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日々徒然なるままに

うちの可愛い犬猫やお気に入りの映画・マンガのことなどをちょっと暴走気味に語ってます。ネタばれありますのでご注意下さい。

アニメ「黒執事」Ⅸ②

2010年11月19日 | アニメ「黒執事」

「その執事、滔滔(とうとう)」

「坊ちゃん、少し揺れます」
セバスチャンはシエルにそう言ってから、ゆっくりと小船を静かに漕いでいきます。
暗い闇の中、明かりが灯っている窓もありますが、路上には折り重なるように死体が転がっていて、街は恐ろしい沈黙に満たされています。
空からは、まだ燃え残っているのか火の粉が舞い、その中には あの天使の白い羽も混じっています。

「どこへ行く?」
「この英国には、悪魔がつくったとされる魔境と呼ばれる橋が幾つか存在します。
 対して、あのタワーブリッジは天使が女王陛下に造らせたであろう聖なる橋」
シエルはその<聖なる橋>から人々の呻く様と、その声を感じ取ります。
「人柱…こんな物が<聖なる橋>だと言うのか」
「いきすぎたせいか、前よりよほど性質が悪いものです。坊ちゃん、ここで 暫くお待ち下さい」
「僕も行くっ!」
「ハッキリ申し上げましょう、足手まといです」
「なるほど。枷があっては、お前では到底 勝てない相手だと言うんだな」
「…分かりました。どうぞ、特等席で御覧下さいませ」
そう言ってセバスチャンはシエルを肩に抱いてタワーブリッジに登っていきます。
(セバスチャンは とことんシエルのオネダリに弱いみたいですね

「燃えている…。陛下の夢も、人の世も。あぁ、とうとう我が父の偉大な輝かしい日が到来する。
 血と火と、立ち込める煙がその印。そうでしょう、悪魔?」
アッシュはタワーブリッジの上から、炎上する街を見下ろしながら感涙に咽んでいるようです。
シエルは彼に問いただします。
「何故 女王まで殺した?」
「魚の目だったんです。未来を見るべき彼女の瞳は、過去に捕らわれ淀み腐ってしまった。浄
 化して差し上げるしか方法がなかったんです」
セバスチャンはシエルを近くに降ろして囁きます。
「多少 座り心地は悪いですが、これ以上の良席はないかと。では、ご命令を」
「奴を、天使を殺せっ!」シエルはもう必要ない、とばかりに眼帯を投げ捨てて命じます。
その様を見ていたセバスチャンの瞳は、シエルの想いが映されたかのように いつもより更に美しい輝きに満ちています。
「イエス、マイロード!」
彼はシエルに膝まづいて、心よりの誓いを込めて答えます。

「この橋が完成した暁には、ロンドンを不浄から護る結界となります。
 その門に悪魔が降り立ったとなれば、天使としては粛清して差し上げねばならない。
 穢れもなく、心もなく、命もない白い存在にっ!」
ついに天使と悪魔の戦いが始まります!
ふたりは宙を跳び、アッシュは剣をセバスチャンは銀のナイフを互いに交わしますが、突然 セバスチャンの身体を黒い人型の塊が覆い包んでいきます。
「セバスチャンっ!」

そんな時、地上では、死神グレルがぼやいています。
「あーっ!狩っても、かっても、かってもっ!」
グレルの振り向いた先には、先輩の死神アンダーテイカーが座り込んでいます。
「ほーぅ、無駄な努力っていうのは若さの特権だねぇ」
「何なのよ、無駄って?」
「この黒いものは死者たちの喜び・苦しみ・妬み、そう、心ってヤツさ。心がスッポリ抜け落ちて
 しまった魂は、もはや魂とは呼べない。死神図書館には 収める事はできないだろうねえ」
「なぁによ、心が抜けたぐらいで。っ!?何も写ってないじゃない!」
その時、グレルが見たシネマティックレコードには、何も写されていなかったのです。

セバスチャンの身体は未だに黒い塊が包んだままです。
「この霧は!?」
セバスチャンの驚く声を聞きながら、アッシュは慈悲深ささえ感じさせる表情で答えます。
「ああ…気持ちいい…気持ちいい…。温かくぬるりとして、極上の毛皮にも勝る肌触り…」
その声は アンジェラの声へと変わり、表情も彼女へと変化しています。
「不浄を身に纏う天使ですか。堕ちたものだ」
天使の言葉にセバスチャンは不快感を滲ませた声で言います。
「不浄の快楽は私にとって耐え難く不快なもの。ですが…っ」
 天使はその純白の羽を武器として、セバスチャンへ攻撃してきます。
「不浄の絶望は私に力を与えてくれるのです」

