目黒こころの便り

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新しいうつ病1.非定型うつ病

2009-02-09 19:20:20 | うつ病

最近は20歳代、30歳代の若い世代を中心とした、従来のうつ病とは違うタイプの新しいうつ病が問題となっています。非定型うつ病、ジスチミア親和型うつ病、逃避型抑うつなど、たくさん議論されています。しかし医療者の間でも、まだ見解は一致していません。新しいうつ病には、症状は軽症ですが、慢性化しやすく、坑うつ薬が従来のうつ病より効きにくいという共通点があります。

 

(1) 非定型うつ病

比較的若者に多く、病前性格は対人関係に過敏で繊細、控え目で恥ずかしがり屋、従順で自己主張が苦手な方が多いようです。うつ病特有の気分の落ち込みはあるものの、なにか楽しいことがあると気分が一時的に晴れます。反対に些細なことで激しく落ち込んだりイライラしやすくなり、人にあたったり、無理な要求をしたりするため、周囲の人が対応に困ることがあります。日中横になったり眠ったりしますが、夜は眠れません。甘いものを異常に食べたり、過食になります。ちょっと動いただけでものすごく疲れます。パニック障害などの不安障害の合併が多いといわれています。症状は軽いものの、慢性化しやすい傾向があります。

 

例を見てみましょう

29歳のBさんは、もともと周りに気を使い、周りに自分がとどう思われているか非常に気になるほうでした。大学1年生の頃から突然電車の中で呼吸が苦しくなるパニック発作が起こるようになりました。かかりつけの内科で安定剤も貰って、時々それを飲んでいました。先月6年間付き合っていた彼と別れました。そのあとからパニック発作が毎日起こるようなり、メンタルクリニックを受診しました。SSRIという種類の薬をもらい、パニック発作はおさましました。しかし、ある日上司に報告書をやり直すように命じられたところ、突然涙が出て止まらなくなりました。翌日から体が重く、どうしても朝起きて会社に行くことができず、1日中ベッドに横になることが多くなりました。甘いものが無性に食べたくなり体重が増えました。友人や家族から電話があったり何かうれしいことが起こると体が軽くなって、以前の様に動けました。メンタルクリニックの主治医に最近の様子を伝えたところ、「非定型うつ病」といわれました。

 

Bさんも、もともと人に気を使う性格の方がまずはパニック障害になり(不安障害の合併)、その後非定型うつ病になり、いつものように上司に注意されると激しく動揺し(対人過敏性)、体が重くなり(鉛様麻痺)、ベッドにいる時間が長く(過眠)体重が増え(過食)、自分に好ましいことが起きると症状は軽くなります(気分反応性)。

 

『治療』

薬物療法では坑うつ薬が基本となりますが、その他の向精神薬が有効な場合も多い様です。規則正しい生活をすることが大事で、患者さんの要求むやみに飲むことはかえって悪化を招くため、周りの方はできること、できないことをはっきり示してあげたほうが良いようです。認知行動療法などのカウンセリングつ病デイケアなどを併用することが効果的です。治療には長くかかる場合が多いので、あきらめずに根気よく続けることが大事になります。ふとしたきっかけでよくなる方も多いです。