‘ 子ども時代とは 分別という 暗い世界を知る前に
音と匂いと自分の目で 事物を確かめる時代である ’ ジョン・ベチェマン
ナチスの党旗が建物に掲げられ 風にたなびくなか、幼い少年たちが遊んでいます。
彼らの表情は 明るく、映し出される人々の様子も活気があって それぞれの日々の営み送っているようです。
しかし、ある一角では、 荷物を抱えた人達が軍人たちによって トラックの荷台に 次々と乗せられ、なかには小さな子ども達もいます。
遊んでいた中の一人の黒髪の少年が帰宅すると、何か慌しげな様子です。
彼が聞いてみると、お祝いよ と 楽しげな声が返ってきます。
どうやら 彼の父が昇進したお祝いのパーティーが開かれるようです。
そして、軍人の父から家族に、 田舎へ引っ越して暮らすことを伝えられます。
少年は 親しい友達と会えなくなることで 引越しに乗り気ではありませんが、母や姉は嬉しそうです。
黒髪で青い瞳のブルーノと呼ばれた その少年に 父は、軍人は命令には従わなければならないことを言い聞かせます。
パーティーで 軍服の父が階段を下りてくるなか、同じ軍服の将校たちから <ハイル ヒトラー>の掛け声が掛かり、一斉に拍手が起こります。
皆に祝われている父に祖母は言います。
“ いい気分になるの?その軍服を着てると ” と。
父は誰かに聞かれたら、と祖母をたしなめます。
パーティーが終り、ブルーノは周りの様子を まるで 眼に焼き付けるように見つめます。
車に乗った少年を見送りに来た友達の影が見えなくなり、淋しそうな少年を母が抱きしめます。
目的地への汽車の中、家族は眠りにつく前の 神への祈りを捧げています。
静かな温かい時間が ゆっくりと過ぎていきます…。
少年たちが辿り着いた 新しい我が家には暗い雰囲気が漂い、軍人たちが大勢います。
ブルーノは 特に 父の若い部下に対して、嫌な奴 と嫌悪感をあらわにします。
キッチンに 丸刈り頭の痩せた初老の足の悪い男が野菜を届けにきます。それを訝しそうに見つめるブルーノ。
ブルーノは、この建物や周りの人々の様子に違和感を感じています。
ブルーノは母に言います。 “ やっぱり 変だ。農場の人、パジャマを着てる ”
母はそれを聞き、何かに思い当たった様子で 窓辺に寄り 確かめます。
帰りたい、と言う息子に父は 住めば気持ちも変わる、と説きますが、ブルーノはパジャマを着ている人々が窓から見えることを話します。
父はブルーノに説明します。
“ あの者たちは ちゃんとした人間じゃない。
私の仕事は おまえや国のために大事な仕事なのだ。
彼らも国をよくするために働いている ”
話の途中で母が入ってきて、ブルーノがここを農場だと思い込んでいることを利用しようと、父母は考えた様子ですが、ブルーノの追求は続きます。
“ パパは農場の仕事を?でも パパは軍人でしょ ”
ブルーノは母に農場の子ども達と遊んでいいか 聞きます。
“ やめた方がいいわ。やっぱり 変わってるから。私たちと違う。
心配ないわ。友達を見つけてあげる。普通の子たちを ”
母は そう言って、ブルーノをその場から 遠ざけます。
ブルーノは遊び相手がいないため かなり ご機嫌斜めで、お手伝いのマリアに愚痴をこぼします。
門の外には、軍用犬を連れた見張りの軍人が1人。
ブルーノは、そっと 誰もいない裏口に回ろうとしますが、母に見つかり 止められます。
家族揃っての食事で、ブルーノは 父からも裏へ行ってはいけないと注意されます。
さらに 学校ではなく 家庭教師が来ることを告げられ、同じ年頃の子と遊びたいブルーノはガッカリします。
ブルーノの姉グレーテルは父の部下の若い軍人に 車の説明をしてもらい、嬉しそうにしています。
ブルーノは彼にブランコを作りたいから、古タイヤがないか 聞きます。
彼は ブルーノの前で、あの初老のパジャマ姿の男を呼びつけ 彼のために 古タイヤを探すよう 命令します。
相手が部下でもないのに その厳しい命令口調にブルーノは驚きます。
気に入った古タイヤを探しに 初老の男について 裏口から出たブルーノは初めて入った納屋の様子を興味深げに見て、作ってもらったブランコで遊びます。
そのとき 何かを焼いた煙が空にたなびいてきます。
それに気をとられてか、ブルーノは ブランコから落ちて怪我をしてしまいますが、心配そうに初老の男が彼に駆け寄り、手当てをしてくれます。
ブルーノはその優しそうな瞳をした男に名前を聞きます。彼はパヴェルと名乗ります。
パヴェルは医者に行く必要がないことをブルーノに言いますが、彼が 医者でもないくせに と言うため、ここに来るまでは 医者だったことを話しますが、ブルーノは信用しません。
“ じゃあ ダメな医者だったんだ ” と、ジャガイモの皮むきをしている彼に皮肉気に言います。、パヴェルは一瞬 哀しげな表情を浮かべながらも すぐに 違う話題を振ります。
パヴェルはブルーノには 将来 探検家になりたい、という夢があることを知っているのを話します。驚く ブルーノ…。
そこへ 母が帰ってきてブルーノから事情を聞き、厳しい顔で ブルーノに部屋へ行くよう告げます。残った母とパヴェルの間には重苦しい空気が立ち込めますが、母は彼に“ ありがとう ” とそっと 伝えます。パヴェルは彼女がその場を離れていくのを見つめます。