セバスチャンの戦いを心配そうに見守るシエルは、自分たちの頭上に黒い塊が集まってきているのに気づきます。
そして、それらは今度はシエルを覆ってきます。

「あぁ、どんどん強くなってしまいます。どうしましょうねぇ…?
 まだ 私は貴方のことは諦めたわけではありませんよ…?」
天使は黒い霧に包まれて身動きできないセバスチャンに、アンジェラの声で囁きます。
「犬とまぐわう女など、私の趣味ではありません」
セバスチャンは キッパリと言い切ります。
「貴方が女である私を受け入れることがないのなら、(アッシュの声に変わり)私はこのまま太
 陽として、男のままで、んふふふっ ズップリと貴方の心臓の奥深くまで貫いて差し上げる」
天使は捧げ持った剣をねろり と ひと舐めして 嬉しそうにセバスチャンに囁きかけます。
「とことん悪趣味ですね」

天使がその剣を天に掲げると、辺りは眩い光で一杯になり、セバスチャンは眼を背けます。
「最後の審判は近づいている。悪魔よ、貴方の胸は剣の鞘。ぬふっ!」
勝利を確信した天使の顔は、抗えないだろう獲物をいたぶる喜悦に醜く歪んでいます。
「私の剣を収めなさいっ!」
天使は猛然とした速さで悪魔に向かって斬りかかり、その左腕を斬り飛ばします。
「セバスチャンっ!!」
シエルは信じられない光景に驚きの声を挙げます。

またも場面は地上の死神たちです。アンダーテイカーとグレルの所にウイルが来ました。
「魂の強奪ですか?死神の利権に手をつけるとは、なんとも許しがたい。
 今回ばかりはサービス残業もあえて受け入れるとしましょう。グレル・サトクリフ!」
部下の仲間たちを引き連れた死神ウイルは、グレルに、没収していた彼のデスサイズを投げ渡します。
「ヒィヤッホーゥッ!ごきげんDESU!」
グレルは、思わず はしゃいでポーズまでとっています。
「皆さん、ひとつ盛大にブチかましてください。打ち上げは経費で落しますよ」
メガネを引き上げ、淡々と指示を与えるウイルはカッコいい…(言ってることはセコイけど)。

「汝 悪魔よ、この苦しみは幸いなのです。最上の快楽は…(アンジェラとアッシュの声がかぶさ
 って)絶頂は身を裂く痛みを経てしか味わえないのよ」
「なるほど…」
セバスチャンは苦痛を堪えつつ 皮肉気な表情です。
「んふふふふふーっ」
セバスチャンが天使が突いてくる剣先をかわしつつ自分の名を呼ぶシエルを見ると、玉座に座る彼の足元に忍び寄る黒い霧はシエルの大切に思っていた者たちの躯の山のようです。
「あぁ 坊ちゃん…!そう、敵のクイーンが滅びただけで まだ ゲームは終わっていない。
 私が最後のコールを聞く その時まで」
「美しい戦いのさなか 余所見とはっ 興をそがれますね!」
セバスチャンの意識が自分の方に向いていない事に気づいた天使は不愉快そうに言います。

戦況はセバスチャンに圧倒的に不利かと思われた その時、彼の周囲を包んでいた不浄の絶望のひとつ ひとつが 一瞬光った後に次々と消えていきます。
予想外の事態に驚愕する天使とニヤリと口角をあげるセバスチャン…。

その頃、地上では死神たちが、死体から抜かれていっていた黒い霧をそれぞれ デスサイズで狩り取っています。
「死神めっ!この崇高かつ神聖な儀式の邪魔をするとは!」
自分の楽しみの邪魔をされた天使は憎しみを込めた声で叫びます。
「残念ですね。どうやら絶頂、とやらは迎えられそうにない。反撃、といきましょうか?」
「もっと楽しみたかったのですが。こうなれば…」
未だ 己の勝利を確信している天使は笛を吹いて、魔犬に変化させたプルゥートゥを呼びます。
しかし、笛の音には何も応じず、画面には戦いの末に倒れたメイリンたちやプルプルの亡骸が横たわっているのが映ります。
「はっ!魔犬がっ!」
初めて天使の表情に驚愕と焦燥が浮かびます。
「やりましたね、皆さん」
その声に全てを察したシエルも笑みを浮かべます。

