奥武蔵の風

26 晩秋の巾着田

 「曼珠沙華 公園」のマンジュシャゲ(ヒガンバナ)も、すっかり枯れて、巾着田(きんちゃくだ)に静けさが戻ってきました。

 しかし、花は枯れ 茎は黄ばんで倒れましたが、マンジュシャゲの葉は、今まさに「芽吹き」の最中です。

 考えてみれば、マンジュシャゲの咲き方(生き方)は、本当に独特ですね。秋のお彼岸に合わせるかのように、花芽を付けた数本の茎が地中からスーッとまっすぐ伸びて、真っ赤な花を咲かせ、やがて色あせて枯れ、茎ごと地面に倒れ伏していきます。そして、次には、倒れた茎の根本から、緑色の細長い葉がいっせいに顔を出し、若草のごとく伸びて生い茂るのです。

 時は晩秋。みずからの花も枯れてなくなり、頭上の広葉樹が黄色く赤く色づき始める中で、緑の葉をいっせいに地上に現わすマンジュシャゲ。

 訪れる寒さに負けず、果敢に葉を伸ばし、陽光をいっぱいに浴びて、冬を越そうとするその前向きな姿勢には、強い生命力が感じられます。

 お彼岸の頃にはあれほど真っ赤に染まっていた巾着田 曼珠沙華公園の地表全体が、今は芽吹いた葉っぱに覆(おお)われて、緑一色になりました。生命力がみなぎっています。この時期の芽吹きのパワーは、群生地ならではの迫力です。「晩秋の新緑」と形容しても、決して過言ではないように思われます。

 体力が落ちて身の老いを嘆く私ですが、晩秋に生き生きと芽吹いた 見渡す限りのマンジュシャゲの葉の緑色に、このひと冬も元気に乗り切れそうなパワーをもらえた気がします。

  花消えし 跡に緑葉 曼珠沙華 (一匠)

                 

(写真上)© 巾着田 曼珠沙華公園。右手前の石は、天皇・皇后(現 上皇・上皇后)行幸啓記念碑。 

(写真上)© 見渡す限りのマンジュシャゲの緑の葉。もはや花の赤い色はどこにも見当たりません。

(写真上)© 満開時には分からなかった一株一株の配置がよく分かります。管理されてはいますが、自生地です。

(写真上)© 葉も天に向かって まっすぐに伸びていきます。

(写真上)© 木漏れ日を浴びて、美しい陰影です。

(写真上)© うっすらと紅葉を始めた木々の下で、芽吹いた葉の新鮮な緑はまさに「晩秋の新緑」!

 

***********************************************************

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「自然」カテゴリーもっと見る