1回ライブなレポートが入りましたが、今週もしつこく色の話です(笑)。カラー印刷はCMYK4色インクによるプロセスカラーが基本です。更に広い色域再現を狙った6色印刷、7色印刷も開発されていますが、まだまだマイナーです。って話を前にしましたが、今週はダメ色と冴え色の話。色域の話とは別に、カラー印刷には得意な色と苦手な色があります。この差は印刷の仕組みによるもので、細かい線や文字になるほど顕著になります。
印刷がもっとも得意な色はCMYK各色のベタ、つまり100%色です。これらの色を「一次色」といいます。得意というのは、どのような使い方をしても色味変化がなくシャープさを失わないということです。例えばごく細い罫線を印刷する場合、CMYKの一次色ならばそのものズバリのインク100%で印刷しますから、かすれたり色がにじんだりすることがありません。黄色はそもそも色が明るく薄いので、そういった用途には不向きですが…。同様に非常に小さな文字も、一次色ならばシャープさを失うことなく読めます。
身の回りの印刷物をあれこれ見てみると、極細線や小さな文字は圧倒的に黒。これは黒が白い紙とのコントラスト比が最も高く読みやすい基本色であるという別の理由がありますが、黒が印刷の得意色、冴え色だからでもあります。そしてシアン(濃い水色)やマゼンタ(濃いピンク)の線や文字も意外と多く見られます。
あれれ、茶色や若草色の文字がすごくシャープな本もあるよ!ということもあります。多くの場合、これらは1色か2色の印刷物で、インクを特別な色に変更して印刷しているんですね。ただフルカラー印刷でかつ本文に特別色のインクを加えることは、コスト的に難しいのです。
CMYKほどではないけれど、まぁ得意な色というのがあります。RGB各色のベタの色です。赤はマゼンタ+イエロー、緑はシアン+イエロー、そして紺(青紫)はシアン+マゼンタ各100%の重ね刷りで表現される色で、これらを「二次色」といいます。それぞれの色成分を細かい点に分解する必要がないので、わりと色味変化がなくシャープさを保つことができます。
身の回りの印刷物で線や文字に使われる色として、RGBはわりと多く見かけますね。ただしこれらの二次色は一次色と違って2色の重ね刷りになりますから、ちょっとでも印刷の見当がずれると途端にぼやけた感じの表現になってしまいます。
さて、勘のいい方は見えてきたかもしれませんが、実は上記以外の色はすべて印刷の苦手色、つまりダメ色です。ダメ色といっても、写真の中に現れる色や、その色で紙面をベタ~っと塗りつぶすような色としては特に問題はありません。それすら苦手だったらカラー印刷になりませんからね(笑)。苦手なのは、その色を使った細かい表現です。
プロセスカラー印刷で一次色・二次色以外を表現するには、CMYKの少なくとも1色を細かいアミ点にして掛け合わせる(つまり重ね刷りする)必要があります。色味が連続して変化する写真などや一面の塗りつぶしでは、ある程度まとまった面積に多くのアミ点を打てますが、非常に細い線や小さな文字では十分な数のアミ点が確保できず、線や文字が点線になってしまうのです。
中でも薄く明るい色、いわゆるパステルカラーはダメ色の代表です。明るい色、薄い色を表現するには、より小さく密度の低い点が必要ですから、細かい表現ではいよいよアミ点の数が確保できなくなります。その結果線や文字がかすれて見づらくなるだけでなく、わずかな印刷時の見当ずれがいよいよ見づらさを助長してしまうのです。
身の回りの印刷物をあれこれ見ていただくと、パステルカラーや薄手の色、CMYK-RGB系から外れた色味は細かい部分の表現にはあまり使われておらず、あったとしても塗りつぶしや大きめの文字、太めの罫線であることがほとんどです。慣れたデザイナーや編集者は印刷のダメ色と冴え色を熟知していますから、ダメ色を無理なところで無理に使ったりはしないんですね。
そうは言っても、中には掟破りな色使いをする印刷物もあります。その代表格は角○書店が発行する週刊情報誌の雄、「○○Walker」シリーズ。是非お買い求めの上(笑)じっくりご覧ください。おすすめスポットやお店の情報などの細かい文字が薄緑や薄茶などのダメ色でバシバシ印刷されています。結果、見れば見るほど見づらい! 文字を囲む罫線なんかは欠けまくりです。個人的にはダメダメです。…でも「○○Walker」さん、たぶん確信犯でやってますね。クオリティより見た目のカラフルさ優先でいいんだウチは、って。この本は面白いので(技術的にね)、そのうち改めて取り上げようと思いマス。
