人権は、本来自然人について認められるものであるが、時代の要請に基づいて法人やその他の団体の重要性が高まる中で、法人にも一定種類の人権規定の適用が認められるようになってきた。
通説、判例とも、人権規定は性質上可能な限り法人(団体)にも適用されることを認めている。
通説の根拠:①法人の活動は自然人を通じて行われ、その効果は究極的に自然人に帰属する。②法人が現代社会において一個の社会的実体として重要な活動を行っている。
法人の社会的実在性を重視する立場に立てば、人権の適用可能性は形式上の法人格の有無に関わらないことになる。
サンケイ新聞事件における上告審で最高裁は判決文の中で、表現行為による名誉侵害に関する「人格権としての個人の名誉の保護(憲法13条)と表現の自由の保障(憲法21条)」との調整問題について、「被害者が個人である場合と法人ないし権利能力のない社団、財団である場合とによって特に差異を設けるべきものではないと考えられる」と判示している。
サンケイ新聞事件
1973年12月2日付けのサンケイ新聞に掲載された自民党の共産党に対する意見広告をめぐって、共産党は反論権(アクセス権)を求めて発行元の産業経済新聞社を訴えた事件。
1審、控訴審とも、憲法21条から直接に反論権は認められない。人格権の侵害を根拠としても新聞に反論文の無料掲載という作為義務を負わせることは法の解釈上も条理上もできない。また名誉棄損罪も成立しないとして請求は却下された。
また最高裁判所は上告を棄却して共産党の敗訴が確定する。
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