飛行船通信社編集部

飛行船通信メーリングリストを運営している堤が日頃感じたことや経験したこと

情報システム管理と自由な情報共有

2004-05-25 22:25:07 | Weblog
堤です。

この文書は、島崎さんの情報システム組織にとってのWikiへのトラックバックです。

BLOGやWIKIなどの新世代(多少、懐かしい響き)のITツールを、実際のビジネスの現場で活かしてゆくには、いろいろと障害がある。

たぶん学生やフリーで働いている人には、今ひとつピンと来ないかもしれない。組織の中でこれら新世代ツールを活用してゆくのは、けっこう難しいものだ。

ところで、しばらく前から情報システムの世界ではERPという言葉が一種の金科玉条のように言われている。しかし、このERPを有機的に実践するにも、同じような障害がある。設備系はそうでもないが、人材活用という面でERPを考えると、とても難しい。その話と、これら新世代ツール導入の障害というのは、近い場所にある。

組織では、複数の人が、相互に情報交換しあいながら目的を達成する。

例えばチーム、グループ、部門など組織上の枠がある人間同士だけでなく、別の部署の人に情報を的確に伝えなければならないことは多いし、彼らと協力して目的を達成するのも日常茶飯事だ。その場合に、ある人は、Aという作業が上手で、半日あいていて、Bという人は関連する別の作業が上手で、一日あいている。だから二人をうまく結びつけて、1+1=2以上の効果を期待する、などというのが、一種理想論としての人材ERPである。

BLOGやWIKIの目的も、単なる茶飲話ツールではなく、相互に刺激を受けながら、新しい知の連鎖を生み出そう、というものだ。

さてどうやって生み出すのか。
ここに、いわゆるERP型の活用スタイルと、BLOGやWIKI型の活用スタイルがある。

閑話休題

この話を始めると、ちと話がでかくなるので、まずは、情報システムを管理する立場と、情報システムを活用しようとする職員の立場、について一言書いてみよう。

情報システムを管理する立場(システム管理と言おう)からは、
・現在保有しているシステムリソースの安定確実な運用
・保守コストの低減
などが主たる目的である。

毎日のように押し寄せるクラッキング、ウィルス、スパムに対策し、ローコスト化されて耐久力の下がった機器の調子を整えながら、職員が持ち込むトラブルの原因を突き止め、新しいインストールをこなし、次のシステムプランを検討する。そして毎年のように下されるトップダウンのシステム改変計画への対処。多くの場合、作業量に対し対策要員は少なく、大きなトラブルの時には残業につぐ残業、といった状況が、こういった部署の現状だろう。

対して、情報システムを活用しようとする職員(システム利用者と言おう)では、
・業務目的に対し、現有システムリソースを最大限に活用
・活用度合が高ければ、多少の障害は二の次
となる。

便利だと思えば、ノートPCに仕事の資料を入れて、出先で、家で仕事をするし、仕事を楽に、情報交換を楽にしてくれるツールがあれば、何はともあれ使ってみたいと思う。ハードディスクに空きがあれば、取っておきたいデータを入れておきたいと思う。仕事がはかどるならば、遠隔の同僚にデータを転送したい。

実に自然な、また仕事熱心なシステム利用者である。が、当然ながら、システム管理の面からは実に不都合が多い。完全な自由を許せば、無限のリソース(マシン、インフラ、対策要員)があっても、すぐに消尽してしまう。かといって、ルールで縛りすぎれば、情報システムの本来の目的すらあやうくなる。

もちろん、大きな費用対効果を明示できる新ツールであれば、システム管理者としても首を縦に振るだろう。しかしCSCWが学問として成立しにくいのを見てもわかるように、定量化するのが極めて難しい分野である。

結局、現状はセンスのあるCIOが辣腕をふるう以外に、この状況を打破することはできないと思う。システム管理者も予算さえ無限に許すなら、自由に新しいツールを入れたい。システム利用に積極的なITリーダー達に活用してもらいたい。誰かがGOと言ってくれるなら、という所ではないかと思う。

なお個人的には、基幹システムではなく、グループウェア系に関しては、多少の冒険がゆるされる、自己責任で実施できる組織が、望ましいと思う。組織的な対応としては、特区を作る、というのが良いのではないかと思う。または試験運用という奴だ。ただ、その場合には、試験の結果として、どういう説得力のあるデータを残すかを事前にしっかりと考えておかないと、いけないだろう。それにはCSCWの論文が役に立つ。

とりあえず今日はここまで。

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10 コメント

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オフィス空間とネット空間 (島崎丈太)
2004-05-26 22:02:38
堤さん、私の雑な投げ掛けに反応頂き、ありがとうございます。 堤さんも私と似た考えを抱いていらっしゃるんだな、と感じました。