「…っ どいつも、どいつも こいつも、どいつもこいつも、どいつもこいつもっ!
 どいつもこいつもっ!!業火に焼かれろーーっ!!」
自分の不利を悟った天使は、唇を戦慄かせながら 顔を その本性を表したような激しさで一杯にして、宙から眼が潰れそうなほどの光と共に 無数の天使の羽を武器として飛ばします。
「坊ちゃんっ!!」
セバスチャンは 素早くシエルノもとに駆け寄って彼を抱きかかえて庇います。

数瞬の後、辺りに煙が立ち込める中、シエルは意識を取り戻します。
「ん、くっ…セバスチャン…?…!?…っ!」
シエルは自分を庇って覆いかぶさっていたセバスチャンの背中に天使の羽が幾つも突き刺さり、彼に触れた手が血まみれになっている事に気づき 驚きます。
「…坊ちゃん、ひとつお願いがあります」
セバスチャンは、その満身創痍の身体をシエルに近づけて、彼の耳元にそっと囁きます。
「目を閉じていてください」
「セバスチャン…」
「私は執事、主人の心象を害するような 無様な姿は見せられません。
 私がいい と言うまで、ジッと目を…」
「わかった」
シエルはセバスチャンの目を見つめて答えます。
セバスチャンはシエルがその瞳を閉じた事を確認して、安心したように彼から身体を離します。

「これで 本来の私をお見せできる」
天使の方に向き直ったセバスチャンの両眼は赤紫に変化して、徐々に天使に近づく彼の姿は無数の黒い羽に覆われています。
「無様な、醜悪なえげつない、私の真の姿を…!」
天使は闇の底から噴出す炎のような その瞳の禍々しい光に捕らわれて、その顔は恐怖に引きつっています。
「!…あ、悪魔っ!」
その瞬間、悪魔が獲物を見定めたように、その醜悪な広がった口を開いたのが見えました。
「ぁ、ぁああぁ…うわあああぁぁぁっ!」
目を閉じたまま起き上がったシエルは、セバスチャンに攻撃されている天使の絶叫と彼らの周囲の物が壊される激しい音を耳にします。
その破壊の凄まじい爆風からか、シエルの身体は勢いでタワーブリッジの閉じられていない端に飛ばされて 滑り落ちかけます。

飛ばされたシエルが必死で左手だけで橋の突端に摑まっていると、セバスチャンの声が聞こえます。
「坊ちゃん、あと 10数えるまで生き延びていられますか?」
シエルの身体は非力な彼の腕1本で支えられていて、おまけに爆風の衝撃からくる橋の振動は彼の身体を更に不安定にさせています。
震える指先、血が滲む腹部…。それでもシエルは固く目を閉じて、彼の問いにああ、と答えます。
「では いきますよ、10、9、」…ー。
繰り広げられるセバスチャンの攻撃は、回数を重ねるごとに天使に断末魔の叫びを挙げさせます。
「1-っ!」
最後の攻撃によってタワーブリッジは凄まじい閃光に包まれます。

一瞬の静寂の後、高いヒールの足音が響いてシエルへセバスチャンの声がかかります。
「終わりましたよ、坊ちゃん」
ようやく目を開けることのできたシエルは、そこにいつもより少しヨレヨレになった片腕の、けれど、包み込むように優しい表情をしたセバスチャンの姿を見て微笑みます。
が、安心して気が緩んだのか、最期の時を確信したのか、シエルは掴んでいた手を離して波間へと落ちていきます。
驚くセバスチャンが見つめる中、落ちていくシエルの身体からは神々しいような光が放たれています。

海中に深く沈んでいくシエルを当然 セバスチャンは追いかけます。
「嘘つき、ですね。10数えるまで生き延びると約束したのに」
「…僕は嘘をつく」
「まだ、死なせません」
セバスチャンはシエルを抱きかかえて海上に向かって泳ぎます。
「ああ…お前は嘘をつかない。お前に聞きたいことがある」
「何でしょう?」
「今のお前は何者だ?」
「愚問ですね。坊ちゃんの前の私は、如何なる時も変わらず 悪魔で執事ですよ」

