
久々の日記はまたも無茶苦茶長いです。
「悪名高い」ことで有名な「風の谷のナウシカ」の海外版を観ました。
英語版タイトルは"WARRIORS OF THE WIND"といいます。
これは「B級映画の帝王」の異名を取るアメリカのインディペンデント映画プロデューサー、ロジャー・コーマンが徳間より配給権を買い、NYで短期上映したものです。
が、アメリカの観客の嗜好(思考?)に合わせるため、難解(と思われる)な部分をカットしてストーリーも大幅に改変したため、現在ではファンからの評判もすこぶる悪く、ジブリや宮崎からも「無かったことにしてくれ」と言わしめている究極の一品(?)です。
何せ、2時間近くあったオリジナルが95分にまで短縮されているのですから。
さて、それでは観ていきましょう(ワクワク)。
あ、この映画には「ナウシカ」は登場しません。
一部の間では有名な話ですが、この映画では、日本でナウシカと呼ばれていた少女は「ザンドラ姫」と呼ばれています。
ついでにクシャナは「セリーナ女王」に、ナウシカ(ザンドラ姫)の忠臣ミトは「アクセル」になっています。
細かく書いていくとスペースがいくらあっても足りないのですが、まずは一番の大きな改変を。
オリジナル版にあった「腐海」の神秘について、本作ではほとんどスルーされています。
たとえば、ナウシカが城の地下で腐海の植物を育てているシーン。
「水がきれいなら毒を出さない」とユパに訴える重要なシーンですが、全てカット。
あと、それから、ナウシカ(ザンドラ姫)とアスベル(こいつも別の名前があったような気もするが、ほとんど呼ばれてなかった)が腐海の底で神秘に触れるシーン。
オリジナルも最近観てないからよく覚えてないのですが、本作では大幅に短縮されています。
目を覚ましたザンドラは自分がマスクをせずに呼吸をしていることに気付き、「ここは空気が綺麗なのね!」と言うと、アスベルが「ああ、ここは本当のパラダイスだよ」とだけ答えます。
それっきり腐海の神秘については触れられません。
で、なんとオリジナルには無かったナウシカもといザンドラ姫の心中の叫びが唐突に読み上げられ、「なんていう人生の皮肉なの。私は彼の妹を助けて、彼は私を殺そうとした。私が彼を助けて、今度は彼が私を助けたのね……」というまったくもってストーリーに関係の無い独白が何の前触れも無く流れ、ザンドラ姫が鉱石だか植物だかに額を当てたところで腐海の底の描写は終了。
オリジナル版にあった「ナウシカ、泣いてるの?」とか、木の実を「味はともかく長靴いっぱい食べたい」などの描写は一切ありません。
本作中、もっとも重要な意味を持つべきシーンは、関係ないセリフを当てられ、わずか3分で終わったのでした。
(どうでもいいけどこの「腐海」、劇中では"Toxic Jungle"(毒のジャングル)と呼ばれていて、"Toxic"と言われれば"Toxic Avenger"(悪魔の毒々モンスター)を思い浮かべてしまう私には真剣味が薄れてなかなかツライ。勝手に「毒々ジャングル」と訳語をつけて楽しんでおりました。そういえば、オリジナルも「オーム」と言われりゃ思い浮かべちまうものがあるから、そういう意味でもこの作品は不遇ですな)
そして、もうひとつの重要な描写、ナウシカの子供時代の記憶も一切カット。
オームの子供を隠して「ダメ」と訴えるナウシカに、大人たちの無数の手が襲いかかってくるトラウマ的な描写もありません。
だから、不時着したナウシカたちをオームが取り囲み、オームが触手のようなものを伸ばしてナウシカの心を探るシーンも、ちゃっと触って数秒で終了。
ナウシカがシャツの姿になって、子供の頃の記憶に触れられるシーンが一切抜け落ちているのです。
ついでに、トルメキアの船に乗せられて出発する際に子供たちが駆け寄ってきて「姫様、絶対に無事に帰ってくる?」「あら、私がウソをついたことあった?」てな泣かせる会話もカットでした。
ほんとに細かいところをあげつらうと、いつまで経っても終わらない。
んで、「オームの怒りは大地の怒り」という根本的な前提がないので、基本オームはモンスター扱いです。
ラスト、巨神兵が死んじまうところも、オババは「あんなものを使って生き延びて何になる」としか言わないので、周りは「そりゃアンタは充分生きたから良いだろうよ」と憎まれ口のひとつも叩きたくなります。
ちなみにそのオババ、オリジナル版での子供との会話に
子供「ババ様、みんな死ぬの?」
オババ「定めなら、従うしかない」(←うろ覚え)
てな会話があったと思うんですが、ここではすさまじいことに、
子供「死ぬときは、痛いのかな?」
オババ「死なないよ。伝説にはそう書かれていない」
という、まったく逆の会話になってしまっているんです!
