますが、ウエイドは反論します。
「いいや、同じだ。バイロンに聞いてみろ。大勢 殺した。女や子ども、鉱山労働者にアパッチ族も」
「死んで当然の奴らだ」バイロンはこともなげに言います。
「≪人は自分の道を正しいと言うが、主は心をご覧になる≫、箴言21章だ」
ウエイドは言いながら、ダンの妻アリスやウイリアムに対して親しみを感じさせる笑みを見せます。
ウエイドは、銃声がしたのでダン達が席をはずしている間にアリスに話しかけます。
「サンフランシスコに行ったことないか?船長の娘と深い仲だった。瞳はグリーンだ。美しい目だった」
その言葉を聞いたアリスはウエイドを真正面から見つめます。
「見つめると色が変わった。海のようだった…。君の名は?」
二人のただならぬ雰囲気にダンが気づいて、彼女に声をかけます。
ダンにアリスは行くのを止めるよう言いますが、アリスの気持ちを分かろうとしません。
「金がなければ夜逃げだ。一生 貧乏のままだぞ。もう ウンザリなんだ。
息子たちの軽蔑の眼差しにも、君の態度にも。片脚で 惨めな自分にもだ。
この3年、神に祈り続けた。だが、無駄だった」
ダンの瞳には深い苦悩が窺えます。
ついに出発の時が来ました。
しかし、ウイリアムはダンが家に残るよう言い聞かせても、不満で一杯の態度です。
バイロンはウエイドに、「明後日 3時10分発ユマ行きの汽車に」と告げます。
その晩、ウイリアムは無断で寝床を抜け出して銃を手に、家から出て行きます。
野営している時、ダンは兵に徴兵されたのか聞かれて答えます。
「元は志願兵だった。マサチューセッツの民兵だ。その後、’62年に連邦政府に招集され、
ワシントンを守った」
ウエイドは金がほしくて来たんだろう、とダンの神経を逆なですることばかり言います。
そのとき、タッカーが仲裁が入り、ダンはウエイドから離れます。
彼は嫌がらせのようにウエイドに絞首刑にされる男の歌を聞かせます。
夜明け前、ウエイドがタッカーを襲っていたため、バイロンが何度もウエイドを殴りつけています。タッカーはウエイドに金串で刺されて殺されました。
翌朝、チャーリーたちを欺くための馬車が襲われ、トリックに気づいたチャーリーは馬車の中の男を手錠で馬車につないで、ウエイドの連れて行かれた場所を白状したにもかかわらず、焼き殺します。
道すがら、ダンはウエイドにタッカーを殺した理由を尋ねます。
ウエイドは殺しはいけないというダンを偽善者、と詰りますが、アパッチの女・子どもを多数殺したバイロンも責めます。
「彼らを殺しても 神は許すんだな。神はアパッチは嫌いか」
自分の事を責められたバイロンが逆にウエイドの父親を酒飲みの墓荒らし、母親を娼婦と言い出すと、ウエイドはバイロンの馬に飛びかかって、彼を引き摺り下ろして岩で殴り殺します。
ウエイドはバイロンの銃を奪って彼らに突きつけますが、その時、後ろから彼らをつけてきていたウイリアムに発砲されて、形勢は再び逆転します。
ウイリアムも加えた夜、野営の火を囲みながらウエイドは彼を懐柔にかかります。
「(町には)最高の娼婦もいる。金さえあれば 全てが手に入る。欲しいものは何でもだ。
君くらいの年で行った」
すると、ダンが息子を誘惑から護るために言います。
「それから大勢 殺し、家庭を崩壊させた」
「一緒にするな。息子はまともな道を歩む」 ウエイドの小用の見張りに付き添ったダンは言います。
「俺は善意ってやつが嫌いだ。親切は一度やり始めるとクセになる。だが偽善だ。
人に感謝されると神になった気分か?」 ウエイドは持論を崩そうとしません。
そのとき、突然、アパッチたちが銃で襲撃してきます。
