タローさんちの、えんがわ

京都在住のアーティスト・きしもとタローの、日々をかきとめるブログ。音楽とか笛とか人とか…美しいものたち。

9月25日に大山崎で

2010-09-22 23:43:07 | お知らせ
仲秋の名月観賞会『アンデスの笛ケーナの魅力』

 …さて、これは新旧3種類のケーナです。色や風合いは異なりますが、何と…この3本は同じ素材で出来ています。もちろん、濃い色の方が順に古くなります


ミニ・コンサートのお知らせです♪
来る9月25日土曜日、午後17時から20時まで、京都府乙訓郡の大山崎町と言う所にある「山崎光の郷(やまざきひかりのさと)」と言う所で、大山崎町教育委員会&文化協会が主催するイベントがあり、その中でケナ(ケーナ)を使ったミニ・コンサートを行います。コンサートは19時からの1時間…17時から場内で先着150名までの椅子席の整理券を発行するそうですが、立ち見でも入れます。
何と、無料!

出演は、きしもとタロー(各種ケナ、チョケーラ)、千葉泉(ギターラ)、田中良太(ボンボ、カホン等)、その他一部ゲストあり ♪

演奏曲はケーナ音楽が主ですが、ケーナ音楽の源流に長年興味を持って来た事もあり、ケーナ音楽に縁のあるルネッサンス期やバロック期のイベリア半島の名曲も少し演奏します。今回の内容は比較的ポピュラーですが…。
あと、最近あまり一般のCD屋には置いてないタローのアルバム販売や、10月17日のオリジナル作品を集めたソロ・コンサートのご案内(予約受付)などもこの日に行います。お暇な方はぜひ、遊びに来て下さいね

JR山崎駅から徒歩8分、阪急大山崎駅から徒歩10分、山崎聖天(観音寺)南側で、とても雰囲気のある所です。会場付近には駐車場はなく、少し離れた所になってしまいますので、電車の方が便利かも知れません。会場内の庭園では、灯りアートの展覧会が行われております。

お問い合わせ…大山崎町役場内生涯学習課 075-956-2101


…さて、冒頭の笛写真、これは当日使用するケーナ&チョケーラなんですが、色や風合いが異なってても同じ素材のものです。使っている年数が全然違うんですね。いちばん白っぽいのは、ついこの間作ったもの。ボリビア在住の杉山さんに譲って頂いた材料です。普通の愛好者や、製作者なら使いたがらないタイプの材料のようですが、まさしくこれこそ僕の探求しているタイプのもの。正直、一定以上の技術がないと吹きこなせないタイプの笛だと思いますので、商品にはなりにくいのですが、逆に技術が伴えばこれ程色々な演奏に使える笛もなかなかありません(一般的に吹きやすいと言われる笛とは真逆の要素が多いんですよね…広められないのが残念です)。おそらく、この1年位の間の舞台での演奏で「進化」してゆき、色が変わった頃にほぼ「成熟した笛」として異彩を放つだろうと、今から期待をしています
この笛たちについては、また後日詳しくご紹介します

笛マニア…?

2010-09-12 12:06:38 | 笛の楽園
異形の者たち(笛)
 コロンビアの爆音笛(ツインになっております

ご存じの通り、僕の専門?楽器は何と言ってもケナ(ケーナ)ですが、もともと趣味が広かった事もあり、結果的に色んな笛を演奏するようになってたので、会った人からは「笛マニア」と思われてしまうみたいです。でも実は、自分ではそう思ってる訳ではないのです。僕は「自分と最も相性の良い楽器は、どうも笛だな」と、比較的早くに理解していただけで、もともと広く色んな音楽や楽器が好きでしたし、笛の音楽は、自分が聴いて楽しむ音楽の中では、むしろ「小さい範囲」のものだったからです。笛だって、何でも演奏する訳ではなく、相性の良い笛を選んで演奏してますし、音楽的に好きで聴いてるだけの笛…っていうのも結構あったりします。間違ってもコレクターではありません。うちには色んな笛がありますが…連中は勝手に寄り集まってきているのです。聴いたり、いじったりする分には、むしろ他の楽器にも大好きなのは沢山ありますし。

それでも30年以上前から色んな音楽に興味があって、いわゆる民族音楽と呼ばれる音楽に親しんで来たので、あれこれ一般的には知られてない笛に心奪われてきた経緯もあり、周りの人からは「笛マニア」と思われても、ある意味仕方ないのかも知れません。でも、一般的に笛マニア・笛オタク、と自称してたり呼ばれたりしている人とは、感覚的に明らかに異なる面も多々あるので、やっぱりそう呼ばれると「違うんだけどな~」なんて自分では思ってしまう。笛を演奏して来たけれど「笛こそが!」と思ってる訳でもないし、音楽家だけど、実は「音楽こそが!」と思ってる訳でもない。自分が好きで探求してきたのは音楽で、作ってきたのも笛と音楽作品だけど、振り返ってみると、音楽を通じて自分は人間世界そのものの探求をしてきた、と言う方が的を射てると思うし…僕は自分では、人間文化マニア、だと思ってます(なんじゃこりゃ)。

