端と底を行き来するRPG

そのとき、きっと誰かの中心blog。
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ただ一度だけの意見の一致

2012-02-29 00:00:00 | 犬猿の仲の二人に5題
犬猿の仲の二人に5題
- 永遠に君と気が合うとは思えない! -


「いい眺めだ、気に入ったぜ」
「それは何より」
「…あー、腹減ったな」
「そうか!では、弁当を開けようぞ!」

ただ一度だけの意見の一致

馬を駆け、上田で一番の桜をみせた。
舞い散る花弁の中、従者もつけずに花見をする。
相手は男で、敵将で、嫌いな分類に入る人物。
何でも見通したような顔をして、にやりと笑う。
独眼竜・伊達政宗。
お館様より世話係を仰せつかり、まもなく期日を迎える。
休戦同盟を破棄する前に花見を、と約束したため。
こうして、昼間から酒を酌み交わす。

「……お別れだな」
「ああ、ようやっとだ」

何度目かの酌を受けながら。
俺は思ったままを言葉にする。
ようやく解放される。

「アンタ、地元に帰ってくるとまるで子供なんだな。
 早寝早起きだわ、甘味好きだわ、服は自分で決められねぇわ」
「戦には関係なかろう!」
「ああ、ないな。
 ON/OFF がきっちりしてて寧ろ羨ましい」
「おん?」
「こういう時間と合戦とうまく分けてるんだなって褒めたんだ」

酒を飲む手を止めると。
相手が目を細めてこちらを見ていた。
時折、佐助が向けてくるものに似ている。
この目をした後、たいてい、佐助には頭を撫でられた。

「この花見が終わったら、俺は奥州へ帰る」
「…そうだな」
「信玄公への挨拶を済ませてから来て正解だったな。
 酔っぱらった姿で挨拶するなんて、Jokeがすぎる」
「…そうだな」
「真田幸村」
「なんだ」

「アンタを討つのはこの俺だ。間違えるなよ」
「おお、貴殿こそ俺が討ち取ってやるから、覚悟せよ」

上田への道、奥州への道。
別れ際にもう一度。
視界にも入れたくないし、目が合う度イラつくし。
誰が仲介しても効果なし、意見も合うこともないけれど。
ただ一度だけの意見の一致。

「次会ったら、ぶっ倒す」
「その言葉、そっくりそのまま返してやる」

「「死ぬなよ」」

決着をつけよう。
誰にも邪魔はさせない。

*****************************

完全に上の空の真田幸村。
冒頭での理由は「早く弁当を食べたかったから」
終盤での理由は「政宗が奥州に帰ってしまうことが気になるから」
きっと、今なら政宗のことを悪く言うと本気で怒ると思う。
あいつを悪く言っていいのは俺だけだ、的な。

死ぬな、俺が殺すまで。
これだけが彼らの総意。

お題コンプ。
全然、犬猿じゃないな…。
私のようなダテサナスキーにはこの程度が限界です。

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