ダンは撃たれてしまい、戦闘に慣れているウエイドが彼らを倒しますが、そのまま行方をくらまします。しかし、ウエイドは鉱山労働者たちを使役している者たちに捕らえられて、私怨からリンチに遭います。
今度はダンたちにウエイドは助けられますが、銃撃されてドクターは死んでしまいます。
ダン一行は ようやく汽車が出る町に到着し、発車までの時間 ホテルに身を隠す事にします。
ウエイドは相変わらず、ダンに金での取引を持ちかけてきます。
見張り役のダンをウエイドは言葉巧みに説得しますが、彼は一切応じません。
バターフィールドに連れられて、町の保安官たちが加勢に来ますが、ダンたちが安心したのも束の間、チャーリーたちが追いついてきて、金で町のならず者たちを雇い入れたため、保安官たちは形勢不利と悟って彼らに投降してしまいますが、彼らはあっけなく撃ち殺されます。
それを見たウエイドはダンに言います。
「バターフィールドは お前を見捨てるだろう。お前と息子は何のために死ぬんだ?」
ホテルはチャーリーたちに包囲されていて、四面楚歌状態です。
ウエイドはダン親子に話しかけます。
「俺を説得しろ、お前たちを生かして何の得が?」
「やめさせろ。良心があるだろ」 そのウイリアムの言葉にダンは胸をつかれたような表情をします。
ウエイドは答えます。「根っからの悪人じゃなけりゃボスは務まらない」
3人がいる部屋にバターフィールドが入った来て、皆に逃げようと持ちかけます。ウイリアムも賛同します。しかし、ダンはバターフィールドが謝礼に約束した200ドルを差し出したのを見ても動こうとはしません。
「道中ずっと考えてたんだ。政府はこの脚に198ドル36セント払った。その金は何だったの
か。名目上は戦争補償だが、俺を厄介払いしただけだ。世の中 そんなものだ」
ダンは静かに話し続け、改めて息子に言います。
「お前は家に帰れ。俺たちが出ていくまで向かいの部屋に」
そして、バターフィールドに息子の安全と、ホランダーに今後手出しさせない事や補償金1000ドルを払う事を約束させて、ウエイドをユマ行きの汽車に乗せる事を明言します。
ダンは、何かあるたび ずっと握りしめていた勲章をウイリアムに示します。
「ウイリアム、これを母さんに。これのおかげで良心を保てたと伝えてくれ。
牧場と家族を守るのはお前しかいない。立派に成長してくれた。俺の誇りだ。
覚えておけ、お前の父親はベン・ウエイドを護送した。たった一人で」
父親を置いていけない、と必死で呼びかける息子にダンは万感の思いをこめて伝えます。
刻々と迫る時間のなか、苛立ちを隠せなくなったダンにウエイドは話します。
「聖書を読んだ、8歳の時に一度だけな。親父が酒で死んで お袋と東部へ引っ越す事に。
駅で聖書を渡され読んでろと言われた。お袋は切符を買いに行った。
最後まで読むのに3日かかった。お袋は戻らなかった」
ついに時間が来ました。
ダンはウエイドを前に行かせて後ろから銃を突きつけて、ゆっくり歩き始めます。
すると、ホテルや近くの建物の上から次々と銃弾が降り注ぐなか、彼らは物陰に身を隠しながら ダンが次々と敵を撃って駅へ進んでいきます。
なぜか ウエイドは不服を言わず、ダンのするに任せています。
一方、ウイリアムは部屋に戻ってきて ウエイドがスケッチしたダンの画を見て、二人を追いかけます。
チャーリーは無差別銃撃にウエイドが巻き込まれないようにするあまり、味方のはずの者たちまで撃ち殺します。
「頑固だぞ。ここまでだ。息子は行った。誰も見てない。片脚が無事なうちに帰れ」
とうとうウエイドがダンを投げ飛ばして言いますが、ダンは従いません。
「誇れるものが何もない。この脚だって退却の時に味方に撃たれた。
事実を話したら、息子たちはどう思う?」
ダンの言葉に、彼の頚を締め上げていたウエイドは「わかったよ」と言い離れます。
