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百聞は一見に如かず

旅のブログ

昆布バイト終了

2008-07-14 22:10:00 | 利尻昆布漁バイト

Img_1666    明日、利尻島を去る。ただの旅行者では味わえないような贅沢な時間を過ごすことができた。まさに島の人々の温かさと利尻の海の豊かさのおかげである。天候不順のおかげといっては親方には悪いが、昆布の収穫、加工、出荷準備と一通りの作業を経験できたことは、通常の半分の期間しか作業していない僕にとっては幸運だった。女将さんの手料理もあと数回しかない味わって食べよう。

 このバイトを始めるにあたり昆布への想いを熱く書いたが、まずはその結果から報告しようかと思います。

 ①我々の食卓から昆布は消えるのか?

 答えは消えはしないでしょう。僕自身も利尻に行って始めて知ったのですが昆布は養殖が可能であり、現在の海水温の上昇の影響はさほどない。ダシ昆布として珍重されている利尻昆布に関しては、まだまだ楽しむことは可能である。しかしながら、天然物の『マコンブ』は年々、漁獲高が減っているのは事実。さらに、昆布漁師の問題として後継者不足は如実に現れており、第一線で活躍する親方の多くは企業で言えば定年間近な年齢層が多く、私がお世話になった親方の息子さんも現在は都内で暮らしている。昆布漁の抱える問題は地球温暖化よりも第一次産業の衰退に左右されると思われる。

 ②顆粒状の昆布だしは何故、メジャーでないのか?

 これは漁師さんの家にお世話になっていては絶対に分からない問題でした。それもそのはず、親方の家では様々な料理に惜しげなく利尻昆布を使ってダシをとっているからです。しかもそのダシの素晴らしいこと。顆粒状のものはパッケージを見ると『昆布風味』と記載されている。つまり、ケミカルな味付けということになる。僕も化学調味料に慣らされて育ってきた世代であるが、地味ではあるけれど奥行きのある天然ダシの素晴らしさを利尻での生活で気がつかされました。顆粒状の昆布だしが天下をとる日は遠いようです。

Img_1677_2 本日も天気が悪く加工作業。最後くらい青空の下で昆布を引き上げたかったが、それでもなお幸運の女神は僕に微笑み続けているようだ。というのも例年は昆布の収穫が終わってから開催されるアルバイト歓迎バーベキューが帰京前日、つまり今日、行われることになったのだ!前倒しの理由は見事に世相を反映したもので7月15日に日本全国の漁業関係者が原油高騰に反対するストライキを行うため、昆布漁もお休み。どうせ休むなら酒でも飲もうという趣向らしい。しかし、一日でも早く昆布を引き上げたい親方たちにとっては大変迷惑な話しのようだ。

Img_1698  心境は複雑だが参加!北海道名物『ジンギスカン』に地元で獲れたホタテやホッケなど腹がはちきれるほどご馳走になった。途中、各アルバイトの受け入れ先の親方ごとに別れ自己紹介、南は沖縄からやってくる人、八年連続で利尻にバイトにやってくる人、定年後に夫婦でのんびり旅する夫婦などなど、自分の中で没個性的なイメージの強かった日本人の印象は改まり、まだまだ自分らしい生き方を模索する人は国内でも多い。良いか悪いかは別にしても、このような多様性がなくなれば日本の未来はきっと暗いものに転ずるに違いない。写真は親方とK夫妻と自分。生まれも育ちも違う人々の人生が、ここ利尻島で交差する。

Img_1706  普段は夕方には眠りにつく親方はBBQ終了後ダウン。Kさんの旦那さんと利尻のスナック『ウニ丸』へ。スナックなんて、8年前に会社の社員旅行で熱海のスナックに行ったきりだ。ウニ丸に行くと偶然、近所の昆布漁の親方とアルバイトたちも飲んでいて合流。完全にいい気分になったKさんと自分でカラオケを独占し、カラオケを歌いまくる。漁師の生活はサラリーマンに比べ酷くストイックなものだ。知らず知らずのうちに溜まった鬱憤を晴らす。「うれしウィッシュ!」

