端と底を行き来するRPG

そのとき、きっと誰かの中心blog。
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君が白と言うなら僕は黒と言う

2012-02-22 00:00:00 | 犬猿の仲の二人に5題
犬猿の仲の二人に5題
- 永遠に君と気が合うとは思えない! -


「旦那、いつまでそうしてるの。
 お館様のところに行くんでしょ!」
「分かっているが、何を着ればよいやら……」

君が白と言うなら僕は黒と言う

経過報告のため、躑躅ヶ崎に赴くこととなった。
伊達政宗の人となりを報告するのだ。
何故、敵武将を観察せねばならないのか。
報告するために書き留めた覚え書きは、さっさと焼却処分したいところだ。

「信玄公のところに行くのか?」
「貴殿には関係ない、去れ!」
「そろそろ春になる時分だ。
 俺の顔を立てて、挨拶の場を設けて頂きたい」
「春……」
「同盟の期限が迫っている。出来れば早急に」
「うぅむ、俺の一存では……」
「独眼竜の言うことは癪だけど正論。
 ひとっ走りお館様にお伺い立ててくるから、支度、済ませておいてよ」
「さ、佐助!!俺を置いていくのか!」
「子供じゃないんだから、駄々こねない!」

ひらりと飛んでいってしまった佐助を見送り。
先程の問題に戻る。
どんな格好をして挨拶すればいいのか…。
首を捻っても答えが出るわけもなくいよいよ困った。
着物を前にして唸っていると、後ろより声。

「青でも着てみるか?」
「否、赤だ」
「下は、茶かね?」
「白だ、元より茶などない」
「髪紐はどうする?」
「今のままでよかろう」
「それ、使い古しだろう?失礼な奴だな」
「無論新品のものを用意する、色が今のままだ!」
「Okey, 決まったな」
「あ……」

振り返ると満足げな顔がそこにあった。
うまく転がされた気分だが、実際そうなのだろう。
向こうはというと、深い蒼の羽織。
上等の品であることは、想像に難くない。

「Hey」
「……何か?」
「ここの桜はどんなもんだ?」
「毎年、見事に咲き誇り、舞い散る様も可憐である。
 夜桜よりも昼間の方が映えますな」
「そうか、見てみたいもんだな」
「見ればよかろう、何を遠慮するものか」
「Thanks, じゃあ、花見してから帰るとするさ」
「あ……」

しまった、乗せられた。
そう思ったものの、あまり悪い気がしなかったのは。
あまりにも長く一緒に居すぎたせいで情が移ったのだと。
自分で自分に言い聞かせた。

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してやったり伊達政宗。
どうせ言うことを聞かないのだから、反対のことを言ってやれ。
この期間で真田幸村の人となりを把握した模様。

春も近くなり、上田に留まる理由がなくなる。
そう思うと名残惜しくなって、ほんの少しの期間延長。
あまりにも長く一緒に居すぎたせいで情が移ったと。
そう理由づけたのは、何も真田だけじゃない。

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