二人は銃撃を避けて屋根から飛び降ります。痛みに呻くダンをウエイドは助け起こして一緒に駅に向かって走りこみますが、ユマ行きの汽車は遅れています。
「俺は頑固じゃない。あの土地に留まるのには訳がある。下の息子のためだ。2歳の時に結核
になり、乾燥した所でないと死ぬと言われた。俺はただ 頑固じゃないと分かってほしくて」
その言葉を聞いて、初めて二人は揃って笑顔を交し合います。
「なら俺も告白しよう。ユマの刑務所にいた。2回入って2回脱走した」 ウエイドは笑ってダンに言います。
ようやく汽車が着きました。
駅はチャーリーたちが包囲していて汽車への乗り口を狙い撃ちしてきます。
すると、その時、ウイリアムが牛のゲートを開けてチャーリーたちを撹乱します。
おかげでダンは無事、ウエイドを汽車に乗せる事ができました。
「よくやった」 ウエイドはダンに笑いかけます。
しかし、ウエイドが止めるのを聞かず、チャーリーがダンの背後から何発も銃弾を浴びせます。
「手ごわかったぜ。片脚の牧場主にしてはな」 チャーリーは皮肉をこめてウエイドに言います。
それを呆然と見ていたウエイドは、チャーリーから受け取った彼のいわくつきの銃で、チャーリーたち全員を撃ち殺します。
最後まで見届けたウイリアムが倒れている父親の元に走り寄ってきて伝えます。
「すごいよ。尊敬する。ヤツを汽車に乗せた」
ウイリアムはウエイドに銃を構えますが、撃たずに彼が自分から汽車に乗るのを見送ります。
……動き出す汽車…ウエイドは銃を係員に渡して座席に座りますが、口笛で愛馬を呼び寄せます。
END
演技巧者の二人はもとより、どの役者さんたちも素晴しかったです!
ピーター・フォンダ、ベン・フォスターとアラン・テュディックよかったです。今更ですが、ラッセル・クロウってミッキー・ロークに似てる~。クリスチャン・ベイルはダニエル・デイ・ルイスかな?
脚本、上手いわー。「明日に向かって撃て」を髣髴とさせるシーンがありました!
私はジョン・フォードはもちろん、ジョン・スタージェスやサム・ペキンパの西部劇が好きです。
そして、川本三郎氏の「脇役グラフィティ」が好き!なので、こんな面白い映画が大好物です。
ジェームズ・マンゴールドえらいっ!
遠くから馬の蹄の音が聞こえてきます。
少年が心配していると、父親のダンが足を引き摺り 銃を杖代わりにして窓辺まで行くと、納屋に火がつけられ 牛馬が鳴声をあげています。
ダンは止めようとしますが、後ろから銃で殴られ、勢いで彼は転倒します。ダンが脱げたブーツを穿こうとして、足首で切断された部分まで見え、彼が片足が不自由なのがハッキリします。
「1週間だ。次は家を焼く」
襲ってきたのはこの辺り一帯の地主ホランダーの一味で、彼らはダンを脅して去って行きます。
少年ウイリアムは、必死でダンや母親が止めるのも聞かずに小屋から馬を引き出しているため、ダンが引き摺って引きとめたおかげで、辛うじて燃え落ちてきた板の下敷きになることは避けられました。
彼は怒りを押さえきれず、銃を構え 走り去っていく男たちに向けて、松明の火を頼りに撃とうとしたところをダンに止められます。
翌朝、燃え落ちた納屋を見ながら、ダンはウイリアムともう一人の息子マークに、牛を連れ戻すのとホランダーに交渉するためにビズビーの町へ行く事を伝えます。
ダンの妻アリスは自分に借金の相談をしてくれなかった事でダンを責めます。
場面替わって、一人の男が荒野でハゲタカのスケッチをしていると、別の男が話しかけてきます。
「ボス、駅馬車がビズビーへ。荷台は金属板、二連式散弾銃とガトリング砲も」
男の口元にニヤッと笑みが浮かびます。
ガトリング砲とは、当時 開発された新式の手動式の機関銃です。
