随分時間がかかりましたが、ようやく読み通すことができました。
感想を載せます。
考えさせられたのは、人を救えるのは他の人だけだということです。
ラスコーリニコフはガチガチの論理に激しい思いこみを伴っている、端から見ても救いようのない人間です。
そんな彼にとっては、金貸しの老婆を殺害し金を奪い、立身出世の元手とする事すら、社会のための貢献だと理解されます。
どうしようもないほどの救いがたさです。
彼は最後までそれを罪と認められませんでした。
しかし、罪と認識できなかったのですが、思い込みの暗い殻から引っ張り出して現実を見据える力を得ることになります。
これほどの救いがたい彼を救い出してしまうという大業を成し遂げたのが、ソーニャです。
彼女はただ純粋に思いのままに、そしていくら不条理な理論をラスコーリニコフにぶつけられたとしても、彼のそばをはなれずに陰ひなたに寄り添っていきます。
そしてエピローグでは、ついに彼が収容された場所までついていき、他の囚人から尊敬を受けるほどにかかさずラスコーリニコフを訪ねます。
そのひたむきな行為に、いつの間にかラスコーリニコフはソーニャとの未来の生活に明るい展望を見いだし始めます。
そして作者が書くように『更正』の道へ。
ソーニャのものすごい人としての力を感じます。
あれほどの完全な理論で凝り固まって殺人まで犯した人間など、誰が救えると考えられるでしょうか。
自分の回りにそんな人などいませんが、私は救えるとは思いません。
……多分。
そして恐らく、ソーニャのような人と邂逅できなかったラスコーリニコフのような人がたどる運命は、スヴィドリガイロフと同じようなピストル自殺だと思います。
ラスコーリニコフを現実に連れ戻したソーニャのなかに、人の強さを感じました。
こういったやりとりだけでなく、この作品には純粋におもしろい要素がいくつもあります。
ルージンのずるい罠から妹のドゥーニャや先ほどのソーニャを救い出す場面など読んでいてすかっとします。
ちょっとだけ根気のいる作品ですが、読んでみることをとてもお勧めできる本でした。