直接の接点をもたない6人の男とその家族の物語が、戦中から戦後70年に至るまでの社会史とともに展開される。
登場人物は、誰をとっても、いささかカリカチュアされた俗人、凡人であり、読者はそこに等身大の自らの過去を投影し、どうでも良い、つまらない人間たちの物語を、随時挿入される世相のありようを懐かしみながらたどっていく、そんな趣向の作品だ。
さて、橋本は、自らの作品で描いてきた、「ぼーっとした」凡人たる大衆を、愛しく思っていたのか、それとも蔑視していたのか・・・おそらくその両方なのだろうが、橋本の、同時代人に対するそんなアンビバレントな心情が透けてみえる作品でもある。
草を薙いで野火の大難を防いだといわれる神剣―草薙の剣。12歳から62歳まで、6人の男たちとその父母、祖父母が経験した、戦前、戦後、学生運動、オイルショック、バブル、オウム事件、2回の震災、そして現代まで、そこに生きる人間の姿をつぶさに描くことで、「時代」という巨大な何かを立ち上がらせた奇跡の長編小説。知の巨人にして時代の感性だった橋本治の文業40年の結晶。野間文芸賞受賞。
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