レ・ミゼラブル観劇 archive

こちらは2007年以前のレ・ミゼラブルの観劇記、それからフィギュアスケートとテニス関連の記事を保管してあります。

レ・ミゼラブル 6/24(日) ソワレ (2)

2007-06-25 22:10:47 | レ・ミゼラブル観劇記

まだ岡ジャベールにたどり着かない・・・

まず知念エポニーヌから。
TVで活躍していただけのことはある華やかさがあり、舞台上でも目立つ。そして意外にも前年のコゼットより、エポニーヌという役柄が知念里奈には似合っているように思います。これは正統派美人ではなく、少し擦れた雰囲気とあの鋭い目のせいかもしれない。思ったより声も通っていました。
しかしながら舞台の上に存在しているのはエポニーヌというよりは、知念里奈でした。表情も悪くないんだけれど“知念里奈が演じている”という感じがしてしまうんですよね。次にどんな表情をするのか予測がついてしまう。
もちろん演じる人が違えばエポニーヌは全く違う人物になります。それがエポニーヌの個性として出てくればいいんですが、彼女の場合はまだそれが感じられませんでした。少しずつ彼女なりのエポニーヌを作っていって欲しいと思います。

富田コゼット
コゼットという役は『清楚で可憐、可愛く素直』というよなある意味では男性があこがれる女性そのもの。一見そこを押さえれば像を掴むのは簡単に思えますが、その実とっても難しい役柄なんだと気づきました。無理に作ろうとするとかえってちぐはぐな印象を与えてしまう。“雰囲気を醸し出す”と言葉で言うのは簡単ですが、これはなかなか難しい。富田コゼットは彼女独特の間と高音部が1テンポ遅れてしまうのが気になっりましたが、彼女のエピローグでの「生きてパパ、生きるの」のフレーズ、感情がこもっていてとてもいい。演技も自然でエピローグ、泣かされました。

シルビアファンティーヌ
シルビアファンテは美しい。低音の声も含め色気があって、これは工場長もご執心なわけですね、というのに納得。
さすが続投組。安定していて安心して聞けました。

今井バルジャン
今回近くで観てみて、今井バルジャンの表情にはハッとさせられることが多々ありました。今井バルは他のバルジャン(橋本さん未見)に比べ、一見強面に見えるけれど、内面から溢れ出るものがとても暖かく優しい。
表情を間近で観れば観るほど強くそう感じました。
死の間際まで問い続ける別所バルジャンに比べ、今井バルジャンはコゼットという存在がいることで、“父親の役目”という確固たるものを持っている気がします。
最も父性を感じさせるバルジャンの、コゼットに対するまなざしはいつでも涙を誘います。

そして岡ジャベール
ためた割には上手く言葉に出来る自信が全くない・・・
今までの冷徹でクールな岡ジャベールはそこには居ませんでした。
今も立ち姿は美しく、登場するだけでトキメクのだけれど、岡ジャベールから泥臭さを感じる日が来るとは。
感情の波が顕著に表情に表れる岡ジャベール。
冷徹さには磨きがかかり、ファンティーヌを蔑むように、見下ろす表情。こんなにファンティーヌを哀れに思ったことはないかもしれません。
細身の日本人離れしたスタイルの岡さんが、「Stars」では一回りもふた周りも大きく見えました。初めて岡ジャベールに惚れてしまった時とは別のゾゾッとするような感覚を覚えました。
バルジャンに助けられた後、バリケードから去る後ろ姿は今も美しく凛々しいけれど、バルジャンをプリュメ街まで追っていたジャベールには既に狂気が見える。「Stars」の時にはどしりと地に足を着いていたジャベールがなぜかゆらゆらとしている。
バルジャンを見逃したことで、自分の信じていた正義、ひいては自分自身(の信念)をも揺るがせてしまったために、自殺という道に繋がったのだと今までは思っていましたが、今回の岡ジャベールからは既にバリケードで助けられた時から迷い、崩れ初めていたのを感じました。一歩進むごとに崩れ、死へ近づくような「自殺」にただただ息を呑みました。何週間前は光り輝くアンジョルラスを演じていた彼に、今は人間の狂気をみる。岡幸二郎さんブラボーです。