Img_1678 おっかなびっくり参加した利尻昆布バイト。自分にとっては引き上げた昆布以上に収穫があった。大量生産・大量消費の生活に汚された首都圏の人々とは対照的に、限られた物資の中で慎ましく生きる北の離島暮らしのい人々。彼らの多くは都会の便利さを知りつつも、利尻の自然を愛し懸命に暮らしている。日の出共に起き、日の入りと共に寝る。春は山菜、夏はウニと昆布、秋から冬にかけてはじっと我慢。そんな太古から繰り返されてきた生活のリズムを利尻の漁師たちは守り続けている。

Img_0792  一見、素晴らしい職業に見える漁師生活だが、それこそが都会の人々の傲慢さであることを最後に書き加えておきます。というのも、漁師の親方たちは自分のように学生、サラリーマン、旅行者、フリーターなど様々な選択肢の中から漁師という職を選んだ人たちばかりではない。漁業と観光業しか産業のない利尻島の生活で、彼らが生きてゆくには漁師しか選べなかった人がほとんどではないだろうか?そんな不器用な利尻の人たちの生き方を目の当たりにし、自分は彼らの生き方が好きになった。利尻島再上陸の日を夢見て!


昆布バイトはこわい

2008-07-13 10:32:21 | 利尻昆布漁バイト

日記を書く前に

>KUMAさん

Img_1670  コメントありがとうございます。利尻島は天気さえ良ければとても美しい島です。でも、この一ヶ月で晴れた日は10日間くらいでしょうか?お盆過ぎからは秋風が吹く北の離島です。訪れるなら春から初夏にかけてがオススメみたいです。島の自慢であるウニとソイ(白身魚で鯛なんかより断然美味しい魚)を堪能してみてください。

お知らせ

 6月分の記事すべてアップしました。宜しければどうぞ!

本文

 こわい作業とは本州で漢字を当てれば【怖い】ということになる。しかし、北海道や東北ではこわいとは【疲れる】という意味になる。親方や女将さんはひと作業終えると「おにーちゃん、こわいべ?」と聞いてくる。別に怖くないよ!なんて島に来たばかりの頃は勘違いしていたが、最近はすっかり方言にも慣れてきました。

Img_1637  七月に入り、本州でも豪雨が続いているようですが、梅雨のない北海道にもその影響は出ています。日本上空に非常に強い寒気が停滞しているのがその原因らしい。何度も書いたが昆布干しは『基本は天日干し』なので、曇天や雨天では作業ができない。よって六月に収穫した分で『製品作り』を行う。しかし『製品』といっても『とろろ昆布』や『おしゃぶり昆布』を製造するわけではなく、

大きさや重さごとに等級分けしたりImg_1606

『あかっぱ』と呼ばれる黄色い部分をハサミで切り落としたりImg_1639

Img_1655_3  出荷用に圧縮してダンボールに詰める。生昆布を船から引き上げたり、並べたりすることに比べれば肉体的な負担は少ないものの、朝7時から夕方5時まで作業を休みを取りつつも続けるのは、精神的には非常に疲れる。昆布干しは七月末まで、製品作りは九月末まで行うのが、ここ沓形の年中行事らしい。三ヶ月近くこの作業が続くかと思うと、それこそ『怖い』。それに加え、価格は市場に左右されるため生産者が値を決めれるものではない。一年間、昆布の為に頑張ってきても必ず報われるものではない現実。漁業とは半端ではなく厳しい世界である。昆布漁師の生活は本当に『こわい』のだ。


離島生活もあと五日

2008-07-11 10:25:42 | 利尻昆布漁バイト

Img_1615  早いもので利尻島に来て一ヶ月が経ちました。すっかり島の生活にも慣れたものの、バイトの方はまったく振るわず… というのもこの一週間、濃霧や豪雨に島全体が襲われているため全く昆布干しができず、朝六時半から夕方五時まで、昆布のしわをドライヤーを使って伸ばす毎日。早く晴天の空の下で働きたい。

