![]() | いじめてくん筑摩書房 【著者】 吉田 戦車 詳細を見る |
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今回紹介する本は、当ブログ初の漫画である。
私は全くと言って良い程漫画を読まない。
おまけに、良い歳をして漫画を読んでいる人間を見ると、少しばかり軽蔑してしまう。
しかし、自己矛盾だとは承知しているが、吉田戦車氏の作品は大好きだ。
私の本棚には、吉田戦車氏の作品達が、唯一の漫画として納められている。
中でも、この『いじめてくん』は別格的に好きな作品であるので、今回紹介する事にした。
まずは主人公であるいじめてくん(上の画像)の紹介から。
ある国によって開発された最新鋭の軍事兵器、それがいじめてくんである。
人々の嗜虐心を煽る様に作られたその造形は、見る者全てをサディスティックにしてしまう。
誰もが、いじめてくんを見るといじめずにはいられないのだ。
なぜそういういじめられやすい造形をしているかと言うと、いじめてくんは、いじめられると爆弾としての機能が作動するようになっているからである。
つまり、いじめられて初めて意味を為す兵器なのだ。
この漫画には、そんないじめてくんによって生じるエピソードの数々が纏められている。
この漫画、素材がとてもシュールだ。
ギャグとしての笑いどころは当然の事、登場人物も意味不明なものばかりである。
変な歌で会話する火星人が出てきたり、肩こりに苦しむ巨大な女神が出てきたり、フリークスに分類されるような異形のキックボクサーが出てきたり。
この世界観が好きな人は、とことん好きになると思う。
私はまんまと好きになってしまった。
大げさな言い方ではあるが、私は本作に、ギャグ漫画としてだけではなく、哲学書としての側面も感じている。
軍事兵器として人を殺す為に作られたいじめてくんが、自らの存在意義に苦悩し、アイデンティティを探し、次第に自己実現して行く物語、と読むとそれはもう立派な哲学書だ。
まあそんな難しい事は考えず、とりあえず読んで欲しい作品である。