学校へ行けない姉弟のために リストという年老いた家庭教師がやって来ます。
リストに聞かれ、姉は、今の国のことについて新聞を読んだり、父の部下に聞いているとやや自慢気に答えますが、ブルーノは冒険物の本を読んでいる と答えます。
リストは、8歳と答えるブルーノに 御伽噺は卒業して 事実を学ぶ年だと言い ドイツ年鑑を読むよう言い渡します。
ある日、ドイツ年鑑を読むのに飽きたブルーノは 誰もいない裏口から抜けて、納屋の窓から外へ飛び出します。
久しぶりに得た自由な空気…。
そして、ブルーノは有刺鉄線に囲まれた中にいる1人の少年と出会います。
汚れてヨレヨレになったパジャマを着た坊主頭の 自分より少し年下に見える少年が 1人でしゃがみこんで何かをしています。
ブルーノは彼に静かに近づいて声をかけます。少年は驚いて辺りを見渡します。
ブルーノが 探検している と言い、君は?と 問うと 少年は小屋を建てていると答えます。
彼から遠くに見える人影は大人が多く、皆 作業をしています。
ブルーノが自分の名前を言うと、少年もシュムールという名を教えてくれます。
シュムールはブルーノに食べ物を持っていないか聞き、空腹だと答えます。
シュムールが自分と同じ8歳だと知り、ブルーノは喜びます。
何も知らないブルーノは彼の服に付いている番号を何かの遊びだと羨ましがります。
シュムールは彼に、これは自分の番号で皆 付いていると説明しますが、そこへ号令の笛の音が聞こえます。
シュムールは急いで 作業道具をよろけながら 押してその場を離れますが、お互いに 会えて良かった気持ちを伝え合います。
ブルーノはシュムールと会うためにボールを探したり、空腹の彼のために 母の眼を盗んでチョコを隠して持って行こうとします。一方、母は息子の手当てをしてくれたパヴェルの様子が気になるようで、息子への注意がおざなりです。
母の助言で 地下室へボールを探しに行ったブルーノは、そこで 積み重ねられた裸の人形の山を見てしまいます。
その異様な光景に驚き 逃げ出したブルーノは思わず ボールを落として、姉グレーテルに そのことを訴えますが、ヒットラー・ユーゲントのポスターを壁に貼り付けているグレーテルは、まともに弟の相手をせず、“ みんな 命がけで戦ってるときに ” と答えます。
町に行った母を見送り、ブルーノはシュムールに会うため家を抜け出します。
ブルーノは彼に今まで疑問に思っていたことを聞きます。
“ なんで1日中 パジャマ着てるの?”
“ パジャマじゃない。僕たちの服を取られたから ”
“誰に? ”
“ 兵隊に ”
“ 兵隊?なんで?”
シュムールは答えず、逆に質問してきます。
“ 兵隊 嫌い。君は?”
“ 大好きだ。パパは軍人だ。服を取るような兵隊じゃない ”
一瞬、シュムールの表情が陰ります。
“ じゃ どんな? ”
“ 大事な仕事をしてるんだ 。みんなのために 国を良くしてる”
ブルーノは大人なのに自分のしたい仕事ができないなんて、とパヴェルの事も話します。
その頃、母が町から帰ってきて、ブルーノのいないことに気づきます。
そんなことは知らない二人の会話は続きます。
“ 煙突 何を燃やしてるの ? 煙が出てるのを見た。干草か何か? ”
“ 知らない。あっちへは行けない。ママは古着だって ”
“ 何だか ひどい 臭いだ ” つらそうな顔をするシュムール…。
ブルーノは チョコのことを聞かれ、“ うちへ晩ごはんに来ればいい ” と誘います。
シュムールは 有刺鉄線を指し、“ 無理だよ これがある ” と言います。
“ 家畜が逃げないためだろ? ” と ブルーノは 聞きます。
“ 家畜 ? 人間が逃げないためだ ” とシュムールは答えます。
ブルーノは驚いて聞き返します。
“ 君もダメなの?なにをしたの? ”
“ ユダヤ人だから … ” そう言って シュムールは俯きます。
何も言えず 困惑した様子のブルーノ…。
シュムールは 少し怯えた様子で それを見ています。
ブルーノは 突然、“ 帰らなきゃ ” と 言い出しますが、シュムールが “ 明日も 来る? ” と 問うと “ できたら ” と 返します。
そんな時、買い物から 帰ってきた 母が グレーテルの部屋に 土産を持って入って来ますが、壁中に ナチスのポスターを貼り、一心に切抜きを している娘の姿に 一瞬 戸惑います。
ブルーノは ブランコで 遊んでいるようなので 安心しますが…。
ある夜、父が電話すると、当然 二人揃って 遊びに来ると思っていた祖母が 具合が悪い と伝えられ、父は難しい顔で思案しています。
ブルーノは父に 自分が怪我をした日に ひどい臭いがしていなかったか 聞きます。
“ ゴミでも 燃やしてるんだ ” と 父は 言い、話を逸らします。
一方 母は ゲームをしている グレーテルが 興奮してブルーノに汚い言葉遣いをしたことを たしなめます。
母は父に グレーテルの言葉遣いが変わったのは家庭教師のせいではないか と 聞きますが、学校で習うべき 大事なことを学んでる、と 取り合おうとしません。
その 家庭教師の授業では ユダヤ人について 次のような本を読ませています。
『 ユダヤ人は 敵をそそのかし 悪書で我々を堕落させ 我々の文学をあざ笑い、破壊的な影響を まきちらした。その結果 我が国は崩壊し… 』
