気楽に古典にいざ取り組もうとするときに、注意したのは、力まないということだ。精読で読破する、というのはもちろん立派なことだが、はじめに力みすぎると挫折もしやすい。まずは肩の血からを抜いて、パラパラとページをめくる
そして、偶然出会った文章に心をとめ、そこから何らかの刺激を受け取る。パラパラ読みをすることで、リラックスして感性が目覚め、刺激を受けやすくなる。名著にひれ伏すのではなく、自分にとって刺激があるかどうかで断片を楽しむ。
「神は細部に宿る」という言葉があるが、古典の断片にはエッセンスが宿っている。生物の細胞の一つひとつにDNAがあるように、断片には、その古典の精神のDNAを感じることができる。「全体の流れを理解した上で細部の意味がわかる」という考え方は誤っているわけではないが、萎縮させかねない。
「断片でも自分に突き刺さる文と出会えたならば、それだけでも意味がある」と考える方が積極的になれる。「全部読まなくては」という強迫観念めいた思い込みから解放されて、パラパラと断片を拾い読みすると、古典との距離が縮まる。