端と底を行き来するRPG

そのとき、きっと誰かの中心blog。
アーカイブにある作品は人事を尽くした盛者必衰の入れ替え制。

親愛なる主(きみ)へ

2011-12-24 00:00:00 | テキスト(よろず)
施しを受けたことはあっても。
施す機会は決して多くなかった。
自分が主(あるじ)、すなわち王だったからだ。
だが、今は違う。
名目上の主、契約を交わした者がいる。
つまりは、自分が施す立場である。

君に捧げるエンドルフィン

「何度言えばわかるんだよ!
 うろつくな、出歩くな、実体化するな!」
「何が不満なのだ」
「全部だ、全部!
 体がでかいから、ただでさえ存在感あるのに。
 声もでかいから笑うと目立つし。
 赤毛だから目を引くし。
 格好はどうみてもローマ時代のコスプレだし!」
「征服王たる余はローマ人なのだから当たり前だろう」
「ここは古代ローマじゃないって言ってるんだ!!」

目の前で頭を振るこの少年こそ。
余が契約した現世でのマスターであり、護るべき対象であった。
何事にも神経質で、よく言えば慎重。
大きな行動を起こすでもなく、本を読み漁るのが日常だ。
それに疑問はない。
知識こそ荷物にならぬ宝で、財産だからだ。
かといって、余は現状に満足はしていない。
行動こそ我が信念であるからだ。
機を逃して、勝てる勝負を捨てるなぞ愚の骨頂。
迷ったらぶつかる、これで世界を統べてきた。
故に、現在のマスターは歯痒い。

「考えてばかりでいては機を逃す。
 どうしても考えたくば、行動しながら考えたらどうか」
「出来るならとっくにやってるよ!
 いいから大人しくしてろ、ほら」

寄越してきたのは、我がバイブル『イリアス』
小僧め、どうあっても余を出歩かせたくないらしい。
だが、腐ってもこのイスカンダル、そう簡単には諦めぬ。
背を向けて、作業に没頭するマスターを横目に。
マントを翻して階下に移動する。
何をするともなしにテレビをつける。
……つまらん。
窓を見ると室内との気温差で窓が曇っている。
まぁ、季節が季節だから当然だわな。
しかし寒い、ああ、いつも皆とどう過ごしていたろうか。
戦いに明け暮れて、『夜』も何かと忙しかった。
閉じこめられることも、じっとしていることもなかった。
そうだ、いつでも太陽の下にいたのだ。
テレビでは外の話題をしていた。
そして、ひとつのニュースに辿り着く。
ほう、今日はその日か!


「坊主!!」
「っ!!! お、おどかすなよ!」

持っていた試験管を取り落としそうになって。
ウェイバーは、誤魔化すようにそっと振り返る。
心臓が止まるかと思うようなライダーの入室には慣れたと思っていたが。
どうやら、まだ、だめらしい。
何かを思いついたらしいライダーの目は自信に満ちており。
それがウェイバーを大いに身構えさせた。

「忠誠のキス、敬愛のキスのどれがいい?」
「はぁ!?」

何を思いつきやがりましたか、このバカは!
開いた口がまさに塞がらないウェイバーを後目に。
ライダーは語り出す。

「テレビで、今宵はクリスマスと言うのでな。
 余の時はどうであったかを参考までに思い出してみたのだ。
 するとひっきりなしに女どもが求めてきておった」
「……それは自慢か?」
「いいや、事実だ。
 どうとも思っていなかったがな」

ゆっくりとライダーはウェイバーに近付く。
思えば、彼を招霊してからずっと傍にいた。
絶対的な存在。
それにいつの間にか安心感を覚えていた。

「キスは嫌か?」
「……男にされても嬉しくない」
「ふむ、まぁ、ここでは日常的ではないわな」
「なんだよ、キスとかさ…」
「何かを施そうにも金も技術もないのでな。
 せめて、と思ったのだ」
「いいよ…、別に…」

そばにいてくれるだけでさ……。

ライダーが目を見張る。
思いもしない言葉だったことは明らかだった。
だが、次の瞬間には、にかっと笑う。

「ほう、では、熱い抱擁はどうか!」
「調子に乗るな!!」

顔面にハードカバーの本をぶつける。
みなくてもわかる。
きっと、顔は真っ赤だ。

「………マント貸してよ」
「あい、分かった」

すぐさまライダーが羽織っていたマントがウェイバーの肩にかかった。
すっぽりと覆い隠すように大きいそれを。
ウェイバーはぎゅっと抱きしめる。
暖かい。

甘え下手め。
……うるさいっ。

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一日早いけど、メリークリスマス。
とりあえず、ライダー陣営は正義。
ライダーはともかく、ウェイバーにまさかここまで愛着湧くとは。
絶対ヒロインだよウェイバー、マジ天使。

アニメ原作13話で、まさかの「抱擁」発生。
ちょっ!!!!
あー、画にするとあんな感じなのか。
ウェイバー、マジ天使。
ライダー、マジ男前。

体格差萌えをする人種ではないと思っていたけど。
意外と好きなのかもしれない。
インテリマッチョで征服王とか、くそぅ、ライダーが好きだ!

聖杯戦争である以上、いつかは別れが来るけれど。
それでも、どんな形であれ、幸せになってほしい陣営です。

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