イタリアの泉

今は日本にいますが、在イタリア10年の経験を生かして、イタリア美術を中心に更新中。

母の日の聖母子像

2022年05月08日 12時59分15秒 | 展覧会 日本

母の日の今日、日本経済新聞の「春秋」欄にこんなことが書かれていた。
”米ニューヨークからのえりすぐりの名画が並ぶ東京都内の「メトロポリタン美術館展」に足を運んだ。「西洋絵画の500年」と副題にある通り、時代を彩った数々の逸品のなかで、何点かある「聖母子」に引きつけられた。まだ幼いイエスを抱くマリアを描いている。”(引用:https://www.nikkei.com

「メトロポリタン美術館展」の主催の1つは日本経済新聞社、ここのところ宣伝増えてるなぁ…というのはおいておいて、昨日私もようやく会場に行った。
ということで、私が選んだのはもちろんこの作品。

写真:https://www.metmuseum.org/art/collection/search/436052
カルロ・クリヴェッリ(Carlo Crivelli)の「聖母子」

幸いこの絵の前は空いていたので魂が奪われるくらい見つめちゃいました。
6年ぶりの再会。
この作品は1927年からNYに、1944年メトロポリタン美術館所蔵となっている。
私がこの作品を見たのは、ボストンのイザベラスチュワートガードナー美術館で開催された「Ornament&Illusion:Carlo Crivelli of Venice」、2016年1月だったため、実際メトロポリタン美術館ではどのように展示されているのか分からない。

引き込まれるような神秘的で清楚な美しい若き聖母。
しかしその静けさが少し怖い。
いつ制作されたものなのか、正確には分かっていないが、欄干に垂れ下がる黄色い布に張り付けられた、小さな紙にOPVS.KAROLI.CRIVELLI.VENETIのサインが見られる。
「ヴェネツィアのカルロ・クリヴェッリ作」
イタリア語だとカルロはCarloなのに、わざわざ”K”を使っていることから年代を推しはかることも可能だが。

小さい作品ながら情報満載の本作。
大きさなどからしても個人が自分の部屋に飾って祈りを捧げるために作られたものだろう。
キリストが手にしているのは、「無垢の象徴と言われるゴシキヒワ」…と今回は珍しく購入した図録にも書いて有るのだが???
「無垢」の象徴と言えば例えば白百合とかを思い浮かべるけどなぁ。

ゴシキヒワと言えば真っ先に浮かぶのはこの作品

写真:Wikipedia
キリスト教において、「あざみ」「アカンサス」「茨」をはじめとする棘のある植物は、罪の象徴と考えられ、ゴシキヒワはあざみの種子を好んで食べるため、ゴシキヒワは”罪”を取りさる鳥であると考えらている。

一般的に、ゴシキヒワは「キリスト受難」の象徴。
イタリア語では”cardellino”というゴシキヒワはラテン語のcarduelis” から来ている。
アザミの種をついばむのが好きな鳥だったことからきている。
そしてキリストが受難中、被ったアザミの冠をついばんだと言われる。

また中世の民間信仰では、ゴルゴダの丘に登るキリストの茨の冠のとげを取ろうとしたゴシキヒワの頭に救世主の血が垂れたことから、ゴシキヒワの頭は赤くなったと語り継がれている。

また、今朝の「日曜美術館」では、翼を広げられ、腹の赤い部分が見えるゴシキヒワが赤い十字のようにみえ、キリストの光背の赤い十字架と同じであるという意見もあった。

ゴシキヒワが救済の象徴なら、欄干に止まる以上に大きなハエは”罪”の象徴。
腐敗したものに集ることから、”死”をイメージするものである。

額縁は、20世紀に入ってイタリア人額縁職人Ferruccio Vannoniが、ルネサンス風に作ったもの…ってなんの話でしたかね?

そう、今日は母の日。
「母の日」はもともと米国の南北戦争後、元敵同士をピクニックなどで融和させる試みが由来らしい。

”母の日は1910年にウェストバージニア州で始まり少しずつアメリカ全土に広まっていき、1914年には正式に「母の日」として制定されました。ウェストバージニア州の知事が、「5月の第2日曜日を母の日にする」と宣言するに至った背景には、アンナ・ジャービスの働きかけがあったと言われています。
アンナの母親であるアン・ジャービスは、かつてアメリカの南北戦争で負傷兵のケアを行っていました。この女性は負傷兵の衛生状態を改善する「マザーズデー・ウォーク・クラブ」を立ち上げ、敵兵のケアも献身的に行っていたとされています。
アンが亡くなった2年後の1907年5月12日に、娘のアンナは亡き母を追悼する会を教会で行い、母が好きだった白いカーネーションを参加者に配りました。これが「母の日」の起源と言われており、アンナの行動によって白いカーネーションが母の日のシンボルと認識されるようになりました。
日本で初めて母の日のイベントが開かれたのは明治末期頃であり、当時教会で行われたイベントによって、人々の間に広まったと伝えられています。”(引用:日比谷花壇

反戦と平和を願う行事が起源の「母の日」
聖母マリアは、子どもの人生を憂い、悲し気な眼差しで我が子キリストを見守る。
兵士たちにも母はいる。
誰も我が子が武器を取り、他人を傷つけることなど望んではいない。

最後に「聖母子」つながりで閉めることに。
カーネーションはギリシャ語で「神の花」
カーネーションはキリストが磔刑で亡くなった時、聖母マリアの目から流れた涙がカーネーションになったという伝説があり、この伝説のせいでこちらも「キリスト受難」と「聖母の悲しみ」を表す。


写真:Wikipedia
レオナルド・ダ・ヴィンチの「カーネーションの聖母」の方が有名かな、と思いながらも私は敢えてラファエロを。

参考:https://www.metmuseum.org/



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4 コメント

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Unknown (angeloprotettoretoru)
2022-05-08 14:11:01
ウクライナ人はもちろん、戦死した若いロシア兵の母も、アフガニスタンやミャンマーの母もみんな泣いています。母たちが泣くことのない世が来ることを祈りたいです。
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ホントですね。 (fontana)
2022-05-08 15:52:15
angeloprotettoretoruさん
コメントありがとうございます。
ホントに、誰も涙を流すことがない世界に一刻も早くなることを心から祈ります。
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セレクション (山科)
2022-05-08 19:13:31
当方のセレクションはヘラルト・ダヴィッドのこれですかねえ 
ミルク粥の聖母:ブリュッセル王立美術館
なぜかURLがはりつけられられないので拙ブログのURLにしました。
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見てみたいです。 (fontana)
2022-05-15 10:11:51
山科様
コメントありがとうございます。
最近セキュリティー強化のせいか、海外のURLがコメントに貼りつけられなくなったみたいなんですよね。

聖母子像でもこんなモチーフがあるんですね。ブリュッセルもジェノヴァも行っていますが、全然記憶にないので、是非実物を見てみたいです。
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