しかも、僕にとってこういう音楽や楽器は12歳位の子供の頃から、自分で自主的に探求し、親しんで来たものですから、自分にとっては極めて日常的で、家族のように、ある意味「普段通り(?)」「落ち着いた感覚」で接してしまうところがあります。一歩間違えると、はたからは「冷めた感じ」に見えるかも知れません。20歳前後で初めて民族音楽に接した人々のように「みてみて、こんな音楽があるんだよ~」と、まるでこれまで出会わなかったタイプの人に出会った時のように・村では珍しい外国人と初めて出会った時のように・もしくは皆がまだ手にしていない宝物かカッコイイ武器か何かを手に入れた時の子供のように、ウキウキとはしゃぐ事も僕には出来ないし、ましてや、手に入れた楽器や音楽のイメージに自己投影して「これが僕なんだ」と盛り上がって、ラベルを貼っ付けて、すぐに世に発信しよう、とも出来ないし、そういう人がいても、その様子をどこか「あ~あ」と言う感じで、冷めて見てしまう(まぁ、だからこそ自分のアルバムは、オリジナル音楽のみで出した訳なんですが)。笛やその音楽に対しては、幼い頃から手にしてきたもので、今も手にしてて愛着がある、っていうような感覚が主で、それってノンビリした感覚です。もちろん、そういう音楽や楽器を通じて、人と関わっていくことに積極的でない訳ではありませんし、自分が出会った音楽や楽器・文化に、他の人々が出会う為の手伝い…と言える仕事にも、そこに大きな意味を感じているからこそ、関わって来たのですが。

ともあれ、音楽家&笛演奏家でありながら、音楽と言う広い世界の中で笛だけとり上げて「笛、笛」と盛り上がる事はない、と思える自分がいて、「民族音楽、民族音楽」とそれだけが特別なものであるかのように盛り上がるのも本当は奇妙、と感じてる自分もいて、更に文化という広い世界の中で「音楽、音楽」と、それだけが特別なものであるかのように盛り上がることも、実際出来ない自分がいる。本当、こういう仕事してきて、何なんですが やって来た事や、作って来たものの事考えたら、客観的に見ても、音楽や笛に超巨大な想い入れある人物…としか、自分でも思えないのに でも、絶対笛マニアじゃない、と自分では思ってる。

…とか、何とか言ってて、やっぱりこういう笛を紹介すると「笛マニア」と思われてしまうだろうかこの「ヤンキーの頭」みたいな異形の者たちは…僕がずっと昔から好きだったコロンビアの笛です。一般的にはガイタだけど、スペイン・ポルトガルではそれだとバグ・パイプ系の楽器を指しちゃうので、やっぱりネイティブらしく「Kuisi」と言う方がいいかも知れません。


結構、大きくて…二本セットになってます。アンデスの楽器なんて、もう我々にとっては珍しいとも何とも言えませんが、同じ中南米の楽器でもこればっかりは、とにかく情報が少ない上に、国内で持ってる人もほぼいないし、演奏している人は皆無に等しい。その音楽を聴いた人も少ないし、ましてや好きと言う人もあまりいない。音楽を聴いた時、自分の中に様々な探求心が芽生えたのですが、これは現地に行かない限り、触る事も実際に鳴らしてみて色々感じとったりすることも難しいのではないか、と考えていたところ…以前仕事をさせて頂いた、京都の書の美術館「観峰美術館」(ルクセンブルクの教会に残るケルト装飾の聖書をテーマにした展覧会での映像に音楽をつけたり、メキシコの先住民美術の展覧会の際に先住民音楽の演奏を担当させて頂いたりしました)の方が、ニューヨークでコロンビアの音楽家との接点を持たれた事もあり、ひょんなことでこの笛の話をしたところ、多くの方の御厚意があって、昨年、何人かの手渡しで持ち帰って頂いたのです。

美術館で包みを開くと…その場にいた我々全員が、驚愕しました。「なななななな何じゃ、こりゃ~」これは農機具か、それとも笛なのか?…そんなささやき声が起こる中、その異形の笛たちは姿を現しました。二本セットになっており、一本は片手にマラカ(マラカスの片方)等を持って振りながら片手で吹くように作られていて、もう一本が両手で演奏出来るように作られています。その素朴な作りと言ったら!

そして冒頭にある写真と、下にある写真をご覧ください…その歌口の奇妙な事!このヤンキーの頭から生えてるストローのようなものは…アヒル(orガチョウ)の羽の管!ここに口をつけ、息を吹き込むのです。そして肝心のその音は、生音のパーカッション・アンサンブルにも負けないほどの、爆音 …なんで

子供の頃から「楽器も音楽も、自分で作る人間が、本当の古来からの笛吹き」と言う言葉を大切にして、笛演奏家たるもの、自分の演奏楽器くらい自分で作らなくっちゃ、と思ってきましたが、こいつはなかなかに厄介です黒い頭の部分は、蜜ろうと灰を混ぜて固めたもの。何でこの形なの?と思わず突っ込み入れたくなりますが、細かい形状は製作者によって若干変わるみたい。それにしても、あまりにも力づくな製作方法、手びねり、のようなものですから、さすがに根性要りそうです。オカリナなら土から作った事あるけど、こいつはそうはいかない。発音部分が独特なんです。ちょっと余裕出てきたら自作してみようかな…。
でも、こんなの作っちゃった日には、これまた「笛マニア」と思われてしまうだろうか… 重ねて言いますが、笛マニアじゃないっす。

 ともあれ、こいつに比べたら大概の笛…普通です…