ブルーノが “ 1人のせいで 国が崩壊するの? ” と 質問すれば、
『 ユダヤ人とは ユダヤ全体のことだ 』、『 たった1人なら とっくに 始末されてた 』
厳格な表情で教師は答えます。
“ いい ユダヤ人も いるんでしょ? ” と 再度 ブルーノが問えば、
『 もし 君が いい ユダヤ人に出会ったら それこそ 世界一の探検家だ 』 という答えが返ってきます。
授業は なおも 続きます。
『 ユダヤ人の目的は人類の支配。創造的でなく 破壊的で 文化の敵である。彼らは ドイツ人を貧しくさせている 』
姉がその本を朗読している間中、ブルーノは 小さな身体で働いているシュムールの姿を思い浮かべています。
ある日、ブルーノは 鞄一杯に 食べ物を詰め込んでいるところを マリアに見咎められますが、そこに 行きあわせた母に 冒険の本を鞄に詰めている と 嘘を言い、逆に 以前と変わらないことで 母を安心させます。
シュムールはブルーノが持ち出した食べ物を 貪るように食べます。
ブルーノが 彼と遊ぼうと ボールを有刺鉄線の中に投げ入れると、
“ 投げないで。危険だから ”
と 彼は注意し、物陰に隠れて 周囲の様子を気にしています。
そして、号令がかかり 急いで行ってしまうシュムールに ブルーノは物問いた気ですが、言葉を飲み込みます。
買い物から帰った母は 異臭に気づきます。
彼女は、夫の部下の 『 やつら 燃やすと よけい 臭い 』 という 言葉を耳にします。
何のことか 分からないという顔をする彼女は 空に広がっている黒い煙を見つめます。
彼女は夫に煙のことを聴きます。
“ これは 極秘なんだ ”
“ 妻にも? ”
“ そうだ ”
“ 命にかけて 他言しないと誓ったのだ ”
“ エルサ 君も思いは同じだろ? ”
“ この国を強い… ” その言葉を遮って 彼女は言います。
“ いいえ ラルフ、あんなことはだめ!” 強い意志を感じさせる表情で彼女は叫びます。
“ よくも そんな… ”
“ 私は軍人だ。戦争で戦うのだ ”
“ あれが 戦争?”
“ 戦争の一部だ。重要な一部だ ”
“ 我々 皆が望む祖国を作るためには こういう仕事も必要なんだ ”
“ 来ないで!側に来ないで! ” とうとう 彼女は泣き出してしまい、そんな ところに ブルーノが 祖父の到着を知らせに来ます。
夫は そんな妻を忌々しげに見ています。
重苦しい沈黙の中で、祖父を迎えて 皆で食事しているため、ブルーノは来ていない祖母について聞きます。
“ いいか ラルフ 母さんは 本当に病気なんだ ” と 祖父は言いにくそうに 告げます。
途中、ラルフの部下コトラー中尉が他国に行った父親の話を始め、ラルフと祖父が それを責めた時、中尉は たまたま 失敗をしたパヴェルを 『 ばかユダヤ人!ぶため!』 と罵りながら 一方的に 暴力を振るいます。
悲痛な声で 夫に制止を求める妻の声や驚いている子ども達の顔にも、彼は知らん顔で 食事を続けます。
子ども部屋で ブルーノは パヴェルを打ち据えるコトラー中尉を父が止めなかったのを、 いまだ信じられない思いで 姉に訴えます。
グレーテルは『 当然よ。ユダヤ人だもの 』 と 歯牙にもかけない様子です。
彼女は ブルーノが あの場所を、いまだ 農場だと思っているため 弟に言います。
『 収容所よ、強制労働収容所。ユダヤ人のね 』
『 よく働くからじゃない。彼らはよくない。悪いから入ってるの。敵よ』
『 やつらは危険な害虫なの。おかげで前の戦争にも負けた 』
ブルーノは言います。『 パパは ひどくない。いい人だよね 』
『 もちろんよ 』
『 でも ひどい所の所長だ 』
『 ユダヤ人にだけ。もっと パパを 誇りに思わなきゃ。立派な国を創ってる 』
ブルーノは複雑な思いで 姉の話を聞いています。
翌朝の食卓で ブルーノは、髪も整えず 泣きはらした眼をした母を心配そうに見ています。皆 気には なりますが あえて 誰も口にしないままです。
ある日、ブルーノは 家で シュムールがグラス磨きをしているのを見て、喜んで 話しかけます。そして、いつものように 彼にお菓子を食べさせているところを コトラー中尉に見られます。
コトラー中尉は 厳しく シュムールを問いただしたので、彼はブルーノに貰ったことを言ってしまいます。すると、今度はブルーノが詰問されます。
コトラー中尉を恐れるブルーノは
“違うよ。勝手に食べてたんだ。こんな子 見たことない ” と 言ってしまいます。
ブルーノの返答に満足した中尉は、彼を部屋に帰らせます。
” 泥棒ネズミが どんな目に あうか 教えてやる ” という 恐ろしい言葉を残して…。
中尉を恐れて シュムールを裏切ったことに ブルーノは苦しみます。シュムールを心配して ブルーノは 食堂に 急いで戻りますが、もう そこには シュムールの姿はありませんでした。
ひとり物思いに沈むブルーノは ある日、父や他の軍人たちが ユダヤ人の強制収容所での生活を描いている映画を上映しているのを見ます。そこには ユダヤ人が恵まれた食事や娯楽を与えられ 生き生きとした毎日を送っている様子が映されています。
ブルーノは その映画の内容をすっかり信じ込んで、父に抱きつきます。母はその様子を見て、視線を逸らします。