ふと、ネット空間とオフィス空間の対比を思ってしまいました。 



私は本業は総務、それも施設管理で、オフィス空間を管理運用してゆく係なんです。 で、オフィス空間でも、ネット空間(イントラネット)とある程度似たような問題はあるのです。 誰かが勝手に什器や機材をオフィスに持ち込んで空間を占拠しっぱなしになったら・・・ しかし、それでも家具が多少邪魔なだけで、本質的には組織の他の人達に迷惑はかからない、と言っても良いと思います。



ネット空間とオフィス空間の相違は、その空間に満たすものの価格の相違かも知れません。 オフィス(リアル)空間にモノを満たすためには、それ相応のコストがかかります。 つまり、管理者の意図に反して困ったことをやるだけでも、相当大変なわけですね。



一方、ネット(バーチャル)空間では、基本的にコピー無料の情報が置かれる訳ですから、幾らでもモノを増やせる訳ですね。 サーバから余分なパケットをバンバン流すのもほぼ無料。 その辺りで、総務の心配することと、情報システム部門の心配することに、相違があるんだろうな、と思いました。 又、おかしなパケットが飛ぶと、ネットの上の関係無い人にまで迷惑を掛けてしまう可能性があります。 これは大変なことですね。



堤さんが書かれている通りで、情報システム部門だって、意地悪で新しい試みを邪魔している訳ではない、と思うのですが、勝ち目の無い戦いを戦っている、という感じの彼らにしてみれば、独自の要求を出してくるユーザは、やはり困り者なのでしょう。



しかし、組織内で情報を創発するような仕組に対しては、何とか理解して、助けて呉れるようになると嬉しいな、と思わざるを得ません。

お返事ありがとうございます (つつみ)
2004-05-27 12:00:35
Wikiを組織内で使ってゆくための課題と方策については、また別項で考えてみますね。
Wikiに興味あります (情報システムさん3号)
2004-11-03 01:40:57
はじめまして。

Wikiに関する話題を辿っていて、偶然見つけました。

島崎さんの記事がぜひ読みたいのですが、loginが必要なようで見ることができずに

非常に残念です。



甲羅に合わせて穴を掘ってる身としては是非読ませていただきたいのですが。

Wikiに関する記事 (島崎丈太)
2004-11-26 11:25:16
情報システムさん3号様、私のblogは、実名で書いていたのが災いして、社内の情報システム部門に指摘を受けてしまい、今、会社の仕事関係の記載を削除する作業中、という状況です。 大したことを書いていた訳ではないので、読みたい、と書いて頂くと気恥ずかしい次第なのですが。 内容としては、ノートPCとデスクトップPCに勝手にYukiWikiを入れていたら、情報システム部門に見つかって、こっぴどく叱られた、という話でした。
アレ? (情報システムさん3号@甲羅に合わせて穴掘り)
2004-11-29 19:44:53
> ノートPCとデスクトップPCに勝手にYukiWikiを入れていたら、

> 情報システム部門に見つかって、こっぴどく叱られた、という話でした。



なんかその程度のお話ではないようにお見受けしますが。





そういえば (情報システムさん3号@甲羅に合わせて穴掘り)
2004-11-29 20:48:18
私の方でも個人的に似たような話を知っています。



 http://66.102.7.104/search?q=cache:NaDC4shcogoJ:diary.hatena.ne.jp/Jota_Shimazaki/200410