それを聞いた彼も嬉しそうです。
男の名はベン・ウエイド、10人ほどの強盗団のボスです。
ついに ウエイドの手下たちが銃を撃ちながら、駅馬車に襲い掛かります。
駅馬車の面々は彼らのことを知っていたらしく、中の男達4人は一斉に応戦を始めます。その馬車の後部は 幌が開かれ、2人の男がガトリング砲で 残りの男2人は両側の窓から銃撃します。
一方、ウエイドは一人離れた場所で成り行きを眺めています。
激しい撃ち合いの中、ガトリング砲を撃っていた男が 狙撃されますが、御者席の隣に座っている初老のガンマン(ピーター・フォンダ!)が冷静に一人、また一人と敵を撃っていきます。
そのとき、味方の不利を感じたウエイドが放されていた牛の群れを銃で脅かして暴走させ、馬車の行く手を塞ぎます。
突然 前方を遮られた馬車は直ぐには止まれず横転し、御者やその隣で指揮を執っていた初老のガンマンも地上に投げ出されてしまいます。
横転した馬車に追いついた 先程ウエイドに報告しに来た男が、馬車の中で銃撃していた男や御者を次々と撃っていきます。その男の表情は冷たく、一切の感情が見られません。
男はゆっくりと 馬車から投げ出されたガンマンの方へ近づきます。ガンマンは まだ 投げ出された銃を拾い、反撃しようとしています。
「よう バイロン、俺はチャーリー。俺を知ってるか?」 男はガンマンに声をかけます。
「<ブサイクで根性の腐ったチャーリー>ってのはお前だったか」
そう答えたガンマンの腹部をチャーリーと名乗った男は撃ちます。
「ふざけるな」チャーリーは吐き捨てるようバイロンに言います。
「バイロン・マッケルロイか。ずいぶん老けたな」 近づいてきたウエイドは バイロンに話しかけます。
「黙れ、ベン・ウエイド」 バイロンは必死で苦痛を堪えているようです。
「厳重だな。金がかかったろう。ムダな金を使わせちまったな」
どうやら この駅馬車はウエイドたちを誘き寄せて捕らえるための作戦だったようです。
「余計な話はいい。さっさと殺せ」バイロンは いまだ相手に屈しようとしません。
そんなバイロンをウエイドは何故か すぐに殺そうとしません。
「後悔することになるぞ。いつか 捕まえる」 バイロンはウエイドに言います。
「楽しみにしてるぜ」 余裕の笑みさえ見せながら ウエイドは答えます。
そんなとき、彼らの様子が見える小高い丘に ダン親子たちがやってきます。
札束を必死で鞄に詰めていた一味のうちの一人を、馬車に残っていた男が人質にして 金を置くように彼らに言います。
すると ウエイドは先に人質になった手下を撃ち、そして 銃を手下に突きつけていた男も撃ち殺します。
その一部始終を見ていたウイリアムは、その銃の早業に目を奪われます。
「トミー油断したな。まだ生き残りがいた。分かってるな、これが俺たちの掟。
≪犠牲は最小限に≫ だ」 ウエイドは まだ意識のある手下に言います。
そのとき、ウエイド一味がダン親子の気配に気づき、ウエイドとチャーリーがダンたちの前に現れます。
「俺の牛だ。返せ」
怯むことなくダンはウエイドに言いますが、それを聞き チャーリーは失笑して 「 彼はベン・ウエイドだぞ 」と いかにもバカにしたように言います。
それでも 牛の返還を要求するダンにウエイドは答えます。
「牛はいらん。だが 馬は渡せ」 それに続けて、チャーリーが言います。
「バカなマネされちゃ 困るからな」 彼らは通報を警戒しているようです。
ダンはウエイドの言う通り 馬を彼らに渡します。その父の態度に不満を感じながらも、ウイリアム達も従います。
ダン親子は横転している馬車と殺されている人たちに近づきます。
