角閃石を含む橄欖石

2021-03-21 | インクルージョン

角閃石類 Amphibole 珪酸塩鉱物 

苦土橄欖石 Forsterite  珪酸塩鉱物 直方晶系 

Spat Gali, Kaghan Valley, Mansehra,  Pakistan

苦土橄欖石Mg2[SiO4]のC軸と平行に成長する細い柱状の角閃石類。苦土橄欖石の結晶表面に放射状に広がっているのは気泡。苦土橄欖石は玄武岩などMgに富む火山岩の構成鉱物として産出することが多く、我が国では秋田県一の目潟のように粒状結晶の集合からなる橄欖石団塊が知られている。

 

ハワイ島の海岸には橄欖石による緑色の砂浜がある。橄欖石砂という点では我が国の海岸でも緑っぽい色の砂が縞を成しているところがある。橄欖石は珍しいものではないが、色鮮やかで綺麗な結晶は宝石として扱われ、ペリドット、オリビンの呼称がある。何も入っていない透明な結晶が好まれるようだが、筆者のような変わりもの好きは、何か不明なものが混じっている、ちょっと見栄えの悪い結晶に目が行ってしまう。角閃石類も橄欖石類も、ほぼ同じ組成からなっている。このようなインクルージョンは、成長の過程で環境が大きく異なったのだろう。

 

ライティングによって表情が変わる。インクルージョンしている他の鉱物の種類が多ければ多彩な表情を示す。写真の楽しみはそこを探り出すところにある。

 


細い針状水晶を含む蛍石

2021-03-08 | インクルージョン

水晶 Quartz SiO2 酸化鉱物 三方晶系

Yongchun Co., Quanzhou Prefecture, Fujian Province, China

 針のような水晶を内包する蛍石。蛍石の表面に同様の水晶が結晶していたなら、おそらく採集過程で失われてしまうであろう。結晶内に包有されているために綺麗な状態で遺されている。

 実はこの標本を見つけた時、無色透明な細い結晶の先端部が斜めにカットされたような形態から石膏のインクルージョンと見間違えた。そのような繊細な水晶である。複数の紫色六面体蛍石を、ごく薄い石英の板状構造が横断するように成長しており、その表面に微細な水晶が生じている。初期成長の形状が八面体であったことを示している。自然の力に感謝したくなる結晶内風景である。