何かまずい出来事に対しては、どうしても悪役が設定されやすいもんです
ビートルズの解散については、ポールとオノ・ヨーコ辺りがその役回りをさせられておりました。
Brian WilsonとBB5(The Beach Boysのこと)が不仲になったり、先進的な音楽に専念できなかったりした原因は、たいがいMike Loveが悪く言われます
マイク・ラヴが文句を言われるポイントは、たくさんあるのですが、ようは以下のポイントが軸となっているように思います。
『ペット・サウンズ』や『スマイル』の良さが理解できなかったくせに、人気が出たら自分の権利を主張する
これに付随して、
・音楽の才能がないくせに。
・ってか高圧的に仕切りすぎ。
・BB5に“軽い”イメージを植えつけた犯人。
みたいな点が嫌がられています
以降、彼は時折、ア・プリオリに、問答無用で嫌がられている感があります
もちろん、捨てる神あれば拾うなんちゃらありでして、マイク擁護派の方もしばしば意見を述べております。
その場合、たいていは上の黒ぽちの項目についてがメインです。
『ペット~』や『スマイル』に対するマイクの姿勢は、やっぱり良くないと思っている人が多いんですよね。
ですが、この一番の根幹部分について、僕はけっこう疑問に思うことが多いのです
と、言うわけで、マイク・ラヴ擁護論を述べてみたいと思います。
上述の文句は、二つに分けて、分析することが出来ます。
①マイクは『ペット~』や『スマイル』の良さが理解できなかったのか
②マイクがこれらのアルバムに、自身の権利を主張するのは不当なのか
という感じです。
まず①ですが、マイクが『ペット~』の作成に難癖をつけ、苦情を述べた、という事実が、不理解論の根拠となります。
確かに、マイクは結構ボロクソ言ってますがこれが根拠となるためには、
“マイクは『ペット』以前のアルバム作成に際し、ほとんど文句を言っていない”
ということが前提となるはずです。よね?
んで、彼のキャラクターから分かるように、『ペット~』以前にも、彼はブライアンに対して注文やら文句やらを述べていることがあるんですよ。
そりゃ、彼も表現者の一人ですから、何か言うでしょう。
そして、どんなに苦情を言っても、最終的に発表されたからには、“ビーチ・ボーイズの作品”として、自己責任を感じているように思うのです。
その証拠に、『ペット~』の作品は直後から今にいたるまで、ライヴで積極的に取り上げておりますし、『スマイル』ですら、彼はライヴや後のアルバムでも積極採用しようとしております。
ブライアンの作風の変化には誰もが驚き、距離感を感じたと思います。
ピート・タウンゼントを怒らせ、ポール・マッカートニーやエリック・クラプトンを泣かせた辺り、天才方も動揺しました。
そう考えると、マイクもきっと驚き、不安を感じたと思うのですが、むしろ、“良くブライアンの才能を信頼した”と言った方が良いのではないでしょうか?
ライヴで『ペット~』の曲を紹介するときのMCを聞いても、“愛”があると思うのです
だいたい、ビーチ・ボーイズは、『ペット~』や『スマイル』が、常軌を逸した注目を集める前の、しかもブライアンが抜けている時に、ライヴでも積極的に使い、『ソー・タフ』に抱き合わせ(笑)、スマイル遺作をアルバムに取り入れ、しっかりアピールしてきた訳ですわ。
彼らがこういう活動をしていなかったら、『ペット・サウンズ』や『スマイル』の位置づけって、もっと変わっていたかも、って考えすぎでしょうか???
だから、②にも繋がるのですが、マイクが『ペット・サウンズ』や『スマイル』に自己の権利を主張するのも何となく分かる気がします。
そもそも、『ペット~』や『スマイル』は“ブライアンのソロ作品”って、言いますが、本当なんでしょうか???
