Neue Caecilianische Bewegung

ローマ・カトリック教会の典礼音楽に関する公文書や中世の典礼に関する論文を中心に掲載していきます。

『教会音楽史と賛美歌学』

2009年04月13日 14時04分32秒 | Weblog
 横坂康彦 『教会音楽史と賛美歌学』、日本キリスト教団出版局、2008年(第6版。初版は1993年)

目次
刊行によせて
第1章 キリスト教音楽とは何か
第2章 ユダヤ教の音楽と初期キリスト教の音楽
第3章 中世の教会音楽
第4章 宗教改革期のキリスト教音楽
第5章 17世紀後半から18世紀半ばまでのキリスト教音楽
第6章 18世紀後半から20世紀のキリスト教音楽
第7章 アメリカの教会音楽
第8章 日本とアジアのキリスト教音楽
第9章 賛美歌の歌い方
あとがき

 本文は92ページ。全体を包括的に扱っているが、中世がやっぱり少ない。もう少し中世の多様な側面に触れてくれてもよかったかなと思えるし、著者がプロテスタントなのかもしれないが、やはりカトリックの教会音楽についての説明は不十分。例えば、セシリア運動の説明とかピオ10世の『自発教令』にも触れてほしかったかなとも思う。
 東方正教会の音楽にも触れていないので、西欧のカトリックとプロテスタントの教会音楽を扱ったものですね。
 ただ、そうは言っても第7章のアメリカの教会音楽の第3節で、ローマ・カトリック教会を扱っていて、これは参考になった。ヴェルディの「リゴレット」の四重唱やドニゼッティのルチアが教会の中で聖歌とともに歌われたのは初めて知った。それから教皇の『自発教令』のおかげで、男声のみの聖歌隊になったとか、はじめてアメリカの事情を知った。

 後、日本のキリスト教音楽の章で、『改訂 賛美歌 試用版』の編集方針があげられているが、カトリックの最近の聖歌制定の方針と似ているような気がする。カトリックがおそらく影響を受けたのだろうけれども。
 なお、明治期のカトリック聖歌集に関する研究では、E. ヘンゼラーと安立磨由美による『明治期カトリック聖歌集』(教文館、2008年)がある。