東京大学「福島復興農業工学会議」

農業工学の力を結集して一刻も早く福島を復興するための現実的な技術開発を目指します。

春には解けた凍土を掃き出せ!-融解土掃出し法による土壌除染-

2012-02-09 16:00:14 | 日記

前のレポートで「凍土剥ぎ取り」が有効な土壌除染法であることを指摘した。しかし、2月の時点で飯舘村の水田土壌の凍結深は既に10cm以上に達しているところがある。この状況で「凍土剥ぎ取り法」を適用すると、肥沃な表土を無駄に失うことになる。また、詳細版(2012.1.9の「おわりに」でも指摘したように、春になると地表面の雪や凍土が融解し、泥水が地中に残る凍土に行く手を阻まれるために、水田のあちこちに放射性セシウムを含んだ泥んこや水溜りができるであろう(写真1)。この状態の時に雨があると大量の放射性セシウムが土壌浸食で拡散するリスクがある。春先にはこの事態を回避する必要がある。

幸いなことに凍土は地中に硬い層を残した状態で地表面から解ける。春先には凍土のこの性質を利用した除染作業が可能である。すなわち、水田の低い方の畔に沿って深さ1mほどの溝(穴)を掘り、5cmぐらいまで解けるタイミングを見計らって、その溝に向かって地表面の泥んこを掃き出すと良い。テニスコートやグランド整備に使われる「トンボ」や「ブラシ」が有効であろう。バキュームポンプを使って溝に泥を運べればなお良い。

溝の深さは砂や礫の層よりも浅くすべきである。溝幅は深さにもよるが水田面積の10%あれば十分であろう。放射性セシウムは粘土粒子とともに移動するので地下水位の変動があっても溝周辺の土でトラップされる(要検討)。水田が砂質土壌の場合には溝にベントナイトやセメントの粉末を撒いておくと効果があるかも知れない。溝に溜まった泥には50cm程度覆土すれば放射線量を1/100くらいに減衰できるはずである(要検討)。

いずれにせよ、飯舘村の春には春の除染方法がある。この効果を評価するために、この3月に是非とも現地試験をしておきたい。

 

http://www.iai.ga.a.u-tokyo.ac.jp/mizo/edrp/fukushima/fsoil/mizo120209.pdf