例外はあるものの、細部にまで高い印刷品質をキープしようと思うと、ダメ色と冴え色を意識した配色計画が必要になるんですよ、というお話でした~。ごめんなさい、また長かったです…。
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印刷がもっとも得意な色はCMYK各色のベタ、つまり100%色です。これらの色を「一次色」といいます。得意というのは、どのような使い方をしても色味変化がなくシャープさを失わないということです。例えばごく細い罫線を印刷する場合、CMYKの一次色ならばそのものズバリのインク100%で印刷しますから、かすれたり色がにじんだりすることがありません。黄色はそもそも色が明るく薄いので、そういった用途には不向きですが…。同様に非常に小さな文字も、一次色ならばシャープさを失うことなく読めます。
身の回りの印刷物をあれこれ見てみると、極細線や小さな文字は圧倒的に黒。これは黒が白い紙とのコントラスト比が最も高く読みやすい基本色であるという別の理由がありますが、黒が印刷の得意色、冴え色だからでもあります。そしてシアン(濃い水色)やマゼンタ(濃いピンク)の線や文字も意外と多く見られます。
あれれ、茶色や若草色の文字がすごくシャープな本もあるよ!ということもあります。多くの場合、これらは1色か2色の印刷物で、インクを特別な色に変更して印刷しているんですね。ただフルカラー印刷でかつ本文に特別色のインクを加えることは、コスト的に難しいのです。
CMYKほどではないけれど、まぁ得意な色というのがあります。RGB各色のベタの色です。赤はマゼンタ+イエロー、緑はシアン+イエロー、そして紺(青紫)はシアン+マゼンタ各100%の重ね刷りで表現される色で、これらを「二次色」といいます。それぞれの色成分を細かい点に分解する必要がないので、わりと色味変化がなくシャープさを保つことができます。
身の回りの印刷物で線や文字に使われる色として、RGBはわりと多く見かけますね。ただしこれらの二次色は一次色と違って2色の重ね刷りになりますから、ちょっとでも印刷の見当がずれると途端にぼやけた感じの表現になってしまいます。
さて、勘のいい方は見えてきたかもしれませんが、実は上記以外の色はすべて印刷の苦手色、つまりダメ色です。ダメ色といっても、写真の中に現れる色や、その色で紙面をベタ~っと塗りつぶすような色としては特に問題はありません。それすら苦手だったらカラー印刷になりませんからね(笑)。苦手なのは、その色を使った細かい表現です。
プロセスカラー印刷で一次色・二次色以外を表現するには、CMYKの少なくとも1色を細かいアミ点にして掛け合わせる(つまり重ね刷りする)必要があります。色味が連続して変化する写真などや一面の塗りつぶしでは、ある程度まとまった面積に多くのアミ点を打てますが、非常に細い線や小さな文字では十分な数のアミ点が確保できず、線や文字が点線になってしまうのです。
中でも薄く明るい色、いわゆるパステルカラーはダメ色の代表です。明るい色、薄い色を表現するには、より小さく密度の低い点が必要ですから、細かい表現ではいよいよアミ点の数が確保できなくなります。その結果線や文字がかすれて見づらくなるだけでなく、わずかな印刷時の見当ずれがいよいよ見づらさを助長してしまうのです。
身の回りの印刷物をあれこれ見ていただくと、パステルカラーや薄手の色、CMYK-RGB系から外れた色味は細かい部分の表現にはあまり使われておらず、あったとしても塗りつぶしや大きめの文字、太めの罫線であることがほとんどです。慣れたデザイナーや編集者は印刷のダメ色と冴え色を熟知していますから、ダメ色を無理なところで無理に使ったりはしないんですね。
そうは言っても、中には掟破りな色使いをする印刷物もあります。その代表格は角○書店が発行する週刊情報誌の雄、「○○Walker」シリーズ。是非お買い求めの上(笑)じっくりご覧ください。おすすめスポットやお店の情報などの細かい文字が薄緑や薄茶などのダメ色でバシバシ印刷されています。結果、見れば見るほど見づらい! 文字を囲む罫線なんかは欠けまくりです。個人的にはダメダメです。…でも「○○Walker」さん、たぶん確信犯でやってますね。クオリティより見た目のカラフルさ優先でいいんだウチは、って。この本は面白いので(技術的にね)、そのうち改めて取り上げようと思いマス。
例外はあるものの、細部にまで高い印刷品質をキープしようと思うと、ダメ色と冴え色を意識した配色計画が必要になるんですよ、というお話でした~。ごめんなさい、また長かったです…。
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