とりあえず雑記

ふじポンのblog ☆ Firefox推奨デス

PAGE見学記(2)

2007-02-20 | 火・DTPと編集
池袋で開催されたDTPと印刷技術の見本市PAGE2007。今回はレポの後半です。

Quark XPressが現在の最新バージョンと、今春発売されるであろう次期バージョンのアピールに必死の様子なのに比べると、InDesignを発売するAdobeはこれと言って大きなキャンペーンを張る様子はありません。もはや自分たちがデファクト・スタンダードを勝ち取ったかのような落ち着きぶりです。むしろInDesignのプラグイン(機能拡張ソフト)の方が賑やかで、そこからも主役の交代が感じられるPAGEでした。

さて、それ以外で目に付いた流れは、XMLデータベースの活用、カラーマッチングと簡易プルーフ、PDFワークフロー、オンデマンド印刷、といったところでしょうか。どれもここ数年共通のテーマです。

XMLデータベースは、数年前まで「コレさえやれば、コンテンツの使い回しは自由自在♪」みたいな触れ込みで、商売っ気ムンムンのベンダーが多い気がしましたが、その辺はさすがに落ち着いてきましたね。何でもXMLにすりゃいいってもんじゃないことに、制作側も気付いてきたようです。コンテンツのボリューム見極めや、使い回しの基本設計が何より大切なんですよね。一方で、見事使いこなしている成功事例には、凄まじいものがありました。数千ページの誌面を数分で組版&PDFデータ化、みたいな。やみくもにXMLに突っ走るブームは去っても、一方で驚くほどの効率化に成功しているものがある。成熟とともに差が広がってきた感じです。

デジカメやスキャナなどの入力機器から、モニタ、プリンタ、印刷機に至る出力機までの色の見え方を統一するカラーマッチングと、色校に変わるインクジェットなどのカラープルーフも、既に数年前からキャノン、エプソン、コダックなど各社の熾烈な競争の場になっていますが、こちらは未だ戦争は止まず、といった感じで、どこまでもマニアックな領域へと戦いが深まっている印象です。確かにこれら最新の環境で統一された現場においては、もはや色校の出る幕はなさそうで、印刷への中間生成物がカットされPDFに収斂されることで、更なる短納期や高品質、そして電子入稿へと時代が確実に動いている気がします。

PDFワークフローも前項と結びついて、印刷現場ではだんだん当たり前の技術になってきました。…PDF、どうなんでしょうね。各社が提案するようなワークフローにあわせて編集現場やデザインの現場が生まれ変われるのならば、それはもう、絶大な効果をもたらすわけですが、川上工程の意識がキチンと変わらぬままPDF印刷入稿の流れだけが進むと、世に品質の低い、間違いの多い印刷物が増えやしないかと、ちょっと心配になります。この件はいずれ別の機会に。

オンデマンド印刷の流れは、メカ好きのふじポンにはたまらない分野ですね。DTPデータからダイレクトに印刷に入れるオフセット印刷機では、微妙なインクや浸し水の調整がほぼ自動化し、CTPの刷版も自動生成&セットされるという、ガンダムもびっくりなハイテクメカがぎっしりで(笑)。一方で液体トナーや粉体トナーのオンデマンド機は、精度とスピードはともかく今年も劇的な印刷コスト低下はなかったように見受けられました。DTPデータを高速回転するオフセットのドラムに直接描画して、小部数&高品質&超高速をすべて叶えるオンデマンド機は、まだまだ10年くらい先でしょうかネ。

上記以外のテーマで、今回のPAGEで気になっていたのは実はフォントです。MicrosoftがWindows Vistaという新OSを発表したことは大々的に報道されていますが、そのVistaで日本語フォントの規格が変更されていることは、あまり報道されませんね。Vistaに標準搭載されている日本語フォントでは、新しいJIS規格(JIS2004)が採用され、合計167の漢字字形が変更されました。編集という、文字の扱いを商売にする職業としては、コレは結構大変な事態です。いくつかを拾ってみましたので、下をご覧ください。左の青枠が現状の字形、右の赤枠がVista標準フォントで改められたJIS2004字形です。




パッと見は小変更なのですが、167字の中には地名・人名によく使われる文字が多いのです。形容詞や副詞、形容動詞、動詞などとして文脈の中に埋もれることができる漢字は、まぁ字形が変わっても意味が取れれば良し、という考えもなくはないのですが、地名や人名などの固有名詞は、その名の通り「固有の」名をあらわしますから、字形が違うというのは、非常によろしくない。もちろん気にしない人も多いとは思いますけど、そうした微妙な違いに配慮するために、印刷業界では、というかDTPでは高価な外字フォントを使ったり、現在ではOpenTypeフォントの異体字機能を使って手作業で字体を切り替えたりしているわけです。

さて、問題は「Vistaの標準フォント」だけがJIS2004になったということです。Vistaの標準フォントが字形を変えても文字コードは今までと同じですから、他のフォントや他のOSでその文字を表示すれば、現在の(…上の図で言えば青枠の)字形に戻ってしまうことになります。つまり、フォントやOSによって167字の字形は行ったり来たりの変化を起こしてしまうわけです。将来Vistaが普及したときに、Vistaの標準フォントでプリントされた原稿でお名前や地名などの確認を取っても、MacのDTPフォントで印刷に回したときには、それらの文字は字形が変わってしまうことになります。

MacとWindowsで記号類が非互換なことはDTP界では知れ渡っていて、あれこれ対策も講じられているわけですが、そこに新たな文字化け系トラブルの種が生まれたとも言える状況なのです。

で、DTPフォントを開発している各社はどうするのかなぁと、興味深々だったのですが、聞いて回ってみると、どうやらどのフォントメーカーも、DTP用のフォントをJIS2004にあわせて改定する予定は今のところないようです。OpenTypeフォントであれば、異字体機能で167字のうちかなりがフォローできるとのことで、(上の一覧もそうやって作ったのですが…) それでも追いつかないいくつかの漢字は、異字体を追加したバージョンの発売で乗り切る構えのようです。

う~ん、一安心なんだかどうだか複雑な気分ですが、とりあえず、現状ではVista標準フォントだけが「仲間はずれ」な状態と認識しておけばいいようです。もし将来、DTPフォントもJIS2004を採用する日が来ると、ついにはDTPフォント間での字体化けなどという、空恐ろしい事態もやってくるのでしょうか(汗)。そうはいっても、このJIS2004は、かつて簡略な字体にしてしまっていた漢字のうちいくつかを、正統な字体に戻したという側面もあるようで、これまた文字の扱いを商売にする職業としては、前向きに捉えなければいけないのかもしれませんね。

(後編おわり♪ 長文失礼しました~)




前へ  編集の初回へ  次へ


最新の画像もっと見る