ウイリアムはウエイドに殺されたトミーの傍に落ちていた弾丸を手にとって見つめます。
ダンは倒れているバイロンを起こして医師の所に運ぼうとします。
近くの町ビズビーで、 チャーリーが保安官たちに駅馬車が襲撃されたことを話します。
彼らが襲撃現場に向かったのを、ウエイドとチャーリーは顔を見合わせてほくそ笑んで眺めています。
ウエイドたちはお互いに目配せしながら酒場に入り、死んだ者たちに杯を捧げます。
ウエイドは聖書の箴(しん)言13章3節を諳(そら)んじます。
「≪口を閉じる者は命を保つ 口を開くものは身を滅ぼす≫
トミーは油断した。思慮のなさが死を招いたんだ」
その後、彼らは強奪した金の分け前を受け取りますが、ウエイドは酌をしてくれた酒場の女に興味があるようで 店から出て行こうとしません。
チャーリーは、すぐに保安官たちが戻ってくるので国境を越えよう、とウエイドに声をかけますが、彼の態度を見て、先に行って待っていると告げます。
手下たちが去った後、ウエイドは彼女に声をかけます。
彼女は最初 彼を無視していましたが、彼の巧みな誘い文句につい 答えてしまいます。
「やせてるな。いいさ、嫌いじゃない。瞳がグリーンならいい。見せてくれ」
ようやく振り向いた彼女に、「ー グリーン以外もいい」と言って、くちづけします。
その頃、ダンは、ウエイドに放された馬のいる所まで、 間に合わせの板で作った担架にバイロンを乗せて徒歩で荒野の中を運んでいます。
ようやく馬のいる所に辿り着いたダンは、駆けつけてきた保安官一行と出くわします。
彼らはダンにバイロンやウエイドの事を尋ねて、一味が自分たちの町に来たことを知ります。
一方、ウエイドはベッドに横たわる彼女の裸婦像をスケッチしています。
しかし、窓から 保安官一行が戻ってきたのを見て、彼女に一緒に逃げようと誘いますが、彼女は本気にしません。
保安官たちは、まず 重症の状態のバイロンを医師の所に運びます。
「バイロン・マッケロイ。探偵社の賞金稼ぎだ」
当時は、駅馬車や列車強盗が多発していて、それらを経営する会社が独自に賞金稼ぎを雇って事件を防いだり、犯人を捜して逮捕していました。
バイロンは、腹部に残っている弾丸を取り出せ、と医師に命じます(当然 消毒や麻酔なしで)。
叫び声を一度も漏らさずに弾を引き抜かれたバイロンは、ドクターに「お前は一体何の医者だ?」と聞くと、彼は「言葉を話す患者は初めてです」と苦笑しながら告げます。
そうしているうちにも、保安官たちはウエイドの馬を見つけて、酒場の周囲を包囲しはじめました。
ダンは その様子を横目で見ながら、自分たちを襲った地主のホランダーに文句をぶつけます。
「ひどいことをしてくれた。俺の土地だ。川をせき止め、借金するように追い込んだろ」
「来週には私のものだ。返済しない君が悪い。私の土地を流れている川だ。どう使おうと
勝手だろ。早く出て行け」
ホランダーはダンをにべもなくあしらい、彼の用心棒がダンを引き倒します。
ダンはそれでも諦めずに南北戦争中もらった勲章をホランダーに差し出して水を分けてくれ、と申し出ます。
「現実を受け入れるんだな。鉄道が通る、君達が邪魔なんだ」
ホランダーの態度にはダン親子に対する一片の情けも感じられません。
絶望感で一杯になったダンは銃を取り、ホランダーが向かった、ウエイドがいる酒場に乗り込んで地主の名を叫びます。
その時、ウエイドがゆっくりと階段を下りて来て、彼に声をかけます。
ウエイドはダンが来たのが、彼が放した牛馬の事だと勘違いして彼に死んだ牛の代金や日当を渡しますが、それでも、次々とダンは落ち着き払って彼に弁償金を要求します。
ダンは保安官たちが近づくのを見計らってウエイドを足止めしたのです。