それと、最後にオームの子供が池に入ろうとするのを止める際に、編集で細かな部分を省いたせいでしょうか、ザンドラ姫の衣裳は赤から青にいきなり変わります(これも重要な要素なのに!)。
んで、ザンドラ姫とオームの子供を降ろすあの小さな樽みたいな飛行物体ですが、ヘリコプターのプロペラ音が合成されていました。
音の合成はかなりテキトーで、「Let's go!」「Go!」「急げ!」とか、「クシャナ殿下ばんざーい」なんて日本語が時たま聞こえていました(笑)。
あと、笑ったのが、中盤の子供の合言葉のシーン。
オリジナル版は「風」「谷!」「良し!」てなっていたのが、「合言葉を言え!」「シャーラップ!!」「良し」という、なんともアメリカ的ネタに変わっていました。
もう、いくら書いてもきりが無いので、パッケージのほうに行きましょう。
添付ファイルを見てください。
ビデオのパッケージです。
素晴らしすぎます。
巨神兵の上に乗った三人の男……つーか生き物。
真ん中はアスベルでしょうか。手綱を持って巨神兵を操っています。
お前、いつ主役になったの?
アスベルの向かって右側、人間サイズの巨神兵です。
持っているのはスター・ウォーズのライトサーベルでしょうか?
向かって左側……あんた誰?
ザンドラ姫は右上に追いやられ、劇中いちども見せたことのない乗り方でメーヴェを操ってます。乗れねえだろお前、その乗り方じゃ!
そして左側。これも見たことない奴が、出て来もしないペガサスに乗ってます。
いや~、やっぱりロジャー・コーマン大先生は偉大ですね。
宮崎駿はこの改変をあとで知り、大激怒して、けっきょく権利を売却した徳間が宮崎にゴメンナサイしたとか(wikipedia)。
徳間も、さすがにここまで変えられるとは予想だにしなかったんでしょうね。
最近になってようやくオリジナルの「ナウシカ」がアメリカでも観られるようになり、あるアメリカ人は「我々は本当の『ナウシカ』に逢えるまで20年もかかってしまった」と述べたとか。
……そこまで嫌わなくてもいいんじゃない?
最後にとんでもないことに気がついた!
この「海外版」、今はVHSでしか観ることができません。
権利の問題でもうDVDには出来ないのだと思います。
当然、私もVHSをアメリカから取り寄せたのですが、今この文章を書くためにビデオをチェックしていた時に、あることに気付きました。
このビデオ、3倍モードで録画されてやがる!!!
パッケージがあるから実物なんだろうけど……いや、実物なのか?
最後まで怪しすぎる、愉快なザンドラ体験でした!!
「悪名高い」ことで有名な「風の谷のナウシカ」の海外版を観ました。
英語版タイトルは"WARRIORS OF THE WIND"といいます。
これは「B級映画の帝王」の異名を取るアメリカのインディペンデント映画プロデューサー、ロジャー・コーマンが徳間より配給権を買い、NYで短期上映したものです。
が、アメリカの観客の嗜好(思考?)に合わせるため、難解(と思われる)な部分をカットしてストーリーも大幅に改変したため、現在ではファンからの評判もすこぶる悪く、ジブリや宮崎からも「無かったことにしてくれ」と言わしめている究極の一品(?)です。
何せ、2時間近くあったオリジナルが95分にまで短縮されているのですから。
さて、それでは観ていきましょう(ワクワク)。
あ、この映画には「ナウシカ」は登場しません。
一部の間では有名な話ですが、この映画では、日本でナウシカと呼ばれていた少女は「ザンドラ姫」と呼ばれています。
ついでにクシャナは「セリーナ女王」に、ナウシカ(ザンドラ姫)の忠臣ミトは「アクセル」になっています。
細かく書いていくとスペースがいくらあっても足りないのですが、まずは一番の大きな改変を。
オリジナル版にあった「腐海」の神秘について、本作ではほとんどスルーされています。
たとえば、ナウシカが城の地下で腐海の植物を育てているシーン。
「水がきれいなら毒を出さない」とユパに訴える重要なシーンですが、全てカット。
あと、それから、ナウシカ(ザンドラ姫)とアスベル(こいつも別の名前があったような気もするが、ほとんど呼ばれてなかった)が腐海の底で神秘に触れるシーン。
オリジナルも最近観てないからよく覚えてないのですが、本作では大幅に短縮されています。
目を覚ましたザンドラは自分がマスクをせずに呼吸をしていることに気付き、「ここは空気が綺麗なのね!」と言うと、アスベルが「ああ、ここは本当のパラダイスだよ」とだけ答えます。
それっきり腐海の神秘については触れられません。
で、なんとオリジナルには無かったナウシカもといザンドラ姫の心中の叫びが唐突に読み上げられ、「なんていう人生の皮肉なの。私は彼の妹を助けて、彼は私を殺そうとした。私が彼を助けて、今度は彼が私を助けたのね……」というまったくもってストーリーに関係の無い独白が何の前触れも無く流れ、ザンドラ姫が鉱石だか植物だかに額を当てたところで腐海の底の描写は終了。