何日かあと、ブルーノは ようやく シュムールと再会しますが、彼の右目の周りは腫れあがり まともに 開くこともできない状態です。
ブルーノは あの映画のことを話して どういうことか 彼に聞きますが、シュムールは項垂れたままです。
ブルーノが “ このあいだは本当にごめん。まだ 友達だよね ” と言うと、なんとか シュムールも差し出した彼の手を有刺鉄線越しに握り返してくれます。
食卓では、母はガウン姿で 誰とも視線も言葉も交わさず、自分の世界に籠もっているようです。しかし、グレーテルがコトラー中尉を最近 見かけないことを話題にすると、母は彼女の夫を責めはじめます。
“ 前線に送られた理由は 党に逆らう父親のことを 報告してなかったから ”
“ 反逆者が母でなく父親だったから ” “ 母親なら報告しなくていい ”
そんな 妻の言葉にムッとしながらも、父は電話が掛かってきたため 席をはずします。
ブルーノは母に パヴェルは戻るのか 聞きますが、彼女は首を振るだけで 姉が否定します。
そして 電話を受けた父は 家が爆撃に遭い、祖母が死んでしまったことを告げます。
葬儀のときも母は、ヒトラーからの弔辞を見て “ こんなのはお母様は喜ばないわ ”と 父を責めます。
ブルーノはシュムールと再び 何事もなかったかのように 仲良く遊んでいます。
これまで 笑わなかったシュムールにも 笑顔が見られるようになりました。
一方、母の心は さらに現実から離れていっているようで、父もそんな彼女を詰りだします。
夜中、ブルーノとグレーテルは 両親の 罵りあう声を聞きながら ひとつのベッドで身を寄せ合って眠ります。
そんなとき 父が姉弟に、母と一緒に安全な所へ移るように話します。ブルーノは シュムールのことが気がかりで 行くのを躊躇いますが、父の意見は絶対で変えることはできません。
ブルーノが そのことを シュムールに告げに言った時、彼は 父が いつもと違う仕事に行って帰って来ないことに 沈み込んでいました。彼の表情は 不安で一杯です。
ブルーノは 以前 シュムールにひどいことをしたから と 彼の父を 一緒に捜すことを 提案します。<秘密の任務 楽しそう>と、ブルーノの言葉には 切迫感が全く感じられず、彼は 今の状況を何も理解していません。
ブルーノは 有刺鉄線の下の地面を掘って シュムールのいる所へ行くと 言い出し、シュムールは 自分と同じ服を持ってくる と 続けて、二人でシュムールの父を一緒に捜すことにします。
決行の日は ブルーノが 母や姉とよそへ移る日でしたが、彼は忙しい母の目を盗んで そっと抜け出します。
ブルーノは シュムールが持ってきた縞模様の服に着替え 穴を掘り、収容所内に入り込みます。
その頃、ブルーノの母は 彼がいないことに ようやく気づきます。おりしも 空は暗雲がたちこめ、観る者に 不安を感じさせます。
ブルーノは シュムールについて 収容所内を歩きますが、そこには 以前 映画で観た カフェなどなく 活気のない様子の人々が たむろしています。その様を見て 不安になったのか、ブルーノは帰る、と 一旦 言い出しますが、シュムールの言葉に 気を取り直して彼の父捜しを続けます。
その頃、ブルーノの母は、彼が見当たらないことを 必死で 夫に話し、彼をグレーテルと一緒に捜しはじめます。彼の父も 急いで部下を引き連れ、ブルーノが通った道筋を追って 収容所に辿り着きます。
一方、ブルーノ達は 小屋に入った途端、号令が掛かり、二人は<行進>する人並に巻き込まれます。<行進>をさせているのは、軍人だけでなく 棒を持った 同じ縞模様の服に腕章を付けた者たちです。
二人は小屋の中に他の人達と一緒に詰め込まれ、否応なく衣服を脱がせられます。
やっと ブルーノの母と姉が 父達に追いついた先で見たものは、有刺鉄線の側の彼が脱いだ衣類と掘られた穴だけです。彼女たちは 事情が分からず、茫然とそこに立ちすくみます。
そうして 服を脱がされたブルーノとシュムールは不安や恐怖と闘うためにお互いの手をしっかりと握り合います。
すると、彼らの頭上では煙突の穴から マスクをつけた人間が何かをふりかけるように入れてきます。
…降りしきる雨の中、必死でブルーノを捜していた父の目に映ったものは、ひとつだけポツンと 誰もいなくなった小屋の中です。
彼は ある予感に とりつかれ その場所に走りますが、その小屋の扉は誰も出入りできないように厳重に施錠されているだけで、恐ろしいほどの沈黙で満たされています…。
…茫然と 言葉を失い そこに立ちつくしていた父は 突然、全てを理解し ブルーノの名前を叫びます。
その声に、母や姉も 最悪の結果に思い至り その場に崩れこみ、ブルーノの服をかき抱き 身を振り絞るように泣き叫びます…。
後に残るのは 皆が脱いだ衣服と、 堅く閉ざされた冷たい扉のみです…。
…この映画は虚構と歴史上の事実を 融合させて、とても 分かりやすく その時代の 社会状況や人々の心情を 観る側に伝えてくれます。
常にブルーノを通した視点なので 可能な限り 偏見や過剰な描写を排除していて、大人だけでなく 子どもにこそ 観てほしい作品だと思います。
とにかく 出演者全員の演技が素晴しかったです!特に セリフの少ない場面でも 瞳がそれ以上を物語っています。