保安官の助手たちはウエイドをその場で撃ち殺そうとしますが、弾丸を抜き取られたばかりのバイロンがそれを止めます。
「やってみろ。住人が皆殺しにされるぞ」
その時、先程から 駅馬車を待っていた鉄道会社のバターフィールドが名乗り出てきて皆に告げます。
「強盗が22件、被害総額は40万ドル。サザン・パシフィック鉄道はベン・ウエイドを訴える。
公開絞首刑だ。見せしめにな。そのためなら いくらでも払う」
ウエイドを護送する事になり、ホランダーの用心棒タッカーとバイロンとドクターが行く事になります。
そして、連隊一の狙撃手だったと言うダンが立候補し、200ドル要求します。
こうしてウエイドを町外れで駅馬車に乗せようとしていると、突然 チャーリーが現れて、保安官と町の男を撃ち殺します。
護送する一行は、バイロンの指示で一旦 ダンの家で集合する事になります。
ダンは心配する妻に、敵を罠にかける、と伝えます。
チャーリーが見張っている中、ウエイドを乗せた馬車が脱輪して横転してしまいます。
実は、ウエイドの替え玉を使ってチャーリーを騙す作戦です。
ダンの家には、護送犯ウエイド、賞金稼ぎバイロン、ホランダー一家の用心棒タッカー、そして、バターフィールドと、不思議なメンツが揃います。
夕食の席に着くとき、ウイリアムはウエイドに好奇心一杯の視線を向け、マークは食前の祈りをしない彼を非難します。
ダンはマークに「動物を狩るのと人間を撃つのとは違う」と言い聞かせますが、ウエイドは反論します。
「いいや、同じだ。バイロンに聞いてみろ。大勢 殺した。女や子ども、鉱山労働者にアパッチ族も」
「死んで当然の奴らだ」バイロンはこともなげに言います。
「≪人は自分の道を正しいと言うが、主は心をご覧になる≫、箴言21章だ」
ウエイドは言いながら、ダンの妻アリスやウイリアムに対して親しみを感じさせる笑みを見せます。
ウエイドは、銃声がしたのでダン達が席をはずしている間にアリスに話しかけます。
「サンフランシスコに行ったことないか?船長の娘と深い仲だった。瞳はグリーンだ。美しい目だった」
その言葉を聞いたアリスはウエイドを真正面から見つめます。
「見つめると色が変わった。海のようだった…。君の名は?」
二人のただならぬ雰囲気にダンが気づいて、彼女に声をかけます。
ダンにアリスは行くのを止めるよう言いますが、アリスの気持ちを分かろうとしません。
「金がなければ夜逃げだ。一生 貧乏のままだぞ。もう ウンザリなんだ。
息子たちの軽蔑の眼差しにも、君の態度にも。片脚で 惨めな自分にもだ。
この3年、神に祈り続けた。だが、無駄だった」
ダンの瞳には深い苦悩が窺えます。
ついに出発の時が来ました。
しかし、ウイリアムはダンが家に残るよう言い聞かせても、不満で一杯の態度です。
バイロンはウエイドに、「明後日 3時10分発ユマ行きの汽車に」と告げます。
その晩、ウイリアムは無断で寝床を抜け出して銃を手に、家から出て行きます。
野営している時、ダンは兵に徴兵されたのか聞かれて答えます。
「元は志願兵だった。マサチューセッツの民兵だ。その後、’62年に連邦政府に招集され、
ワシントンを守った」
ウエイドは金がほしくて来たんだろう、とダンの神経を逆なですることばかり言います。
そのとき、タッカーが仲裁が入り、ダンはウエイドから離れます。
彼は嫌がらせのようにウエイドに絞首刑にされる男の歌を聞かせます。
夜明け前、ウエイドがタッカーを襲っていたため、バイロンが何度もウエイドを殴りつけています。タッカーはウエイドに金串で刺されて殺されました。
翌朝、チャーリーたちを欺くための馬車が襲われ、トリックに気づいたチャーリーは馬車の中の男を手錠で馬車につないで、ウエイドの連れて行かれた場所を白状したにもかかわらず、焼き殺します。