レ・ミゼラブル 6/24(日) ソワレ(1)

2007-06-25 19:58:34 | レ・ミゼラブル観劇記

キャスト:今井清隆、岡幸二郎、知念里奈、シルビア・グラブ、富田麻帆、藤岡正明、駒田一、瀬戸内美八、岸祐二、他

レ・ミゼ不足で30日の観劇まで我慢できず、金曜日に(会社でこそこそと)空席状況を確認したら1階D列の30番台が取れるとのことで、即購入。そんなわけで、急遽観劇してきました。前から4列目。今私が10公演ほど手持ちで持っている中で最も良席。直前に取ったチケットが一番いいなんて嬉しいような、悲しいような。いやそれでも嬉しいってくらい舞台が近くて、俳優の細かい表情まで見える!!前回もその前も2階席だったので、全く違う景色に早々に興奮でした。

そしてなんと言っても岡ジャベのMY初日です。やっとです。
よくおジャマしているレ・ミゼブログにも、前知識を入れないため行っていないのです!その方々の素晴らしい感想を読んでしまったら、私も前習えしてしまいそうで。
その感想は後でじっくり書くとして、初見のキャストから。

岸アンジョルラス
岸アンジョは見たい見たいと思いながら、毎年上手く出会えずに、今年初めて見ました。にもかかわらず、本当にごめんなさい。最初のうちはもう「岡アンジョはどうしてたっけ?」などと邪念が・・・後遺症がひどくて困ります。でも2幕からはちゃんと見ました。まず、岸アンジョはいい声してます。声で言ったら東山さんや坂元さんより好みです。ブルジョアなイメージはなく「大将」という言葉が似合うような、頼れる兄貴のような心優しきリーダーの岸アンジョ。カリスマ性は実を言って乏しいが、この男に見捨てられることは無い、というような厚い信頼がおける男。熱いです。今回グランテールとの絡みでとても印象深いシーンがあったのですが、それを書き出すと長くなりそうだし、明日は出張なのでそろそろ寝ます。追記は明日。あぁ早く書きたい!

6/25追記

昨日途中になっていたグランテールとの絡みですが、岸アンジョはマリウスが打たれた後、再びバリケードへ駆け上がろうとします。そこに立ちはだかる松村グランテール。岸アンジョはグランテールに無言で優しく微笑むと、グランテールの頬を撫で、そのまま、笑顔だけ残したまま、バリケードを駆け上がるのです。
これはなんだ!!!???
松村グランテールは撫でられた頬に手を当て、放心したように上を見つめると、そこには死に行く岸アンジョが・・・・そりゃあ松村グランテールはアンジョについていくしかないですよ。私も最後の最後まであの岸アンジョの最後の笑顔が忘れられませんでした。今も昨日のレ・ミゼを思い出すとその笑顔ばかりが浮かんできます。
岸アンジョ初見の私は、なんというかとても衝撃的な場面でした。

でも相手がアンジョに友情以上の忠誠心さえ感じさせる松村グランテールだからこそ、この演技は泣けました。伊藤グランテール相手にも同じことするんだろうか。とっても気になる。私にとってグランテールとはアンジョルラスに唯一問いかける人物であると思っています。なので、松村グランテールはアンジョラスに対してなんというか乙女チックだな、というのが前回の感想だったんですが、松村グランテールだからこそ出せるものがあるんだな、と思いました。


レ・ミゼラブル 6/13(水)マチネ (2)