・ブライアンが1人で作曲を進め
・スタジオ・ミュージシャンが演奏をし
・メンバーに残された仕事は、ヴォーカルを入れるだけ
こういう作り方をしたから、“ブライアンのソロ作品”だと言うのには、無理があると思うんです。
・・・だって、これっていつもと同じじゃないですか(笑)。
敢えて言うなら、『ペット~』はメンバーの留守中に段取りが進められていた、ということぐらいですが、それなら『スマイル』の時はちゃんとメンバーがいる時に進められておりますので、絶対的な条件ではないかなぁ、と。
メンバー側に立ってみれば、
“ビーチ・ボーイズはブライアン1人の力でやってきた”
と大なり小なり感じているようですが、『ペット・サウンズ』や『スマイル』だけが際立って
“ブライアン1人で作った”
と感じるでしょうか???
僕は、これは有り得ないことだと思うんですよ。。。
皆で素晴らしいコーラスを実現したのは当然として、
カールは「神のみぞ知る」の時にブライアンと一緒に祈り、
デニスは「ザッツ・ナット・ミー」で素晴らしいドラミングを見せ、
マイクは「ヒア・トゥデイ」でブライアン以上の曲解釈に成功し、抜群のリードを取り、、、
みんな真剣に完成目指して頑張っていた訳で(笑)。
近年、ブライアンはソロ名義で「ペット・サウンズ・ツアー」をやって、DVDも出し、ソロ名義で『スマイル』も完成させました。
・・・これって他のメンバーにしてみれば、不快だったりしないんでしょうか???
いや、僕らは相当自然に受け止められましたよね。
雑誌やネットを開けば、あちこちで、
“ブライアンのソロ作品とも言うべき『ペット・サウンズ』”
なんて見ますから、“ブライアンにのみある権利だ”と思えた訳です。
でも、ふっと冷静になると、マイクやアルやブルースは悲しくなかったんかなー、と思ってしまうのです。
マイクが『スマイル』の権利を主張した時、ネット上ではボロクソに言われてましたね~
でも、皆で完成を目指したアルバムが、メンバー1人のソロ名義で出ていることに、何も言わない方がおかしいのではないかな~と。
「ペット・サウンズ・ツアー」も含め、みんな良く我慢してる方なのではないでしょうか。
だって、ポールがリンゴ・スター抜きで、「ラバー・ソウル・ツアー」とか「サージェント・ツアー」とかやったら、絶対にリンゴは文句を言うでしょう??
そういえば、こんなこともありましたねぇ
『ペット~』の音源を集めまくったBOXセットが出る時に、何度か発売が延期されました。
その理由の一つに、ヴォーカルのみのトラック集に入る「素敵じゃないか」が、中間部ブライアンってヴァージョンのテープしか見つからず、公式発表した、中間部マイクってヴァージョンのテープが見つからないので、マイクが発売を差し止めていた、ということがありました。
いやぁ、こん時もマイクは悲惨な言われ方されてましたね。
“何て自己顕示欲の強い奴だ”とかね。
そりゃ、自分の声のが公式のなんだから、そっちが入るのが筋でしょう
ってか、そうでなかったら異常事態だって(笑)。
公式発表したヴァージョンが見つかるまで待ちたい、ってアーティスト魂としても正しいスタンスだと思うのですが。
と、言うわけで、以上、
『ペット・サウンズ』や『スマイル』の良さが理解できなかったくせに、人気が出たら自分の権利を主張する
というマイク・ラヴへの批判は、的を外しているのではないかという、僕なりの意見でした~。
・・・読んでくださった方、お疲れ様でした(笑)。
蛇足ながら、マイク=諸悪の根源説を支えたのって、やっぱあの『自叙伝』の影響が大きいんですかねぇ。。。
音楽的にもマイクが頑張ってる曲が好きですね。
少なくともブルース・ジョンストンやゲーリー・アッシャーなんかよりブライアンにとって必要不可欠だった人だと思います。
最近もブライアンが「誰と共作したいですか?」みたいな質問に「マイクだよ」と即答していたらしいですね。
お互いに、無いものを持っているって感じしますよね、彼ら2人は。