自らの障がいと対峙し、「生きづらさ」の根底にあるものを探求した、とても良い本である。
障がい当事者の日常の実践は、健常者がつくった構成的現実に風穴を開け、根底から構築しなおす力をもつ。路上でのたうちまわって自己を開示した脳性まひ者、横田弘さんや、筋萎縮性側索硬化症 (ALS)の国会議員、舩後靖彦さんを想起してみよう。
本書は、障がい当事者が構成的現実を変えていく可能性というよりは、構成的現実の抑圧をかいくぐって、他者とつながり、生き延びていく作法を、自らの当事者運動の経験から模索したものである。
自閉症スペクトラムの当事者である綾屋さんの苦悩と生き延びようとする意思は、生きづらさを抱える健常者のそれらと響きあい、人びとをおおいに力づけてくれるだろう。
“つながれないさみしさ”“つながりすぎる苦しみ”―アスペルガー症候群と脳性まひというそれぞれの障害によって、世界や他者との「つながり」に困難をかかえて生きてきた二人の障害当事者が、人と人とが「互いの違いを認めた上でなお、つながるために必要な条件とは何か」という現代社会の最も根源的課題に挑む画期的な書。
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