マーク・ハーマン監督作品。
音と匂いと自分の目で 事物を確かめる時代である ’ ジョン・ベチェマン
ナチスの党旗が建物に掲げられ 風にたなびくなか、幼い少年たちが遊んでいます。
彼らの表情は 明るく、映し出される人々の様子も活気があって それぞれの日々の営み送っているようです。
しかし、ある一角では、 荷物を抱えた人達が軍人たちによって トラックの荷台に 次々と乗せられ、なかには小さな子ども達もいます。
遊んでいた中の一人の黒髪の少年が帰宅すると、何か慌しげな様子です。
彼が聞いてみると、お祝いよ と 楽しげな声が返ってきます。
どうやら 彼の父が昇進したお祝いのパーティーが開かれるようです。
そして、軍人の父から家族に、 田舎へ引っ越して暮らすことを伝えられます。
少年は 親しい友達と会えなくなることで 引越しに乗り気ではありませんが、母や姉は嬉しそうです。
黒髪で青い瞳のブルーノと呼ばれた その少年に 父は、軍人は命令には従わなければならないことを言い聞かせます。
パーティーで 軍服の父が階段を下りてくるなか、同じ軍服の将校たちから <ハイル ヒトラー>の掛け声が掛かり、一斉に拍手が起こります。
皆に祝われている父に祖母は言います。
“ いい気分になるの?その軍服を着てると ” と。
父は誰かに聞かれたら、と祖母をたしなめます。
パーティーが終り、ブルーノは周りの様子を まるで 眼に焼き付けるように見つめます。
車に乗った少年を見送りに来た友達の影が見えなくなり、淋しそうな少年を母が抱きしめます。
目的地への汽車の中、家族は眠りにつく前の 神への祈りを捧げています。
静かな温かい時間が ゆっくりと過ぎていきます…。
少年たちが辿り着いた 新しい我が家には暗い雰囲気が漂い、軍人たちが大勢います。
ブルーノは 特に 父の若い部下に対して、嫌な奴 と嫌悪感をあらわにします。
キッチンに 丸刈り頭の痩せた初老の足の悪い男が野菜を届けにきます。それを訝しそうに見つめるブルーノ。
ブルーノは、この建物や周りの人々の様子に違和感を感じています。
ブルーノは母に言います。 “ やっぱり 変だ。農場の人、パジャマを着てる ”
母はそれを聞き、何かに思い当たった様子で 窓辺に寄り 確かめます。
帰りたい、と言う息子に父は 住めば気持ちも変わる、と説きますが、ブルーノはパジャマを着ている人々が窓から見えることを話します。
父はブルーノに説明します。
“ あの者たちは ちゃんとした人間じゃない。
私の仕事は おまえや国のために大事な仕事なのだ。
彼らも国をよくするために働いている ”
話の途中で母が入ってきて、ブルーノがここを農場だと思い込んでいることを利用しようと、父母は考えた様子ですが、ブルーノの追求は続きます。
“ パパは農場の仕事を?でも パパは軍人でしょ ”
ブルーノは母に農場の子ども達と遊んでいいか 聞きます。
“ やめた方がいいわ。やっぱり 変わってるから。私たちと違う。
心配ないわ。友達を見つけてあげる。普通の子たちを ”
母は そう言って、ブルーノをその場から 遠ざけます。
ブルーノは遊び相手がいないため かなり ご機嫌斜めで、お手伝いのマリアに愚痴をこぼします。
門の外には、軍用犬を連れた見張りの軍人が1人。
ブルーノは、そっと 誰もいない裏口に回ろうとしますが、母に見つかり 止められます。
家族揃っての食事で、ブルーノは 父からも裏へ行ってはいけないと注意されます。
さらに 学校ではなく 家庭教師が来ることを告げられ、同じ年頃の子と遊びたいブルーノはガッカリします。
ブルーノの姉グレーテルは父の部下の若い軍人に 車の説明をしてもらい、嬉しそうにしています。
ブルーノは彼にブランコを作りたいから、古タイヤがないか 聞きます。
彼は ブルーノの前で、あの初老のパジャマ姿の男を呼びつけ 彼のために 古タイヤを探すよう 命令します。
相手が部下でもないのに その厳しい命令口調にブルーノは驚きます。
気に入った古タイヤを探しに 初老の男について 裏口から出たブルーノは初めて入った納屋の様子を興味深げに見て、作ってもらったブランコで遊びます。
そのとき 何かを焼いた煙が空にたなびいてきます。
それに気をとられてか、ブルーノは ブランコから落ちて怪我をしてしまいますが、心配そうに初老の男が彼に駆け寄り、手当てをしてくれます。
ブルーノはその優しそうな瞳をした男に名前を聞きます。彼はパヴェルと名乗ります。
パヴェルは医者に行く必要がないことをブルーノに言いますが、彼が 医者でもないくせに と言うため、ここに来るまでは 医者だったことを話しますが、ブルーノは信用しません。
“ じゃあ ダメな医者だったんだ ” と、ジャガイモの皮むきをしている彼に皮肉気に言います。、パヴェルは一瞬 哀しげな表情を浮かべながらも すぐに 違う話題を振ります。
パヴェルはブルーノには 将来 探検家になりたい、という夢があることを知っているのを話します。驚く ブルーノ…。
そこへ 母が帰ってきてブルーノから事情を聞き、厳しい顔で ブルーノに部屋へ行くよう告げます。残った母とパヴェルの間には重苦しい空気が立ち込めますが、母は彼に“ ありがとう ” とそっと 伝えます。パヴェルは彼女がその場を離れていくのを見つめます。
