筆致は柔らかいが、実はとても辛辣な大学行政への批判の書である。
奇妙な書式と意味不明の規則で縛られたシラバスに、よく考えたら(考えなくとも)陳腐で不毛きわまりないPDCA(のポンチ絵)。そして、おそろしくくだらないFD研修。最近では、これらに「学修ポートフォリオ」(の作成)なるものが課せられるようになった。まったく、バカバカしい限りなのであるが、こういういかさま大学教育改革の旗を振っているのが、教育コンサルタントなる詐欺師たちである。その詐欺師たちの中心には、少子化でおまんまくいあげになりそうな国立大学法人教育学部の連中がいる。愛媛大学のおまえらのことだよ。
さすがは佐藤さん、大学改革に資するとうたって実施された、おおがかりな調査についても、たいへん手厳しい。それでも、指摘されていることは、至極真っ当である。
なぜ、このような、きわめて妥当性の高い大学行政批判が、とくに大学内部から出てこなかったのか。わたしたち自身が猛省し姿勢を改めるべきだと思う。
「大学は危機に瀕している」。何十年も前からそう叫ばれつづけてきたが、いまでも、様々な立場から大学を変えるための施策がなされたり、意見が交わされたりしている。では、大学の何が本当に問題なのか?八〇年以降の改革案から遡り、それらの理不尽、不可解な政策がなぜまかりとおったのか、そして大学側はなぜそれを受け入れたのかを詳細に分析する。改革が進まないのは、文部科学省、大学関係者だけのせいではない。大学改革を阻む真の「悪者」の姿に迫る。
目次
序章 大学解体から大学改革の解体へ
第1章 Syllabusとシラバスのあいだ―和風シラバスの呪縛
第2章 PDCAとPdCaのあいだ―和製マネジメント・サイクルの幻想
第3章 学校は会社じゃないんだよ!―残念な破滅的誤解から創造的誤解へ
第4章 面従腹背と過剰同調の大学現場―実質化と形骸化のミスマネジメント・サイクル
第5章 失敗と失政から何を学ぶべきか?―大学院拡充政策の破綻と「無責任の体系」
第6章 英雄・悪漢・馬鹿―改革劇のドラマツルギー(作劇術)を越えて
第7章 エビデンス、エビデンス、エビデンス…―「大人の事情」を越えて
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