本書が広く読まれていないとすれば、あまりにもったいないと思うほど、内容の詰まった好著である。
日本の製造業大手の大企業はなぜ衰退したのか、そして、「グローバル・ニッチトップ(GNT)」の座を占めた中小企業がなぜ発展し続けてきたのか、起業家精神、意思決定のあり方、組織とネットワーク等、多面的にその謎を解き明かす。
莫大な利益を叩き出すプラットフォームビジネスはほぼ米国企業が独占してきたが、ドイツ、フランス、イタリア、イギリス、デンマーク、スイス、そして日本には、高度の技術力を生かした高付加価値産業がある。
画一規格の製品やサービスの価格競争で消耗するのではなく、現代人のニーズに見合う、付加価値の高い産業を発展させるためにはどうすれば良いのか、有益な知見とアイディアが本書には満載されている。
日本各地で今、「小さな世界企業」が宝石のきらめきを放っている。ニッチな分野で世界のトップに立つ「グローバル・ニッチトップ(GNT)」企業である。GNT企業を全国に訪ね、調査してきた著者が、地域に存在するすぐれた中小企業の実態を紹介すると共に、後に続く企業を国や自治体が政策的に支援する方法を、様々に考察する。真の地域の内発的発展を促すためには、安易に補助金を配るだけでは十分でない。ドイツなどの成功例に学び、地域における知恵を育むための地域経済活性化策を提唱する。
目次
第1章 グローバル・ニッチトップ(GNT)企業とは何か?
ジェイン・ジェイコブズの予言
成熟した市場経済で本領を発揮するGNT企業
中小企業とは?―ものづくりとは?
第2章 GNT企業―なぜこんなにすばらしい企業が存在するのか?
GNT企業の強さの秘密
さいたま市の驚異企業
社会を映し出すレンズのようなGNT企業
GNT企業を目指せ
第3章 日本の長期停滞を打開する糸口
日本の大企業、日本経済の苦境をどう考えるか?
世界で元気な企業のキーワード―ニッチ、ファミリー、スピンオフ
四大財閥の危機を救った戦前の持株会社システム
イノベーションに不可欠な並列実験と小さい組織単位の重要性
ITが引き出す小さい組織の無尽蔵の可能性
第4章 企業を元気にする正しい成長戦略
企業の競争優位を左右する社会的共通資本
ドイツの長期戦略―官民がタッグを組んで需要を生み育てる
世界需要を取り込んだ創発的オープンネットワークの構築
第5章 地域経済活性化とGNT企業
クラスターからネットワークへ
地域の力を引き出す企業とその活用
人材とその活用で地域の伸びしろが決まる
企業と地域の良い利己主義、悪い利己主義
最新の画像もっと見る
最近の「本」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事