 その方は

 何の連絡もなく、無許可で会社支給のPC2台に勝手にWebServerを

 立上げ、Wikiサイトを運用してらっしゃいました。



 以前から、訳のわからないハードウエアを会社のPCに装着したり

 許可なくアプリケーションのインストールをしたり、1人しか居ないのに

 何台もPCを所有していて、何をしているのかもよくわからなかったり。と。



 イヤ、別にいいのですよ。なにか問題があった場合、

 そのすべての責任を自分で負える。というのなら。



 自分のPCのセットアップを他人に任せているような状態で

 適当になんかインストールしちゃって、あーコワレター。

 じゃあ、直して。ってのはどうかと。



 もし、自分で立ち上げたわけわかんないWebサーバが、

  謎のパケットを吐きまくってて、network全体に負荷を掛けていた場合

  調査、検証、対策、ユーザーへの連絡などができる。もしくは

  できうるポジションに居る。というならいいのですが、

  どうも私の今までの印象では

  この方はパワーユーザーというレベルにも達していない気がしました。

  興味本位で勝手なことをするだけで、自分で自分の尻を拭けないと。



 で、とにかく把握できないWebサーバを勝手に立てるのはやめてくれと。

 別にWikiサイトなんかを立てるのは別に禁止しない。

 そんなにWikiサイトを建てたいなら、そもそもイントラ用にWebサーバがあり

 もとからその人が管理するWebサイトがあるのだから、こっちに立てて欲しい。

 で、立てる際に何をするか把握したいので、セットアップまでの

 手順書を欲しい。という話になったのですが、

 もう半年くらい経つにも関わらず何も進展がありません。



 自分で自分のPCに勝手に入れているわけですから、

 それと同じ手順を書くのに何か問題でもあるのか?とも思うのですが。



 確かに対象のWebサーバは、この方御得意のapacheではありませんが

 Windows環境ではきわめてポピュラーで、ServerOSではないと

 稼動しないといったNT時代のIISのような制限もなく検証も容易、

 日本語可のwikiとしてポピュラーなpukiwiki、yukiwiki共に

 かなり簡単に構築できるはずなのですが。

 具体的は方法はgoogleですぐ見つかりましたし。



  そもそも私も個人的にpukiwikiを使ってるので、

  自分の部署で採用ってことで導入し、今回のイントラWebサーバで

  pukiwikiサイトを立ち上げた為に、phpも動くから



  2ヶ月くらい後に、

  あとはpukiwikiのモジュールをdownloadして展開しputすれば

  勝手に動きますよ。とmailしても音沙汰なしです。

  

  おかしいですよね。



  blogで一人が入力する時間を1分短くできればとか

  > 情報システム部門は、ネットワークの基盤技術には精通し、まさにプロな  > のですけれど、人間の組織としての生産性に関しては、

  > てんで無頓着



  たかがWiki1つでこのいわれようなのですが。

 

 > # こまひこ 『ご苦労お察しいたします。

 > 情報システム部門の方には、もっと社外の動きを知っていただく

 > ほうが良いですね、たとえば→   

 > http://www.boxer.ne.jp/info/log/seminar040706.html 。』



  そういえばこの人、相変わらず、

 許可なくいろんなアプリケーションをインストールするのは収まってない。

 というか反省も何もないんでしょうね。

  「何で入れちゃダメなんだよ。うるさいなあ。」みたいな感じですかね。

 イヤ、自宅のPCに何入れようがそんなもんは勝手なんですけどね。
追加で (情報システムさん3号@甲羅に合わせて穴掘り)
2004-11-29 20:51:54
yukiwikiを使ってる。という話をこの人から伺って

activepealもinstallしています。

Webサーバへの設定方法はスクリーンショットつきのpageがgoogleから

拾えました。

最近は (情報システムさん3号@甲羅に合わせて穴掘り)
2004-11-29 21:12:53
私の周りにいる、そのpukiwikiサイトを立ち上げたいと思っていらっしゃる方ですがIinternet上のblogで、事細かに陰口を叩いてくれていたようです。実名で。



 すべてが自身のバイアスのかかっていない意見ならまだ結構なのですが。



 根本的に社会人としてどうかと。個人的な感想ですが。
そういえば (情報システムさん3号)
2004-11-30 18:48:34
私の近くにあったその方も



まるで「こんなに素晴らしいwikiを何故知らないんだ」くらいの勢いで書かれているようにお見受けしましたけど、なんか事実と話が違いませんか?



Wikiに明るい島崎さんとしてはどう思われますか?
良いCIOを得た企業が生き残る (堤)
2004-12-05 00:41:06
忙しくて見ていない内にコメントがいくつか付いてますね。私にというよりは、島崎さんへのコメントですが、私の意見を、少し補足しておきます。



企業によって役割が多少違いますが、いわゆる情報システム部門に、WIKIやBLOGの推奨をする役回りを期待するのは難しいと思います。なぜなら仕事の目的が違うからです。業務へのIT技術の活用方法を考えるのは、彼らの職域ではありません。そして、私が本や雑誌の記事で知る限り、実は日本の企業の多くには、そういう業務へのIT技術の活用方法を考える部署は残念ながらありません。



ITとは関係ない、なんとなく偉い人(部長職や理事など)が聞きかじった知識をもとに、企画などに調査させて、情報システム部門に全社共通のマスターシステムプランなどを作らせ、それを一斉に開発・導入する、というのが一般的です。情報システム部門が新しい技術を調査・評価し、企画するということは大変珍しいと思います。



本来、IT技術は、現代の企業のアドバンテージを左右する大変大きな項目ですので、CIO (chief information officer)を設け、他の優先的な経営課題と同じレベルで検討し、実施されるべきです。決して経営課題が先にあり、それを実現するIT技術を探すとか、作るというのではなく、有力なIT技術を最大限に生かす経営方針を創作する、という態度が求められます。



逆に言えば、こういったトップレベルの判断なしに、新規のITツールを組織に導入する事は難しいと言えます。情報システム部門は、情報システムを開発・保守する一部門にすぎず、そのような経営判断をすることはできません。彼らは作られた方針に従って、正しく運営することしかできないのです。



また、同時に一部の新しいITツールに詳しい先進ユーザの声が、上述のトップに届く事は大変少ないのが現状です。CIOには、そういった声を収集し、取捨選択する能力も求められます。



普通の企業で、先進ユーザの声が届きやすいのは、情報システム部門の担当者ですが、彼らには何も決定することはできないのです。そのため、能力の高い情報システム部門の担当者ほど、つらいのではないかと、私は推察しています。







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