海上に上がったセバスチャンは朝日を受けて輝く 繋がったタワーブリッジを見て 言います。
「おお、天使そのものをもって完成する。当に聖なる身、ですね」
…静かな時の流れる中、セバスチャンはシエルを乗せた小船をゆっくりと進ませていきます。

一方、ロンドンの街では あの狂気の夜の名残を見せながらも、路上では救護活動が行なわれていて、人々が何とか 日常の営みに戻ろうとする様子が見られます。
また、ソーマ王子と執事アグニがあのカリーパンを皆に配っています。
「カリーパンです。これなら 食べながらでも動けますし、何より心が癒されます」
「いっぱい食べて、そんでもって笑顔だ!」
二人の溢れる生命力と優しさは、レディブランの一件で傷ついていただろうジムにも届いたようです。
「しかし、これは我々の心を試すため 神が与えた試練だったのかもしれません。災害に屈することなく、悲しみすらも糧として立ち上がる、新世紀を前に新たなる大英帝国が生まれようとしているのです」
女王が纏っていた喪服と同じ服装をした一人の婦人が、聖堂の前で人々に話しかけて歓呼を浴びています。
「焼け落ちたロンドンに立つ 偽りの女王。多くの者が信じれば、偽者も本物も代わりはしない。
 あいつには それが分からなかった」
ランドル卿は その婦人を見つめて呟きます。

場面替わって、長閑そうな田舎の村を思わせる小川の側です。
リジーの所に小間使いのポーラが駆け寄って来て、ロンドンの火事が収まったことを伝えます。
リジーはシエルからの音信がないことに沈んでいます。
そんな彼女にポーラは彼女が手に摘んでいる花のことを聞きます。
「青くてシエルの指輪みたいな色だなって…」
シエルへの想いに揺れているリジーを思いやって、ポーラは彼女のためにその花で指輪を作りますが、それは 折からの突風に吹き飛ばされてしまいます。ポーラはリジーに言います。
「何度も作ります、何度でも…」
同じように その言葉を呟くリジー…。飛ばされた指輪は小川に落ちて流されていきます…。

悠久の時を思わせる流れに浮かぶ小船の中に身を横たえていたシエルは目を覚まします。
「坊ちゃん、お目覚めになりましたか?」
「ここは 何処だ?」
「知りたいですか?」
「知りたいから 聞いている。…いや…別に知らなくてもいい気がする…。
 随分と長く眠っていたようだ」
セバスチャンの問いに答えたシエルの表情には、それまでの触れれば切れるような鋭さは見られません。
「これは…?」
ふと、シエルが周囲の様子に気づくと、そこには 水面に自分の記憶の断片が広がって流れていくのが見えます。
「坊ちゃんのシネマティックレコードですね。ここまで流れてきてしまったようです」
「そうか…。これが僕の今までの人生…。僕は もう死んだ…」
「まだですよ。これから私が坊ちゃんに死をお届けします。
 最期まで責任を持って。貴方の忠実なる執事として」
セバスチャンは 残った右手を胸に当てて シエルに忠誠を示します。

「…エリザベスは きっと ピーピーと泣くだろうな」
「ええ。エリザベス様の坊ちゃんへの愛情は とても深い」
「マダム・レッドが死んだ時もメソメソと面倒だったからな…」
「あれは きっと 捻くれた坊ちゃんの分も泣いてくださったのですよ」
「あいつらは…死んだのか?」 シエルは残してきた使用人ズのことを思い浮かべて聞きます。
「さあ…あの時は まだ 息があったようですが」
「しぶとさだけは人並以上だからな、あいつらは。プルートゥは…」
「後で骨を回収しておきましょうか?」
「骨を?…いい。骨に何の意味がある。
 全ては…いや、全をを語るには、きっと まだ、少しだけ早い…。この光は?」
「坊ちゃんの隣を通り過ぎていった者たちの 坊ちゃんへの想いです」
「僕への想い…か…。綺麗だ」
「綺麗?」
「ああ、別れが淋しいとも哀しいとも思わない。でも、ただ 綺麗だと思う。これは?」
セバスチャンはシエルに1冊の本を手渡して言います。
「長い旅路の退屈しのぎにと持って参りました。屋敷を去るタナカさんが残していった日記帳です」