オリジナル版にあった「ナウシカ、泣いてるの?」とか、木の実を「味はともかく長靴いっぱい食べたい」などの描写は一切ありません。
本作中、もっとも重要な意味を持つべきシーンは、関係ないセリフを当てられ、わずか3分で終わったのでした。
(どうでもいいけどこの「腐海」、劇中では"Toxic Jungle"(毒のジャングル)と呼ばれていて、"Toxic"と言われれば"Toxic Avenger"(悪魔の毒々モンスター)を思い浮かべてしまう私には真剣味が薄れてなかなかツライ。勝手に「毒々ジャングル」と訳語をつけて楽しんでおりました。そういえば、オリジナルも「オーム」と言われりゃ思い浮かべちまうものがあるから、そういう意味でもこの作品は不遇ですな)
そして、もうひとつの重要な描写、ナウシカの子供時代の記憶も一切カット。
オームの子供を隠して「ダメ」と訴えるナウシカに、大人たちの無数の手が襲いかかってくるトラウマ的な描写もありません。
だから、不時着したナウシカたちをオームが取り囲み、オームが触手のようなものを伸ばしてナウシカの心を探るシーンも、ちゃっと触って数秒で終了。
ナウシカがシャツの姿になって、子供の頃の記憶に触れられるシーンが一切抜け落ちているのです。
ついでに、トルメキアの船に乗せられて出発する際に子供たちが駆け寄ってきて「姫様、絶対に無事に帰ってくる?」「あら、私がウソをついたことあった?」てな泣かせる会話もカットでした。
ほんとに細かいところをあげつらうと、いつまで経っても終わらない。
んで、「オームの怒りは大地の怒り」という根本的な前提がないので、基本オームはモンスター扱いです。
ラスト、巨神兵が死んじまうところも、オババは「あんなものを使って生き延びて何になる」としか言わないので、周りは「そりゃアンタは充分生きたから良いだろうよ」と憎まれ口のひとつも叩きたくなります。
ちなみにそのオババ、オリジナル版での子供との会話に
子供「ババ様、みんな死ぬの?」
オババ「定めなら、従うしかない」(←うろ覚え)
てな会話があったと思うんですが、ここではすさまじいことに、
子供「死ぬときは、痛いのかな?」
オババ「死なないよ。伝説にはそう書かれていない」
という、まったく逆の会話になってしまっているんです!
それと、最後にオームの子供が池に入ろうとするのを止める際に、編集で細かな部分を省いたせいでしょうか、ザンドラ姫の衣裳は赤から青にいきなり変わります(これも重要な要素なのに!)。
んで、ザンドラ姫とオームの子供を降ろすあの小さな樽みたいな飛行物体ですが、ヘリコプターのプロペラ音が合成されていました。
音の合成はかなりテキトーで、「Let's go!」「Go!」「急げ!」とか、「クシャナ殿下ばんざーい」なんて日本語が時たま聞こえていました(笑)。
あと、笑ったのが、中盤の子供の合言葉のシーン。
オリジナル版は「風」「谷!」「良し!」てなっていたのが、「合言葉を言え!」「シャーラップ!!」「良し」という、なんともアメリカ的ネタに変わっていました。
もう、いくら書いてもきりが無いので、パッケージのほうに行きましょう。
添付ファイルを見てください。
ビデオのパッケージです。
素晴らしすぎます。
巨神兵の上に乗った三人の男……つーか生き物。
真ん中はアスベルでしょうか。手綱を持って巨神兵を操っています。
お前、いつ主役になったの?
アスベルの向かって右側、人間サイズの巨神兵です。
持っているのはスター・ウォーズのライトサーベルでしょうか?
向かって左側……あんた誰?
ザンドラ姫は右上に追いやられ、劇中いちども見せたことのない乗り方でメーヴェを操ってます。乗れねえだろお前、その乗り方じゃ!
そして左側。これも見たことない奴が、出て来もしないペガサスに乗ってます。
いや~、やっぱりロジャー・コーマン大先生は偉大ですね。
宮崎駿はこの改変をあとで知り、大激怒して、けっきょく権利を売却した徳間が宮崎にゴメンナサイしたとか(wikipedia)。
徳間も、さすがにここまで変えられるとは予想だにしなかったんでしょうね。
最近になってようやくオリジナルの「ナウシカ」がアメリカでも観られるようになり、あるアメリカ人は「我々は本当の『ナウシカ』に逢えるまで20年もかかってしまった」と述べたとか。
……そこまで嫌わなくてもいいんじゃない?
最後にとんでもないことに気がついた!
この「海外版」、今はVHSでしか観ることができません。
権利の問題でもうDVDには出来ないのだと思います。
当然、私もVHSをアメリカから取り寄せたのですが、今この文章を書くためにビデオをチェックしていた時に、あることに気付きました。
このビデオ、3倍モードで録画されてやがる!!!
パッケージがあるから実物なんだろうけど……いや、実物なのか?
最後まで怪しすぎる、愉快なザンドラ体験でした!!
ろじゃーこーまん晩なうしかとな~!
なうしかいっぺんも見たことないが、これは絶対見るだがや~!