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トラブル回避の対応術
未払い残業代の付加金請求を断れるか?
退職予定の社員から残業代の未払いについて
請求がありましたので、よく調べてから未払いがあれば
支払うことにしました。
未払い賃金の請求にかかる期間が2年ということは
分かっていますが、
この社員は過去2年間の未払い金のほかに
付加金も請求しています。
付加金は断りたいのですが、
法的には支払うべきものなのでしょうか?
◆「付加金」とは
労働基準法(第114条)では、使用者が同法の規定に
定める賃金などの請求権を行使する場合に、
裁判所は、規定により使用者が支払わなければ
ならない金額についての未払い金のほか、
これと同一額の付加金の支払いを使用者に
命ずることができることを定めています。
付加金の対象となるのは、
解雇予告手当、休業手当、時間外・休日・
深夜労働の割増賃金、年次有給休暇中の賃金で、
その支払いがなかったため、
労働者が使用者に未払い金を請求する場合です。
したがって、未払い残業代の請求は、
同法に基づく付加金の対象とはなりますが、
本来の未払い金はともかく、付加金については、
労働者から使用者に対して請求があっても
支払うべきものではなく、労働者の請求申し立てにより
裁判所がその支払いを命ずることによって、
使用者の付加金支払義務が発生するもので、
裁判所による付加金の支払い命令が出されなければ、
支払わなくても問題はないことになります。
また、裁判所への請求申し立ては、
違反のあったときから2年以内にしなければならない
としています。
◆裁判所の判断は
このように、労働者の請求に基づき裁判所が
支払い命令を発することによって付加金の
支払い義務が発生するのですが、前記の手当、
賃金に関する労基法の違反行為がなされたことで
実質的な損害賠償額ともいえる付加金をも支払う
責任が生ずることについて、裁判所がどのように
判断するかが、実際に支払命令が出るかどうかの
カギになります。
裁判例においては、使用者側の違反の態様などを
総合的に考慮し、違反とされる行為について
付加金支払が相当であるか否かを判断する方法が
とられています。
たとえば、天災事変などの不可抗力のため
支払うことができなかった場合などは、
使用者の側に特別の事情があったために違反性が薄く、
付加金の支払いを命じられないものと解されています。
また、解雇予告手当をめぐる判例では、
すでに手当に相当する金額の支払いを完了し
使用者の義務違反の状況が消滅した後においては、
労働者は付加金請求の申し立てをすることが
できないものと解すべきであるとした判例があります。
付加金の名目ではなく、未払いに対する損害賠償額など
といった名目で未払い金とは別法上では、
裁判所の支払い命令による付加金でなければ
支払い義務は生じませんので、実際に請求があった場合には
確認をしておくことが重要となるでしょう。
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