2007-06-16 01:50:05 | レ・ミゼラブル観劇記

本日も岡アンジョは光り輝いておりました。

前回感動しっぱなしだった、バリケードでのマリウスとのシーン。
今回泉見マリウスはエポニーヌの亡骸は追いかけず、その場に力なく座り込むという演技です。なので、岡アンジョは優しくマリウスの肩に手をかける。このマリウスの演技もとてもよくわかります。特にエポニーヌが息を引き取ってからも、それをなかなか飲み込めなかった泉見マリウスは、彼女が運ばれて行って初めて絶望感と失望感に襲われたんでしょう。ここで座り込むのはとてもよくわかります。
しかしながら、私は岡アンジョのがマリウスを抱きしめるのをとことん期待していて実はちょっと、いえとっても残念だったんです。私は岡アンジョがここでマリウスを抱きしめることで、今まで毅然たる態度でマリウスの浮かれっぷりに応対してきたアンジョルラスが、マリウスを(引いては仲間を)本当に大事に思っているんだな、というのが感じられていたのと、エポニーヌが求めたようにマリウスにも人のぬくもりが必要だったのはないかと思ってもいたので。

阿知波マダム・テナルディエ
歌が上手い!そしてコゼットに対する態度がそれはそれは冷たい。意地悪そうでもなく、どのテナルディエの妻より飄々としている印象なのに。だからこそなんだかとっても怖い。

松村グランテール
伊藤グランテールに比べて、仲間内でのムードメーカーのような雰囲気を感じます。いつもおちゃらけているような。演技も舞台の端から端へとわりと動きが多めです。でも誰よりもアンジョルラスに惹かれているのは一目瞭然。伊藤グランテールよりもわかりやすく、忠誠心さえ感じさせます。「死など無駄じゃないのか」と歌うグランテールをアンジョルラスはじっと見つめます。松村グランテールは射すくめられたように、ばつの悪そうな演技。しゅんとなってしまうグランテールは可愛いけれど、それはちょっと弱すぎるんではないかな。

そして本日のガブローシュも堂々たる歌いっぷり。文句なしです。
子役、侮るなかれ。
その他アンサンブルも頑張っているけれど、どうしても岡アンジョの光に薄れて(?)かまだまだ演技できていない感じでした。これもこれからに期待しましょう。

次は今月末。岡アンジョもこれで見納め。寂しいけれど、目に焼き付けてきました。
岡アンジョを見たことで全て吹き飛んでしまった、2003以降のアンジョルラスを一から楽しむとします!


レ・ミゼラブル 6/13(水)マチネ (1)

2007-06-15 00:00:25 | レ・ミゼラブル観劇記

キャスト:今井清隆、鹿賀丈史、笹本玲奈、岩崎宏美、辛島小恵、泉見洋平、斎藤晴彦、阿知波悟美、岡幸二郎、他

今回も2階席にて鑑賞。A席の40番台辺り。
前回はS席だったけれど前から4-5列目の40番台だったので、見え方にほとんど差はなかったです。舞台全体がよく見渡せるが、バリケードから立ち去るジャベールの姿はほとんど見えないのが残念。そして前回同様少し音が小さく感じる。個人的な好みとしては1階席の方がいいかな。


とりあえず、今回初めてみたキャストについて覚書。

今井バルジャン
いろいろなブログを読ませていただいて、多くの方が今井バルジャンはスタンダード、入り口は今井バルジャンがいい・・・などなどと仰っていますが、その通りかと思います。原作は読んだことがないんですが、最もバルジャンっぽいバルジャンではないかと。このシーンがよかった、あのシーンが感動したという明確なものはそんなにないんですが、じわじわ、いつの間にか感動させられてました。
バルジャンはファンティーヌの死、マリウスをバリケードから助け出し病院に連れて行く時、ジャベールと相対するわけですが、このシーン、他のバルジャンからはコゼットの元に行かねばとかマリウスを一刻も早く助けねば、という切迫した気持ちを強く感じますが、今井バルは切迫した状況にも関わらず、じっくりとジャベールの心に訴えかけようとします。人間は絶対に分かり合えるとでも思っているかのように、真摯に、優しく、力強く「聞いてくれ」とジャベールに訴えるのです。その声音からバルジャンの真のあたたかさみたいなものが見えてとてもよかった。