学校へ行けない姉弟のために リストという年老いた家庭教師がやって来ます。
リストに聞かれ、姉は、今の国のことについて新聞を読んだり、父の部下に聞いているとやや自慢気に答えますが、ブルーノは冒険物の本を読んでいる と答えます。
リストは、8歳と答えるブルーノに 御伽噺は卒業して 事実を学ぶ年だと言い ドイツ年鑑を読むよう言い渡します。
ある日、ドイツ年鑑を読むのに飽きたブルーノは 誰もいない裏口から抜けて、納屋の窓から外へ飛び出します。
久しぶりに得た自由な空気…。
そして、ブルーノは有刺鉄線に囲まれた中にいる1人の少年と出会います。
汚れてヨレヨレになったパジャマを着た坊主頭の 自分より少し年下に見える少年が 1人でしゃがみこんで何かをしています。
ブルーノは彼に静かに近づいて声をかけます。少年は驚いて辺りを見渡します。
ブルーノが 探検している と言い、君は?と 問うと 少年は小屋を建てていると答えます。
彼から遠くに見える人影は大人が多く、皆 作業をしています。
ブルーノが自分の名前を言うと、少年もシュムールという名を教えてくれます。
シュムールはブルーノに食べ物を持っていないか聞き、空腹だと答えます。
シュムールが自分と同じ8歳だと知り、ブルーノは喜びます。
何も知らないブルーノは彼の服に付いている番号を何かの遊びだと羨ましがります。
シュムールは彼に、これは自分の番号で皆 付いていると説明しますが、そこへ号令の笛の音が聞こえます。
シュムールは急いで 作業道具をよろけながら 押してその場を離れますが、お互いに 会えて良かった気持ちを伝え合います。
ブルーノはシュムールと会うためにボールを探したり、空腹の彼のために 母の眼を盗んでチョコを隠して持って行こうとします。一方、母は息子の手当てをしてくれたパヴェルの様子が気になるようで、息子への注意がおざなりです。
母の助言で 地下室へボールを探しに行ったブルーノは、そこで 積み重ねられた裸の人形の山を見てしまいます。
その異様な光景に驚き 逃げ出したブルーノは思わず ボールを落として、姉グレーテルに そのことを訴えますが、ヒットラー・ユーゲントのポスターを壁に貼り付けているグレーテルは、まともに弟の相手をせず、“ みんな 命がけで戦ってるときに ” と答えます。
町に行った母を見送り、ブルーノはシュムールに会うため家を抜け出します。
ブルーノは彼に今まで疑問に思っていたことを聞きます。
“ なんで1日中 パジャマ着てるの?”
“ パジャマじゃない。僕たちの服を取られたから ”
“誰に? ”
“ 兵隊に ”
“ 兵隊?なんで?”
シュムールは答えず、逆に質問してきます。
“ 兵隊 嫌い。君は?”
“ 大好きだ。パパは軍人だ。服を取るような兵隊じゃない ”
一瞬、シュムールの表情が陰ります。
“ じゃ どんな? ”
“ 大事な仕事をしてるんだ 。みんなのために 国を良くしてる”
ブルーノは大人なのに自分のしたい仕事ができないなんて、とパヴェルの事も話します。
その頃、母が町から帰ってきて、ブルーノのいないことに気づきます。
そんなことは知らない二人の会話は続きます。
“ 煙突 何を燃やしてるの ? 煙が出てるのを見た。干草か何か? ”
“ 知らない。あっちへは行けない。ママは古着だって ”
“ 何だか ひどい 臭いだ ” つらそうな顔をするシュムール…。
ブルーノは チョコのことを聞かれ、“ うちへ晩ごはんに来ればいい ” と誘います。
シュムールは 有刺鉄線を指し、“ 無理だよ これがある ” と言います。
“ 家畜が逃げないためだろ? ” と ブルーノは 聞きます。
“ 家畜 ? 人間が逃げないためだ ” とシュムールは答えます。
ブルーノは驚いて聞き返します。
“ 君もダメなの?なにをしたの? ”
“ ユダヤ人だから … ” そう言って シュムールは俯きます。
何も言えず 困惑した様子のブルーノ…。
シュムールは 少し怯えた様子で それを見ています。
ブルーノは 突然、“ 帰らなきゃ ” と 言い出しますが、シュムールが “ 明日も 来る? ” と 問うと “ できたら ” と 返します。
そんな時、買い物から 帰ってきた 母が グレーテルの部屋に 土産を持って入って来ますが、壁中に ナチスのポスターを貼り、一心に切抜きを している娘の姿に 一瞬 戸惑います。
ブルーノは ブランコで 遊んでいるようなので 安心しますが…。
ある夜、父が電話すると、当然 二人揃って 遊びに来ると思っていた祖母が 具合が悪い と伝えられ、父は難しい顔で思案しています。
ブルーノは父に 自分が怪我をした日に ひどい臭いがしていなかったか 聞きます。
“ ゴミでも 燃やしてるんだ ” と 父は 言い、話を逸らします。
一方 母は ゲームをしている グレーテルが 興奮してブルーノに汚い言葉遣いをしたことを たしなめます。
母は父に グレーテルの言葉遣いが変わったのは家庭教師のせいではないか と 聞きますが、学校で習うべき 大事なことを学んでる、と 取り合おうとしません。
その 家庭教師の授業では ユダヤ人について 次のような本を読ませています。
『 ユダヤ人は 敵をそそのかし 悪書で我々を堕落させ 我々の文学をあざ笑い、破壊的な影響を まきちらした。その結果 我が国は崩壊し… 』
