冗長な表現が延々と続く大著を読みこなすのはたいへんではあるが、なるほど、これがリチャード・フロリダに多大な影響を与えた都市論の古典か。
わたしが住む福岡都市圏は、典型的なクルマ社会で、短い街路が行き交う人々の匿名のコミュニケーションを生み出し、新旧さまざまの居住用途、商業用途混交の建物が、多様性にみちた活気ある市街地を形成しているとなると、博多区川端地区や雑餉隈地区など、ごく限られた地域しか思いうかばない。
行き交う歩行者の目が、匿名性を保ちながら、都市の活気と楽しさ、そして安全性を実現するという指摘は、なるほどそのとおりと思うのだが、クルマ優先で開発された都市にそうした理想を求める余地はいまのところないし、これまたジェイコブズが指摘するとおり、過剰なゾーニングもまた、都市の自由と多様性とを失わせてきたと思う。
大阪や東京に残っている猥雑で回遊の楽しさあふれる市街地をこれからでもつくり出していくことが、福岡都市圏の課題ではないだろうか。
都市論のバイブル、待望の全訳なる。近代都市計画への強烈な批判、都市の多様性の魅力、都市とは、明らかに複雑に結びついている有機体である―一九六一年、世界を変えた一冊の全貌。
目次
第1部 都市の独特の性質
歩道の使い道―治安
歩道の使い道―ふれあい
歩道の使い道―子供たちをとけこませる
近隣公園の使い道
都市近隣の使い道
第2部 都市の多様性の条件
多様性を生み出すもの
混合一次用途の必要性
小さな街区の必要性
古い建物の必要性
密集の必要性
多様性をめぐる妄言いくつか
第3部 衰退と再生をもたらす力
多様性の自滅
境界の恐るべき真空地帯
スラム化と脱スラム化
ゆるやかなお金と怒涛のお金
第4部 ちがった方策
住宅補助
都市の侵食か自動車の削減か
視覚的秩序―その限界と可能性
プロジェクトを救うには
地区の行政と計画
都市とはどういう種類の問題か
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