泉見マリウス
マリウスで今や最も古株になった彼。安定感も増して、安心して見られます。去年までは初めて知った恋に浮かれて「僕は飛ぶよ虹の空へ♪」と歌いながら本当に飛んでちゃうんではというくらのキラキラした目のマリウスでしたが、今年は落ち着いた気がします。でも泉見マリウスが初めてコゼットに会うシーンは未だにとてもかわいい。
コゼットが後ろを向いている間に身だしなみを整えて、直立不動で立っている様ったら!とても愛らしく、微笑ましいです。
去年からそうだったか覚えていませんが、泉見マリウスは「恵みの雨」の最後「花・・・・・育てる」のフレーズを力強く歌うんですね。多くのマリウスはエポニーヌが自分の腕の中で息絶え、このフレーズを悲しみと絶望感とともに歌いますが、泉見マリウスは死んだわけがないではないか、とでも言うように、まだエポニーヌは生きていて、花育てるんだよね?とエポニーヌに問いかけるように、エポニーヌを覗き込むようにして歌います。これがまた切なくて、泣けました。

笹本エポニーヌ
藤岡マリウスに引き続きなんですが、本当に成長しましたね。
といっても笹本さんの公演に上手く出会えず、舞台で見たのは確か2005年に1度だけ。その時は「オンマイオウン」もわりとアクションが多かった笹本さんですが、今年は帽子もとらない。歌声だけで表現できるようになったのね。M.Aの感想でも書いたけれど、今まで笹本さんからは怒りなら怒りだけ、悲しみなら悲しみのみというような直情的で激しい印象を受けていたけれど、今年の笹本エポからはいくつもの感情が溢れてくる。もともと歌唱力が素晴らしいので、これからどんどんよくなるだろうな、と思いました。
ただ少し気になるのは、登場のベガーのシーンと使い走りなどのシーン。
他と違うエポニーヌを演じようとしているような気がしてしまうんですよね。
でもマリウスに対する恋心を超えて、死ぬ間際に人のぬくもりの中で死にたいという切なる望みが伝わってくるような「恵みの雨」はよかったです。

辛島コゼット
今回のコゼットの中ではかわいいというより清楚さが漂うコゼット。キレイで澄んだ声。高音もきれい。もう少し他に負けないくらい声が出るようなり、演技に磨きがかかるといいな。ふとチケットを確認したらどれもこれも辛島コゼットばかり。
よろしくお願いします(笑)

岩崎ファンティーヌ
彼女の歌を聴いてみたくてこの日のチケットを取ったといっても過言ではないのだ!
工場で彼女が歌いだした時は、“天使の歌声”はこれか!と納得。
でも「夢破れて」は期待しすぎてしまった感はあり。
しかしながら死の場面はさすがの母性を感じた。
居ないはずのコゼットが岩崎ファンテの手の先に見えるようでした。

前回からの同じキャストとアンサンブル、その他については別日に追記します。


レ・ミゼラブル 6/9(土)ソワレ (2)

2007-06-11 21:47:35 | レ・ミゼラブル観劇記

もうほとんど書きたいことは書きつくした感がありますが、
演出とその他キャストについてもう少し。

今回のMVPをあげたいのは実はリトルコゼット
相当歌が上手かったです。透き通る、とっても美しい声でした。
“子役”なんてくくりにしてはいけないくらい。
はっきり言って、新しい女性プリンシパルの中で最も良かったんではないかと。