道すがら、ダンはウエイドにタッカーを殺した理由を尋ねます。
ウエイドは殺しはいけないというダンを偽善者、と詰りますが、アパッチの女・子どもを多数殺したバイロンも責めます。
「彼らを殺しても 神は許すんだな。神はアパッチは嫌いか」
自分の事を責められたバイロンが逆にウエイドの父親を酒飲みの墓荒らし、母親を娼婦と言い出すと、ウエイドはバイロンの馬に飛びかかって、彼を引き摺り下ろして岩で殴り殺します。
ウエイドはバイロンの銃を奪って彼らに突きつけますが、その時、後ろから彼らをつけてきていたウイリアムに発砲されて、形勢は再び逆転します。
ウイリアムも加えた夜、野営の火を囲みながらウエイドは彼を懐柔にかかります。
「(町には)最高の娼婦もいる。金さえあれば 全てが手に入る。欲しいものは何でもだ。
君くらいの年で行った」
すると、ダンが息子を誘惑から護るために言います。
「それから大勢 殺し、家庭を崩壊させた」
「一緒にするな。息子はまともな道を歩む」 ウエイドの小用の見張りに付き添ったダンは言います。
「俺は善意ってやつが嫌いだ。親切は一度やり始めるとクセになる。だが偽善だ。
人に感謝されると神になった気分か?」 ウエイドは持論を崩そうとしません。
そのとき、突然、アパッチたちが銃で襲撃してきます。
ダンは撃たれてしまい、戦闘に慣れているウエイドが彼らを倒しますが、そのまま行方をくらまします。しかし、ウエイドは鉱山労働者たちを使役している者たちに捕らえられて、私怨からリンチに遭います。
今度はダンたちにウエイドは助けられますが、銃撃されてドクターは死んでしまいます。
ダン一行は ようやく汽車が出る町に到着し、発車までの時間 ホテルに身を隠す事にします。
ウエイドは相変わらず、ダンに金での取引を持ちかけてきます。
見張り役のダンをウエイドは言葉巧みに説得しますが、彼は一切応じません。
バターフィールドに連れられて、町の保安官たちが加勢に来ますが、ダンたちが安心したのも束の間、チャーリーたちが追いついてきて、金で町のならず者たちを雇い入れたため、保安官たちは形勢不利と悟って彼らに投降してしまいますが、彼らはあっけなく撃ち殺されます。
それを見たウエイドはダンに言います。
「バターフィールドは お前を見捨てるだろう。お前と息子は何のために死ぬんだ?」
ホテルはチャーリーたちに包囲されていて、四面楚歌状態です。
ウエイドはダン親子に話しかけます。
「俺を説得しろ、お前たちを生かして何の得が?」
「やめさせろ。良心があるだろ」 そのウイリアムの言葉にダンは胸をつかれたような表情をします。
ウエイドは答えます。「根っからの悪人じゃなけりゃボスは務まらない」
3人がいる部屋にバターフィールドが入った来て、皆に逃げようと持ちかけます。ウイリアムも賛同します。しかし、ダンはバターフィールドが謝礼に約束した200ドルを差し出したのを見ても動こうとはしません。
「道中ずっと考えてたんだ。政府はこの脚に198ドル36セント払った。その金は何だったの
か。名目上は戦争補償だが、俺を厄介払いしただけだ。世の中 そんなものだ」
ダンは静かに話し続け、改めて息子に言います。
「お前は家に帰れ。俺たちが出ていくまで向かいの部屋に」
そして、バターフィールドに息子の安全と、ホランダーに今後手出しさせない事や補償金1000ドルを払う事を約束させて、ウエイドをユマ行きの汽車に乗せる事を明言します。
ダンは、何かあるたび ずっと握りしめていた勲章をウイリアムに示します。
「ウイリアム、これを母さんに。これのおかげで良心を保てたと伝えてくれ。
牧場と家族を守るのはお前しかいない。立派に成長してくれた。俺の誇りだ。
