北のテロ国家再指定の動き把握していない、米国務省
また、米下院議員が先ごろ北朝鮮のテロ支援国家再指定を求める書簡をクリントン国務長官に送ったことに対しては、「指定はある程度の法的要求が必要だ」と説明した。こうした言及は、韓国哨戒艦「天安」沈没事件にもかかわらず、現時点ではこの問題が米政府内で実質的に議論されてないことを示唆する。
デュグイッド副報道官はただ、クリントン長官の日本、中国、韓国歴訪で一部の詳細が議論される予定だと述べ、北朝鮮をテロ支援国家に再指定する可能性を完全に排除しなかった
【ワシントン=望月洋嗣】米政府の情報機関を束ねるデニス・ブレア国家情報長官が20日、辞任する意向を表明した。情報機関の連携不足などで、ニューヨーク中心部で今月起きたテロ未遂事件や、昨年12月の米機爆破未遂事件を未然に防げなかった責任を取った形だ。
ブレア長官は20日、オバマ大統領に辞任の意向を伝え、28日に辞職する方針を記した声明を発表した。米ABCテレビは、昨年11月に米テキサス州・フォートフッド陸軍基地で13人が死亡した銃撃事件以降、米本土を狙ったテロ未遂事件が相次いだことから、「情報機関の多くの失敗の結果、オバマ大統領がブレア長官に全幅の信頼を寄せなくなった」との見方を伝えた。
菅直人財務相兼副総理が2011年度予算編成について、国債発行金額を2010年度当初予算の44.3兆円以内に抑制する方針を定め、民主党が参院選マニフェストにこの方針を盛り込むとの方針が報道された。
日本の財政収支は2009年度に劇的に悪化した。国家財政を示す一般会計の国債発行額、財政赤字は2008年度当初予算で25兆円にまで減少した。景気回復に伴う税収増大が財政赤字縮小をもたらした主因だった。
この財政赤字が2009年度に53兆円を突破した。わずか1年間で日本の財政赤字は倍増してしまったのである。
日本の財政赤字激増の主因は、サブプライム金融危機が日本経済を悪化させ、税収を激減させる一方で、麻生政権が空前絶後のバラマキ財政を実行したからである。このために、日本の財政赤字が1年間で倍増した。
鳩山政権は麻生政権のバラマキ財政が日本財政を破壊したことを引き継いでスタートした。このために、鳩山政権が描いた諸施策に大きな障害が生まれた。
子ども手当や高校授業料無償化、農家の個別所得補償など、いずれも費用がかさむ。民主党は政府支出の無駄を排除して財源を捻出するとしてきたが、短期的には巨大な政府埋蔵金を活用することも念頭に置かれていた。
ところが、麻生政権のバラマキ財政と税収の激減に対応して、2009年度からすでに巨額の財源が埋蔵金で賄われ始めており、埋蔵金の埋蔵量が減少し始めている。このために、財政運営の自由度が大幅に低下しているのである。
日本財政を健全化させ、破綻を回避することは重要な課題である。欧州では、ギリシャ、ポルトガル、スペインなどの財政収支が悪化して、債務不履行の懸念が生じ、これが通貨としてのユーロの暴落を招き、世界の株式市場に大きな動揺を与えている。
日本の場合、財政赤字は巨額であるが、国内の余剰資金が極めて潤沢であり、財政赤字は国内余剰資金で完全に賄われている。したがって、ギリシャ危機のような事態が日本で発生する可能性はゼロに近いが、将来、国民の貯蓄率が低下して、国内余剰資金が減少する場合には、財政赤字のファイナンス問題が日本でも表面化する恐れはある。
こうした意味で、政策当局が財政収支の健全化に向けて、検討を開始し、具体的に政策対応を進めることは必要なことだ。
しかし、その場合、明確にしておかなければならないことがある。
それは、短期の政策課題と中長期の政策課題を峻別し、混同を避けることである。
財政の健全化は中長期の課題である。景気回復が実現し、政府支出の無駄排除を完了した段階で、巨大な財政赤字が残存するなら、その段階で増収策を検討することは避けて通れない。この場合に、消費税の増税を検討することは、ひとつの有力な提案になるだろう。
しかし、その前に景気回復の実現と政府支出の無駄排除が完全に実現していなければならない。政府支出の無駄を排除せぬ段階で増税を認めれば、無駄排除のエネルギーは完全に骨抜きになる。これを避けるためには、政府支出の無駄排除を完了するまでは、増税を封印することが不可欠であり、鳩山総理はこの方針を提示してきたのである。
民主党は参院選マニフェストで、次期総選挙後の増税検討を明示し始めたが、政府支出の無題排除を完了するまで増税には手を付けないとの公約を放棄することは許されない。
今回報道されている2011年度予算での国債発行額44.3兆円以下の方針は、マクロ経済政策運営としては極めて大きなリスクを伴うことを見落としてはならない。
なぜなら、2010年度予算は、2009年度第2次補正予算によって、実質的にかさ上げされているからだ。
この点をこれまで、『金利・為替・株価特報』で詳述してきた。
昨年、11月27日に日経平均株価が9081円にまで下落し、日本経済の二番底への転落が懸念されたとき、日本経済の再悪化を回避する最大の要因になったのは、鳩山政権の財政政策の軌道修正だった。
鳩山政権は当初、2009年度第2次補正予算での支出追加を3兆円規模に留める方針を示した。しかし、これでは、強いデフレ効果が生じるとして、支出追加規模が7兆円に拡大された。追加された4兆円は2010年度にその実行がずれ込んだ。
つまり、実質的な2010年度予算は、見かけより4兆円膨らんでおり、したがって国債発行金額も4兆円多い、88.3兆円と見る必要があるのだ。
この状況のなかで2011年度当初予算の国債発行金額を44.3兆円に抑制すると、2011年度にかけて、かなり強いデフレ効果が発生する。
景気回復初期の経済政策運営において何よりも重要なことは、景気回復の軌道を維持させることである。1997年度、2000-2001年度のマクロ経済政策の大失敗は、景気回復初期に財政当局が景気回復持続よりも目先の財政収支改善を急いだことに原因があった。
近視眼的な財政収支改善最優先の政策スタンスが政策大失敗の主因だったのだ。
2011年度予算での国債発行金額44兆円以下抑制方針は、間違いなく財務省が主導しているものだ。近視眼的な財政収支均衡至上主義の財務省路線を抑制することが財務相の最大の役割であるべきだが、最近の菅直人財務相は完全に財務省に引きずられ始めている。
これまで鳩山政権を支えてきた数少ない要因が景気回復の持続だったが、財政政策が近視眼的な緊縮路線に転じると、この景気回復持続まで破壊されてしまう懸念が生じる。
菅直人財務相はマクロ経済政策運営の要諦を改めて見直すべきである。