そして伊藤グランテール
彼が続投してくれて私はとっても嬉しいです。
唯一声に出して戦いは無駄ではないか、と問いかける人物であるグランテールには伊藤さんのもつニヒリストのような雰囲気が必要不可欠だと思うのです。いつでも世の中の出来事を客観的に見ようとしするような雰囲気。でもきっと誰よりも強くアンジョルラスに惹かれている人物。伊藤グランテールからはそこに座って酒を飲んでいる姿からもそんな雰囲気を感じるのです。

演出について
今回から変わった点がありましたが、そのなかのいくつかをちょっと。
バリケードが落ちたあとの「犠牲者たち」は、2003年以前のバージョンにならないかな~と以前から思っていたこともあり、復活してくれて嬉しい限り。この台詞があることで悲しむ余裕すらない貧困の姿が浮き彫りになっていいですね。でももうちょっと女達の底力みたいなものを見せて欲しかったな。

復活した場面あれば、削られてしまったところも。
「ちびっ子仲間」のガブローシュの「チビ犬でも~でかくなる♪」のフレーズがない!!これは本当に残念です。伊藤グランテール「ブラボーガブローシュ最高だぞ!」って歌いだし遅れましたよね!?私もまだガブローシュの歌のつもりだったので割と拍子抜けした感ありでした。

これまたガブローシュの死の場面。曲自体変更。
メロディーは既存ですが、歌詞は初めて聞きました。「ザ・コンプリート・シンフォニックレコーディング」でも今回のガブローシュの曲はなかったと記憶していますが、どこから降ってきたんでしょうか?
私は前の方がよかったと思うんですが、どうなんでしょう。。


レ・ミゼラブル 6/9(土)ソワレ (1)

2007-06-11 00:30:03 | レ・ミゼラブル観劇記

キャスト:別所哲也、鹿賀丈史、藤岡正明、坂本真綾、渚あき、菊池美香、岡幸二郎、斎藤晴彦、阿知波悟美、ほか

ついに2007年のレ・ミゼラブルが始まりました。
興奮冷めやらぬ今日この頃。
私のレ・ミゼ初日は昨日でした。初めての2階席。
1階席ではわからなかった石畳の模様や、舞台・セットの奥行きをまじまじと堪能。
幾分音が小さいようにも感じられたけれど、舞台全体を見下ろすのも一興。
1階席では見上げていたバリケードを見下ろすというのはなかなかいいものです。

なんにしろ1年以上ぶりのレ・ミゼ。新しいキャストも加わり、新たな演出もあるということでひたすら興奮して、こちらまで緊張。
全体的なことを言えば、今年からのキャストはとにかくこの「レ・ミゼラブル」という壮大な物語を歌いきるだけで精一杯という感じで、続投のキャストとの差がありありと出てしまっていました。だからどうしても一体感というかまとまりには欠けました。やはり場数ということでしょうか。これからに期待しましょう。

久々にレポ。新キャストから。

渚ファンティーヌ
元宝塚の娘役トップという前知識しかなかった彼女。
2階席というのもあったかもしれませんが、思っていたより声が出ていませんでした。去年のファンテに比べ、癖の無いストレートな歌声は悪くないので頑張って欲しいです。

菊池コゼット
彼女の場合は思っていたより声楽的な声がだせているな、という印象。キレイな声でした。ただ演技がすこし幼すぎというかおてんばというか。家に忍び込んできたマリウスが「コゼットを困らせた」と慌てて外に戻ろうとするシーンで菊池コゼット、追いかけすぎです。転びそうになるくらいマリウスに近づく。清楚というよりは可愛い印象で、それもいいんですが、どうしても去年の剱持コゼットと比べてしまう。

坂本エポニーヌ
女性のプリンシパル(コゼットとファンティーヌ)が新メンバーの中、彼女はやはり古株。演技も声も安定していて、とてもよかったです。しかも去年より歌がうまくなっている。今までより音程などに余裕があって安定感が増していました。坂本さんナイス!!彼女の「恵みの雨」は相変わらず切ない。