ブルーノが “ 1人のせいで 国が崩壊するの? ” と 質問すれば、
『 ユダヤ人とは ユダヤ全体のことだ 』、『 たった1人なら とっくに 始末されてた 』
厳格な表情で教師は答えます。
“ いい ユダヤ人も いるんでしょ? ” と 再度 ブルーノが問えば、
『 もし 君が いい ユダヤ人に出会ったら それこそ 世界一の探検家だ 』 という答えが返ってきます。
授業は なおも 続きます。
『 ユダヤ人の目的は人類の支配。創造的でなく 破壊的で 文化の敵である。彼らは ドイツ人を貧しくさせている 』
姉がその本を朗読している間中、ブルーノは 小さな身体で働いているシュムールの姿を思い浮かべています。
ある日、ブルーノは 鞄一杯に 食べ物を詰め込んでいるところを マリアに見咎められますが、そこに 行きあわせた母に 冒険の本を鞄に詰めている と 嘘を言い、逆に 以前と変わらないことで 母を安心させます。
シュムールはブルーノが持ち出した食べ物を 貪るように食べます。
ブルーノが 彼と遊ぼうと ボールを有刺鉄線の中に投げ入れると、
“ 投げないで。危険だから ”
と 彼は注意し、物陰に隠れて 周囲の様子を気にしています。
そして、号令がかかり 急いで行ってしまうシュムールに ブルーノは物問いた気ですが、言葉を飲み込みます。
買い物から帰った母は 異臭に気づきます。
彼女は、夫の部下の 『 やつら 燃やすと よけい 臭い 』 という 言葉を耳にします。
何のことか 分からないという顔をする彼女は 空に広がっている黒い煙を見つめます。
彼女は夫に煙のことを聴きます。
“ これは 極秘なんだ ”
“ 妻にも? ”
“ そうだ ”
“ 命にかけて 他言しないと誓ったのだ ”
“ エルサ 君も思いは同じだろ? ”
“ この国を強い… ” その言葉を遮って 彼女は言います。
“ いいえ ラルフ、あんなことはだめ!” 強い意志を感じさせる表情で彼女は叫びます。
“ よくも そんな… ”
“ 私は軍人だ。戦争で戦うのだ ”
“ あれが 戦争?”
“ 戦争の一部だ。重要な一部だ ”
“ 我々 皆が望む祖国を作るためには こういう仕事も必要なんだ ”
“ 来ないで!側に来ないで! ” とうとう 彼女は泣き出してしまい、そんな ところに ブルーノが 祖父の到着を知らせに来ます。
夫は そんな妻を忌々しげに見ています。
重苦しい沈黙の中で、祖父を迎えて 皆で食事しているため、ブルーノは来ていない祖母について聞きます。
“ いいか ラルフ 母さんは 本当に病気なんだ ” と 祖父は言いにくそうに 告げます。
途中、ラルフの部下コトラー中尉が他国に行った父親の話を始め、ラルフと祖父が それを責めた時、中尉は たまたま 失敗をしたパヴェルを 『 ばかユダヤ人!ぶため!』 と罵りながら 一方的に 暴力を振るいます。
悲痛な声で 夫に制止を求める妻の声や驚いている子ども達の顔にも、彼は知らん顔で 食事を続けます。
子ども部屋で ブルーノは パヴェルを打ち据えるコトラー中尉を父が止めなかったのを、 いまだ信じられない思いで 姉に訴えます。
グレーテルは『 当然よ。ユダヤ人だもの 』 と 歯牙にもかけない様子です。
彼女は ブルーノが あの場所を、いまだ 農場だと思っているため 弟に言います。
『 収容所よ、強制労働収容所。ユダヤ人のね 』
『 よく働くからじゃない。彼らはよくない。悪いから入ってるの。敵よ』
『 やつらは危険な害虫なの。おかげで前の戦争にも負けた 』
ブルーノは言います。『 パパは ひどくない。いい人だよね 』
『 もちろんよ 』
『 でも ひどい所の所長だ 』
『 ユダヤ人にだけ。もっと パパを 誇りに思わなきゃ。立派な国を創ってる 』
ブルーノは複雑な思いで 姉の話を聞いています。
翌朝の食卓で ブルーノは、髪も整えず 泣きはらした眼をした母を心配そうに見ています。皆 気には なりますが あえて 誰も口にしないままです。
ある日、ブルーノは 家で シュムールがグラス磨きをしているのを見て、喜んで 話しかけます。そして、いつものように 彼にお菓子を食べさせているところを コトラー中尉に見られます。
コトラー中尉は 厳しく シュムールを問いただしたので、彼はブルーノに貰ったことを言ってしまいます。すると、今度はブルーノが詰問されます。
コトラー中尉を恐れるブルーノは
“違うよ。勝手に食べてたんだ。こんな子 見たことない ” と 言ってしまいます。
ブルーノの返答に満足した中尉は、彼を部屋に帰らせます。
” 泥棒ネズミが どんな目に あうか 教えてやる ” という 恐ろしい言葉を残して…。
中尉を恐れて シュムールを裏切ったことに ブルーノは苦しみます。シュムールを心配して ブルーノは 食堂に 急いで戻りますが、もう そこには シュムールの姿はありませんでした。
ひとり物思いに沈むブルーノは ある日、父や他の軍人たちが ユダヤ人の強制収容所での生活を描いている映画を上映しているのを見ます。そこには ユダヤ人が恵まれた食事や娯楽を与えられ 生き生きとした毎日を送っている様子が映されています。
ブルーノは その映画の内容をすっかり信じ込んで、父に抱きつきます。母はその様子を見て、視線を逸らします。
