環境の世紀

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温室効果ガス濃度も更新中・・・北方捕鯨民族の嘆き

2010年12月19日 | 地球温暖化

 今年の気温が過去最高となるらしいことは、先にも述べたが、とかく因果関係を疑われることが多い「温室効果ガス」の濃度も過去最高となるらしい。温室効果ガス濃度と地球温暖化の関係を裏付ける状況証拠のひとつだろう。12月3日の時事通信によれば、

今年の平均気温、史上最高に=温暖化対策急務・・・世界気象機関(WMO)は2日、今年1月から10月までの世界の平均気温が観測史上最高となる公算が大きいと発表した。また、過去10年間の平均気温も最高となり、早急な地球温暖化対策の必要性を訴えて・・・それによると、10月末までの平均気温は14.55度で、これまで最も高かった98年の14.53度を上回っており、今年11、12月の平均気温が大幅に下がらなければ、観測史上最高となる可能性が高い・・・

とあり、11月24日の産経新聞には、

温室効果ガス濃度 過去最高を更新・・・気象庁は24日、世界気象機関(WMO)の調査で、地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの2009年の世界平均濃度が過去最高値を更新したと発表した。昨年の大気中の二酸化炭素(CO2)の平均濃度は386・8ppmで過去最高だった08年を1・6ppm上回った・・・温室効果がCO2の25倍とされるメタンはここ3年で急増。北極地方の凍土が溶けたことや、雨量増加に伴う湿地面積の拡大で微生物の活動が活発化したことが原因とみられる。産業革命以前の1750年と比較すると、CO2は38%、メタンは158%増・・・

というように、温室効果ガス濃度の上昇が、増え続けていることが掲載された。

 このような状況下で最も辛い立場に立たされるのは、温室効果ガスを出す量の少ない経済的な弱者であることは、これまでも述べてきた。産経新聞の11月27日の記事には、北極に住む先住民の置かれる状況が次のように表現されている。

・・・「探地球温暖化の影が、極北に住む先住民、イヌピアットの伝統捕鯨にじわりと忍び寄っている。北極海の氷が解けることでクジラの回遊ルートが変わったり、海底油田の開発が容易になったりして、少なからぬ影響が出ているという。イヌピアットにとって捕鯨は食料を得るだけでなく、先住民としてのアイデンティティーの源泉であるだけに、彼らの社会に危機感が広がって・・・イヌピアットは米アラスカ州北西部に住む「クジラの民」。・・・彼らが追うのはホッキョククジラ。平均で全長約15メートル、体重は50~60トンにもなる大型のヒゲクジラの一種だ。夏には北極海のボーフォート海で、冬にはベーリング海で過ごすため、バロー村沖を通り過ぎる春と秋が捕鯨の季節となる。春の漁では陸から2、3キロ沖までが凍っており、その先の海域でボートに乗ってクジラを追い求める。 捕鯨は千年に及ぶ歴史を刻んできた。1年のサイクルは捕鯨と一体化し、生活の中心にあり続けている。が、この伝統文化が反捕鯨運動と並び、地球温暖化にも揺さぶられている。・・・クジラは海面に浮き上がって呼吸するため、海氷がない開水域が広がるほど移動ルートが拡散し、それだけ捕捉しにくくなる もう一つは人為的な要因。海底で眠っている膨大な石油・天然ガスの採掘を困難にしていた海氷が温暖化で減少した分、資源開発が活発化しており、人工地震を利用した油田探索の音波調査が、音に敏感なクジラをこの海域から遠ざけている・・・イヌピアットはクジラと特別な関係を築き、独自の世界観を持っている。それはクジラが人間の会話を理解し、よい人間と悪い人間を識別することができる、と信じていることだ。霊を天に送り返すアイヌの「熊送り」にも似て、肉などすべてを取り去ったあとに、霊魂が宿るという頭骨を海に返す習わしもある。そもそも肉は売買せず村内で分配するだけで捕鯨の経済的なメリットはない。捕鯨は食料の確保という目的を超えた文化的な色彩を帯びる。先住民であるという証しであり、彼らの生き方そのものというのだ・・・「彼らのエコとはクジラがくれた命を無駄にせず、最後まで使い切ることです。しかも独り占めせずにみんなで分け合う。・・・

食物連鎖の頂点に立つ「ヒト」は、自然に対して畏敬の念を持ち、生命に対しても敬意を払ってきた。日本でも食べた魚に対する供養の儀式を営むところが多かった。命は、他の命を犠牲にして成り立っていくだけに、その命を大切にしていくこと。無駄にしないこと。連鎖を断ち切らぬことを守ってきた。それが、共生と言われる生き方だった。

 現在、近代化を成し遂げた「ヒト」は自然をないがしろにし、「市場経済」という強欲でもって多くの命を踏みにじっている。12月18日の読売新聞によれば、その強欲な「ヒト」が、温暖化阻止の理想から、「現実的」との名の下に環境対策を後退させようとしているらしい。

民主党は17日、地球温暖化対策についての提言をまとめ・・・経済界にも配慮した現実路線に転換した内容となり、・・・2009年の民主党マニフェスト(政権公約)が掲げた、温室効果ガスを2020年に1990年比25%削減する目標は手付かずで、環境政策の迷走が続き・・・提言は「温暖化対策3点セット」と言われる〈1〉排出量取引制度〈2〉地球温暖化対策税(環境税)〈3〉再生可能エネルギー電力の全量買い取り制度――について、基本姿勢を示した・・・〈1〉は、企業ごとの温室効果ガスの排出上限を国が定めた上で、過不足分を売買する制度だ。提言は、「国際的な枠組みの成否を見極め、慎重に検討を行う」として、マニフェストの「創設する」から後退・・・閉幕した国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)が実質的な議論を先送りしたことも影響・・・産業界には、民主党の環境政策に対し「コスト増につながる」と反発の声が強く、労働規制の強化などと並ぶ「企業いじめ」との批判すらあった。それだけに今回、制度の検討凍結を打ち出したことには、「民主党が現実に目覚めた」(日本経団連幹部)との評価・・・環境税は、16日閣議決定した2011年度税制改正大綱で来年10月から導入することが決まった。政府は全量買い取り制度を12年度に始める方針・・・ 国内では、25%の削減目標や「3点セット」を盛り込んだ地球温暖化対策基本法案が継続審議のまま、成立の見通しが立っていない。家計や企業の負担を抑えつつ、成長と環境対策を両立させるには、「25%削減目標」そのものの撤回も検討課題・・・

片や隣国では、最大の環境破壊といわれる戦争への危惧が叫ばれている。命に対する尊厳と自然に対する畏敬の念は、あらゆる形でその存続を危うくされているようだ。


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