藤岡マリウス
なんというか成長しましたね~
彼は加わった当初からその歌声に安定感、伸び共に問題ありませんでしたが、今回も岡アンジョという大先輩を相手に引けをとらないマリウスだったと思います。去年までは若さ溢れるぶっきらぼうなマリウスだったけれど、深みを増したように感じました。岡田マリウスが抜けたこともあってか、藤岡マリウスに“苦悩”の片鱗をみるとは。嬉しい驚きでした。

さて、もう随分長くなりましたが、ここからが本番です。

別所バルジャン
やはり久々にみても演技の細やかさに感動しっぱなしです。もう彼のバルジャンに心を鷲掴みされてから、早何年。演技がまた変わりましたよね。未だに新たなバルジャンを見ることが出来るなんて。
彼のバルジャンはその行動一つ一つにそれを裏付ける気持ちがとてもよく見える。
行動や表情からジャンバルジャンの人生が透けて見えてくる。
今回の舞台でもいろいろと感動させられたしぐさがありますが、普段以上にぐっと来てしまったのは「彼を帰して」の一幕。別所バルジャンは「まるで我が子です」と歌いながら眠るマリウスに手を差し伸べ、そして自分の年老いた手をみて自分の衰えをひしひしと感じているのが伝わってくる。その演技が次に歌う「月日の波に追われてやがて私は死ぬでしょう」というフレーズになんとも言えぬ月日の重さを与えていて、わけもなく泣けてきました。
別所バルジャンはエピローグでも老いをまざまざと感じさせるのですが、「生きてみよう」とコゼットに言いながら、自分の死が背後にまで迫っていることを首の動きと目線だけで表現する彼の演技は絶品です。
司教様からもらった銀の燭台を宝物のように、そして戒めのように口付けるこの問い続けるバルジャンを、本当に私は愛してやまないのです。

鹿賀ジャベール
とにかくその存在感に圧倒されっぱなし。
それが他の役どころとジャベールという役の大きな違いなんですが、私の中のジャベール像は2種類あるんです。
ざっくり言うと、冷徹でクールなジャベール泥臭いジャベール
去年のキャストでは岡ジャベや今ジャベは前者で綜馬ジャベはどちらかと言うと後者。どちらも私にとってはまさにジャベールでだったんですが、なんというか鹿賀ジャベールはそういう問題ではないような位置でジャベールそのものなんですよね。長年ジャベールという人間の人生を舞台の上で演じてきたからでしょうか。

そしてなんといっても岡アンジョルラス
そうです。
岡アンジョルラスです。
伝説にもなっている(?)という岡アンジョルラスです。
岡アンジョの清廉潔白なこと!

もう奮死するかと思いました。というか多分一回死んだんだと思います。あの時。
あんなに赤いチョッキが似合う人見たことないです。岡アンジョからはリーダー、そしてカリスマの風格があらゆるところから感じられます。もう「付いていきます!!」と言ってしまいそうな程に。岡さんという大先輩を前に周りのキャストはかなり緊張していたことでしょう。あの日本人離れしたスタイルも手伝って、目立ちすぎです。
仲間というよりは、真のリーダーといった感じの岡アンジョ。マリウスの恋心にも確固たる革命家の態度で接します。でもエポニーヌの亡骸を追いかけるマリウスをしかと抱きとめる岡アンジョ。もう本当に号泣。
舞台の一体感ということを脇に置かせていただければ、何もかもがPerfectでした。

最後にひとつ書きたいのは岡さんの後姿の美しさについて。
それはジャベールの時もそうなんですが、彼は後姿で語ることが出来る俳優だと思います。前を向いている時以上に彼が背を向けている姿に惹き付けられます。一体今どんな表情をしているんだろうか、と。

実はまだまだ新たな演出についてなど書きたいことがあるんですが、明日も仕事。お風呂も沸いた。というわけで、次回に持ち越します。