人生アウトロー

Bad Money Drives Out Good

エサ・ペッカ・サロネン「LA VARIATIONS」

2005-03-27 16:42:55 | 今週の一枚
今週の一枚はエサ・ペッカ・サロネン「LA VARIATIONS」です。
他にもこのCDには、4曲がカップリングされていますが。
とりあえずこの曲だけ紹介します。理由は後ほど。

私のエサ・ペッカ・サロネンとの出会いは、まさにこの曲であった。
大学生の頃、たまたまつけたNHK BSで、彼が自作の「LA VARIATIONS」を指揮していた。
非常に乗りのよい曲で、大変楽しめたので、CD化したら買おうと思っていた。
そして、ずっと待っていたのだ。まだCDになっていないと思って、、、。


CD化されてました。01年に。
知りませんでした。amazonでたまたま見つけてしまい、ちょっと衝撃的でした。

しかし、数年ぶりに聴く曲、何か物足りない。というよりぜんぜん物足りない。
初めて聞いたときは感動したのになあと思いつつ。
全部聞き終えてしまいました。感想は、、、うーん。
聞いた感じは前衛というのでは全くなく、
むしろ、ストラヴィンスキーあたりまで戻った感じです。
現代の音楽において「前衛」という言葉はあまり意味がないのかもしれませんが。

正直、私はこの曲を理解できるレベルには達していませんでした。
しかし、指揮付(映像付)で見ると楽しめたのに、
CDだけで聞くと、「あれっ」ていう時ありませんか?
とりあえず、この曲を聴いたあと、気持ちが萎えてしまい、
いまだ、他のカップリング曲を聴く気にはなっておりません。

ヴェデルニコフのべートーヴェン:ピアノソナタ30、31、32

2005-03-12 17:51:32 | 今週の一枚
お薦めCDを紹介するカテゴリーを作りました。
名づけて「今週の一枚」。
一週間に一枚ペースで紹介できるかは分かりませんが、
いまいち身近ではないクラシックのCDを中心にご紹介します。

今回はヴェデルニコフのべートーヴェン:ピアノソナタ30、31、32番のアルバムです。
DENONのロシアピアニズム名盤選というシリーズから出ている一枚です。

ヴェデルニコフというピアニストは、生前、リヒテルやギレリスと肩を並べるほどの実力の持ち主であったにもかかわらず、ロシア-ソビエト連邦下の圧制により国外で演奏することが許されなかったために、世界的にはほとんど無名のまま生涯を閉じた。

同じロシアのリヒテルは彼を非常に高く評価していたし、事実ヴェデルニコフはリヒテルと同じネイガウスの同門であったため互いをよく知った中であった。二人が競演するバッハのピアノ協奏曲のCDも残っている。

しかし、リヒテルは彼のピアノ奏法には批判的であったとされている。私から見るとリヒテルの奏法そのものが完全に独創的であり、音質の悪い盤しかのこっていないヴェデルニコフのと音を比べてみることは無意味だと感じるが、リヒテルからみると、ヴェデルニコフはピアノを打楽器のように考えており、その部分が気に入らなかったようである。

ヴェデルニコフは、グレングールドの存在を強く意識していたような節がある。以前に見たドキュメントにたまたまヴェデルニコフの家の室内が映し出された映像があったが、グールドのレコードがおいてあり、写真も飾ってあったことが私には非常に衝撃的だった。ヴェデルニコフの録音の選曲も現代音楽のレパートリーを広く取り入れており、グールドと共通する音楽観があったのかもしれない。

個人としてのヴェデルニコフは非常にオプティミスティックな人だったと、ヴェデルニコフの妻が伝えている。これは非常に驚きだった。あれだけの才能を持ちながら、ほとんど外には知られることが無く、同時期のリヒテル、ギレリスの海外での活躍はヴェデルニコフにとって辛いものだったと思うのだが、あまりそういうものには頓着していなかったらしい。

今回のべートーヴェンのソナタ30.31.32番であるが、グールドはこの3曲を非常に高く評価しており、「航海を続ける勇敢な旅人が短いながらも憩うことのできた寄港地である」と評している。
私自身の感覚からすれば、かなり異色な3つのソナタであり、一番親しみやすいと思われる30番ですら、非常に現代的な音楽センスでまとめられているように思われる。いろいろな意味で、時代を先取りしていたべートーヴェンの音楽であるが、この3曲が古典派の時代に生まれていたとは考えられないような斬新な表現を含んでいる。例えば、もっと後のブラームスのソナタと比べても、この3つのソナタのほうが新鮮である(もっともブラームスはピアノソナタではあまり名作を残していないが)。

ヴァデルニコフはこのソナタが持つパッションを損ねずに完璧に表現しきっている。すばらしい演奏だと思うのだが、いかんせんあまり知られていないし、この3つのソナタは大家が数多くの盤を残しているので埋もれてしまっているのかもしれない。私はヴェデルニコフの盤がベストだと思っているのだけれど。