覚えておけ、お前の父親はベン・ウエイドを護送した。たった一人で」
父親を置いていけない、と必死で呼びかける息子にダンは万感の思いをこめて伝えます。
刻々と迫る時間のなか、苛立ちを隠せなくなったダンにウエイドは話します。
「聖書を読んだ、8歳の時に一度だけな。親父が酒で死んで お袋と東部へ引っ越す事に。
駅で聖書を渡され読んでろと言われた。お袋は切符を買いに行った。
最後まで読むのに3日かかった。お袋は戻らなかった」
ついに時間が来ました。
ダンはウエイドを前に行かせて後ろから銃を突きつけて、ゆっくり歩き始めます。
すると、ホテルや近くの建物の上から次々と銃弾が降り注ぐなか、彼らは物陰に身を隠しながら ダンが次々と敵を撃って駅へ進んでいきます。
なぜか ウエイドは不服を言わず、ダンのするに任せています。
一方、ウイリアムは部屋に戻ってきて ウエイドがスケッチしたダンの画を見て、二人を追いかけます。
チャーリーは無差別銃撃にウエイドが巻き込まれないようにするあまり、味方のはずの者たちまで撃ち殺します。
「頑固だぞ。ここまでだ。息子は行った。誰も見てない。片脚が無事なうちに帰れ」
とうとうウエイドがダンを投げ飛ばして言いますが、ダンは従いません。
「誇れるものが何もない。この脚だって退却の時に味方に撃たれた。
事実を話したら、息子たちはどう思う?」
ダンの言葉に、彼の頚を締め上げていたウエイドは「わかったよ」と言い離れます。
二人は銃撃を避けて屋根から飛び降ります。痛みに呻くダンをウエイドは助け起こして一緒に駅に向かって走りこみますが、ユマ行きの汽車は遅れています。
「俺は頑固じゃない。あの土地に留まるのには訳がある。下の息子のためだ。2歳の時に結核
になり、乾燥した所でないと死ぬと言われた。俺はただ 頑固じゃないと分かってほしくて」
その言葉を聞いて、初めて二人は揃って笑顔を交し合います。
「なら俺も告白しよう。ユマの刑務所にいた。2回入って2回脱走した」 ウエイドは笑ってダンに言います。
ようやく汽車が着きました。
駅はチャーリーたちが包囲していて汽車への乗り口を狙い撃ちしてきます。
すると、その時、ウイリアムが牛のゲートを開けてチャーリーたちを撹乱します。
おかげでダンは無事、ウエイドを汽車に乗せる事ができました。
「よくやった」 ウエイドはダンに笑いかけます。
しかし、ウエイドが止めるのを聞かず、チャーリーがダンの背後から何発も銃弾を浴びせます。
「手ごわかったぜ。片脚の牧場主にしてはな」 チャーリーは皮肉をこめてウエイドに言います。
それを呆然と見ていたウエイドは、チャーリーから受け取った彼のいわくつきの銃で、チャーリーたち全員を撃ち殺します。
最後まで見届けたウイリアムが倒れている父親の元に走り寄ってきて伝えます。
「すごいよ。尊敬する。ヤツを汽車に乗せた」
ウイリアムはウエイドに銃を構えますが、撃たずに彼が自分から汽車に乗るのを見送ります。
……動き出す汽車…ウエイドは銃を係員に渡して座席に座りますが、口笛で愛馬を呼び寄せます。
END
演技巧者の二人はもとより、どの役者さんたちも素晴しかったです!
ピーター・フォンダ、ベン・フォスターとアラン・テュディックよかったです。今更ですが、ラッセル・クロウってミッキー・ロークに似てる~。クリスチャン・ベイルはダニエル・デイ・ルイスかな?
脚本、上手いわー。「明日に向かって撃て」を髣髴とさせるシーンがありました!
私はジョン・フォードはもちろん、ジョン・スタージェスやサム・ペキンパの西部劇が好きです。
そして、川本三郎氏の「脇役グラフィティ」が好き!なので、こんな面白い映画が大好物です。
ジェームズ・マンゴールドえらいっ!