Img_1664 さて、以前から実家に本場のウニを送ってやろうと考えていたが、悪天候のせいで僕の滞在先である沓形ではウニ漁すらできない海の荒れる日々が続いていた。しかし、昨日から、海は穏やかさを取り戻しウニ漁を再開。そして本日、母にウニを送った。喜んでくれるだろうか。

お知らせ

 六月の記事少しづつアップしてます。時間のあるときにご覧ください。


利尻の物価

2008-07-01 13:29:00 | 利尻昆布漁バイト

 図書館のサーバーが土曜、日曜と続けざまにダウン。月曜は休館日の為、週末に全く記事をアップできませんでした。やや日記が遅れがちです。

 利尻に来て三週間、曇天模様が続いたり、島のお祭りで漁ができなかったりと6月はたった三回しか昆布干し作業ができなかった(その分、島を自転車で一周したり、礼文島散策してきました、記事は後日アップします)。僕自身はお金を稼ぐつもりで来たわけではないので、気にはならない。しかし、バイトに来た人にはこのバイト代を今後の生活費にあてようと考えている人もいるだろうから、なかなか頭の痛い問題といえる。

Img_0874  頭が痛いといえば、島の物価も激しい頭痛を感じずにはいられないだろう。本日、本州の各地では【ガソリン代、リッター180円台突入】なんてニュースが大々的に放送されていたが。ここ利尻島は僕が6月15日に上陸してからずっと202円だ。暫定税率継続問題に揺れた4月でさえ180円台というのだからすさまじい。ちなみに、生鮮食料品から衣料品、電気などの公共料金に至るまで、すべての物価が高いことはいうまでもない。輸送コストのウエイトが大きいのだろう。

 一見、のんびり暮らせそうな離島生活だが、その実情は過酷なのだ。賃金はローカル設定だが、物価は都会より1割から2割ほど高い。現行の中央集権、地方切捨ての政治の象徴ともいえる地域ではないだろうか。おそらくこの島の人は総理大臣が福田さんでも小沢さんでも、どっちだって関係ないのだろう。彼らが島民にスポットを当てる政治を行う可能性はない。

Img_0951   しかし、ここ利尻島やお隣の礼文島の人々は物質的に恵まれていなくとも、精神的に豊かで、素朴で温かい人が多いような気がする。都会の喧騒や職場でのストレスなどはほとんど感じることのない地域ではないだろうか。暮らす人は皆、この島の自然に活かされ、そして、この大自然を愛しているように感じる。それくらい、利尻や礼文の自然は豊かで美しい。人々の心が穏やかな理由も、もしかするとそのあたりに関係しているのかもしれない。

Img_0957 そして、都会では考えられない漁などで自給自足という生活は、質素さの中にも様々な工夫がなされている。漁師でも、狙う獲物は違う家はお互いに獲物を交換したりもするようだ。お世話になっている親方の家でも近所つきあいも盛んで、魚や惣菜をお裾分けしたり、お向かいさんから地タコを頂いたりする。道行く人は外からやってきた僕にも挨拶してくれるし、都市部ではすっかり廃れてしまった季節のお祭りも色濃く残る。交通量も多く、面識もない人々が近所に暮らす都会では、子供を一人で遊ばせておくことすら危険をはらんでいおるが、ここ利尻ではおそらくそんな心配は無用だろう。人と人とがしっかり繋がっているのだ。

 この昆布干し作業の賃金は、交通費や滞在費を引けば赤字にはならない程度ではないだろうか。よって儲けへの期待は薄い。しかし、現代社会を見つめ直し、日本の自然美や人々の文化・風習をゆっくり味わうにはこの上ない環境といえる。残りあと半月、ここ利尻での生活を楽しみたいと思う。下半期初日のGoonaiでした。