日記に記してあったのは、タナカさんがシエルに伝えられる真実、シエルの父ヴィンセンントが残した言葉でした。
“女王陛下はファントムハイヴを、この私を、闇に葬ろうとしている。
 私は陛下を恨んではいないよ。これも時代の流れだ。
 だが、シエルには このことは黙っておいてほしい。
 もし、私が殺されたとしても、変わらず陛下への忠誠を。憎しみからは何も生まれない”
画面に映される彼の滲むような微笑みから、全てを受け入れようとする決意が伝わります。
「あの天使がいつか見せたまやかしは あながち外れてはいなかったか…」
「どうします?坊ちゃん」
「どうすることもない。復讐するべき人物は もういない。そして 僕すらも…もういない…」
その時シエルは川を流れてきた青い花の指輪に気づいて、それを拾い上げます。
セバスチャンが指輪をシエルの親指にはめようとしますが、片手では上手くいきません。
「最後まで完璧なる執事でいたかったのですが、叶わぬようです」
セバスチャンがあまりに残念そうに言うため、シエルは彼に言葉をかけます。
「ふっ これくらいたいしたことじゃない」
「とてもお似合いですよ、坊ちゃん…」
シエルは かつて同じ指にあったファントムハイヴ家の象徴の指輪を思い返しながら、今 はめた青い花の指輪を見て、自分に言い聞かせるように呟きます。
「僕はシエル・ファントムハイヴ。そう…ただのシエル・ファントムハイヴだ」
そうしているうちに、船はシエルが終焉を迎える地に辿り着きました。

セバスチャンはシエルを腕に抱いて、深閑とした森に囲まれた崩れかけた建物の中の石造りのベンチに彼の身体を静かに降ろしました。
「さあ、坊ちゃん」
「ここが最期の場所か」
「ええ…」
「鳥が狙っている。魂を取った残りはくれてやれ」
「さすがは坊ちゃん、お優しい」
「…痛いか?」
「そうですね、少しは…。なるべく優しくいたしますが」
「いや、思い切り 痛くしてくれ。生きていたという痛みを魂に しっかりと刻みつけてくれ」
セバスチャンは その言葉に一瞬、目を見張ってから、シエルに優しく微笑みます。
「イエス、マイロード…」
セバスチャンはシエルに恭しく膝まづいて、彼への敬意と深い愛情を示します。

…シエルが心を決めた様子を見せると、セバスチャンがそっと近づいて来ます。
そして、彼はシエルの頬を大切なものに触れるように撫でてから、彼の眼帯を取り外します。
シエルは全てをセバスチャンに委ねていて、その大きな瞳は美しく透き通った湖面を思わせるようで、彼を受け入れようとする静けさが見られます。
そうして シエルの その残された一つきりの瞳の中には、ゆっくりと大きく 顔を寄せてくるセバスチャンの美しい赤紫の瞳、通った鼻梁、抑えきれない彼の悦びを表したかのような唇が映され、彼の囁きが耳に残ります。
「では、坊ちゃん……」…ーーー。

                           End

はぁー……。観終りました…。凄かった…です。
悪魔と天使との戦いは迫力がありました。また、古き悪しきものを密かに消し去ろうとする時代の流れを描いていて歴史の闇の部分を感じさせました。
このアニメは期間的な制約もあり、人間を巡る悪魔Vs天使の戦いに物語の焦点を絞ったことで緊迫感があり、グイグイ引き込まれました。
シエルがセバスチャンに全てを委ねる場面は、彼の潔さが表されていて 彼らしい とは思いましたし、そんなところは、彼の父親が女王の決断を静かに受け入れている姿と似ていると感じました。
原作では、さらに深く 人間の業や矛盾、弱さ・醜さ、でも、それらさえ包みこむ強さを持つ人間の姿が悪魔の目を通して語られていて、私が この物語に惹かれる理由の一つだと思います。
それにしても、脆弱そうでいて強さを失わない人間の魂を恋うる悪魔が主人公という設定は萌えます。どこまでもシエルを護るセバスチャンのカッコよさとツンデレ・シエルの可愛いさは、もうサイコーです。
…物語に戻って。かなり悲しい結末を迎えましたが、それでも、メイリンたちには もしかしたら、という希望が残されていたし、リジーのこれからのことを思うと胸が痛みますが、彼女の溢れる生命力の強さを信じたいと思います。
さて、DVDには もう一つ おまけの話がありますので、続けて観ることにします。



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