ああ、そういえば、「モナ・リザ」に赤いスプレー塗料を噴射した女が逮捕された事件があったあった。
本書の主人公は、その女、米津知子さん。
本書を読むまで、米津さんの犯行の背景にこのような複雑な背景事情があるとは知らなかった。
身障者でありかつ女であること、それゆえ、ウーマン・リブの活動にのめりこみながら、過剰なまでに障害者差別に敏感であった米津さん。身障者差別を露骨に示した「モナ・リザ展」に対しこうするほかなかったであろう、と納得させる荒井さんの筆力を称えたい。
1974年4月20日、東京国立博物館で開催された『モナ・リザ展』一般公開初日。「人類の至宝」と称されるこの絵画に、一人の女性が赤いスプレー塗料を噴射した。女性の名前は米津知子。当時25歳。「女性解放」を掲げたウーマン・リブの運動家だった。なぜ、彼女はこのような行動に及んだのか。女として、障害者として、差別の被害と加害の狭間を彷徨いながら、その苦しみを「わたしごと」として生きるひとりの、輝きの足跡。
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