何日かあと、ブルーノは ようやく シュムールと再会しますが、彼の右目の周りは腫れあがり まともに 開くこともできない状態です。
ブルーノは あの映画のことを話して どういうことか 彼に聞きますが、シュムールは項垂れたままです。
ブルーノが “ このあいだは本当にごめん。まだ 友達だよね ” と言うと、なんとか シュムールも差し出した彼の手を有刺鉄線越しに握り返してくれます。
食卓では、母はガウン姿で 誰とも視線も言葉も交わさず、自分の世界に籠もっているようです。しかし、グレーテルがコトラー中尉を最近 見かけないことを話題にすると、母は彼女の夫を責めはじめます。
“ 前線に送られた理由は 党に逆らう父親のことを 報告してなかったから ”
“ 反逆者が母でなく父親だったから ” “ 母親なら報告しなくていい ”
そんな 妻の言葉にムッとしながらも、父は電話が掛かってきたため 席をはずします。
ブルーノは母に パヴェルは戻るのか 聞きますが、彼女は首を振るだけで 姉が否定します。
そして 電話を受けた父は 家が爆撃に遭い、祖母が死んでしまったことを告げます。
葬儀のときも母は、ヒトラーからの弔辞を見て “ こんなのはお母様は喜ばないわ ”と 父を責めます。
ブルーノはシュムールと再び 何事もなかったかのように 仲良く遊んでいます。
これまで 笑わなかったシュムールにも 笑顔が見られるようになりました。
一方、母の心は さらに現実から離れていっているようで、父もそんな彼女を詰りだします。
夜中、ブルーノとグレーテルは 両親の 罵りあう声を聞きながら ひとつのベッドで身を寄せ合って眠ります。
そんなとき 父が姉弟に、母と一緒に安全な所へ移るように話します。ブルーノは シュムールのことが気がかりで 行くのを躊躇いますが、父の意見は絶対で変えることはできません。
ブルーノが そのことを シュムールに告げに言った時、彼は 父が いつもと違う仕事に行って帰って来ないことに 沈み込んでいました。彼の表情は 不安で一杯です。
ブルーノは 以前 シュムールにひどいことをしたから と 彼の父を 一緒に捜すことを 提案します。<秘密の任務 楽しそう>と、ブルーノの言葉には 切迫感が全く感じられず、彼は 今の状況を何も理解していません。
ブルーノは 有刺鉄線の下の地面を掘って シュムールのいる所へ行くと 言い出し、シュムールは 自分と同じ服を持ってくる と 続けて、二人でシュムールの父を一緒に捜すことにします。
決行の日は ブルーノが 母や姉とよそへ移る日でしたが、彼は忙しい母の目を盗んで そっと抜け出します。
ブルーノは シュムールが持ってきた縞模様の服に着替え 穴を掘り、収容所内に入り込みます。
その頃、ブルーノの母は 彼がいないことに ようやく気づきます。おりしも 空は暗雲がたちこめ、観る者に 不安を感じさせます。
ブルーノは シュムールについて 収容所内を歩きますが、そこには 以前 映画で観た カフェなどなく 活気のない様子の人々が たむろしています。その様を見て 不安になったのか、ブルーノは帰る、と 一旦 言い出しますが、シュムールの言葉に 気を取り直して彼の父捜しを続けます。
その頃、ブルーノの母は、彼が見当たらないことを 必死で 夫に話し、彼をグレーテルと一緒に捜しはじめます。彼の父も 急いで部下を引き連れ、ブルーノが通った道筋を追って 収容所に辿り着きます。
一方、ブルーノ達は 小屋に入った途端、号令が掛かり、二人は<行進>する人並に巻き込まれます。<行進>をさせているのは、軍人だけでなく 棒を持った 同じ縞模様の服に腕章を付けた者たちです。
二人は小屋の中に他の人達と一緒に詰め込まれ、否応なく衣服を脱がせられます。
やっと ブルーノの母と姉が 父達に追いついた先で見たものは、有刺鉄線の側の彼が脱いだ衣類と掘られた穴だけです。彼女たちは 事情が分からず、茫然とそこに立ちすくみます。
そうして 服を脱がされたブルーノとシュムールは不安や恐怖と闘うためにお互いの手をしっかりと握り合います。
すると、彼らの頭上では煙突の穴から マスクをつけた人間が何かをふりかけるように入れてきます。
…降りしきる雨の中、必死でブルーノを捜していた父の目に映ったものは、ひとつだけポツンと 誰もいなくなった小屋の中です。
彼は ある予感に とりつかれ その場所に走りますが、その小屋の扉は誰も出入りできないように厳重に施錠されているだけで、恐ろしいほどの沈黙で満たされています…。
…茫然と 言葉を失い そこに立ちつくしていた父は 突然、全てを理解し ブルーノの名前を叫びます。
その声に、母や姉も 最悪の結果に思い至り その場に崩れこみ、ブルーノの服をかき抱き 身を振り絞るように泣き叫びます…。
後に残るのは 皆が脱いだ衣服と、 堅く閉ざされた冷たい扉のみです…。
…この映画は虚構と歴史上の事実を 融合させて、とても 分かりやすく その時代の 社会状況や人々の心情を 観る側に伝えてくれます。
常にブルーノを通した視点なので 可能な限り 偏見や過剰な描写を排除していて、大人だけでなく 子どもにこそ 観てほしい作品だと思います。
とにかく 出演者全員の演技が素晴しかったです!特に セリフの少ない場面でも 瞳がそれ以上を物語っています。
マーク・ハーマン監督作品。