端と底を行き来するRPG

そのとき、きっと誰かの中心blog。
アーカイブにある作品は人事を尽くした盛者必衰の入れ替え制。

どうしても君がいい

2008-05-10 21:13:57 | ポケモン系
「おはよう、ザングス」
「おう」

いつものように朝が来た。
いつものように迎えに行き。
いつものように朝食前の散歩に行く。

はずだったのだが。

ガッ!!!

あらぬ方向からの衝撃。
予期せぬことに思わず意識を手放す。
アラン!と聞こえたような気がしたけど。
これは都合のいい空耳なのかもしれない。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

晴れた日。
彼は勉強と魔力系がからきしで、今度再テストを受けることになっていた。
僕が練習に付き合ってだいぶマシになったけど合格するにはまだ足りなかった。

「困った、マジでどうすっかな…」
「練習。 それしかないでしょう?」
「ちぇっ、アランボーめ」
「なんです、それ」
「………、なんでもない」

一緒にいるようになって「2年」が経つけど。
時々、ザングスの言うことが分からなかった。
まぁ、いいかと「でんこうせっか」の練習に気を引き締める。
合格基準は、確か45cm先の目標物を落すことだ。
触れることは出来たから、あとは威力。

「さぁ、やりましょう」
「へいへい」
「勝負しろっ、ザングス!!」

練習場所に響いた声。
びっくりして、声のした先をみると女の子。
ズボンを履いて、髪を縛り、まるで「男装」したかのようにきりりとした子だ。
ぽかんとするザングスと視線を切り結んでいる。
見覚えがありすぎる女の子の名前を呼ぶ。

「トキコ…」
「どうしたっ、怖くて声も出ないか!」

トキコは、どうしても勝負をしたいらしい。
ザングスは反応に困っているようで、先ほどからぴくりともしない。

「トキコ、どうして君がここにいるんだ?」
「ザングスに用があるからだ!」
「どんな?」
「ど、どんなって…」

ここに来て、急に勢いがなくなる。
なんだ、ただ邪魔したいだけか?
時々、ザングスも勢いだけで話をしだして萎縮することがある。
きっとそれだろう。

「ただ邪魔したいだけなら、用は済んだろ? 帰れ」
「なっ、まだ、終わってない!!」
「まだ邪魔する気か?」
「勝負をさせろ! そのために来た!」

トキコがこんなに噛み付くとは。
ザングスが何かひどいことをした?

「いいぜ、勝負しよう」
「ほ、本当か!」
「ザングスっ」

ぎょっとする僕をよそに、ザングスがにやっと笑う。
トキコは目を輝かせて、勝負勝負と「尻尾を振っている」。
やれやれ、どうしてこんなことに?
戸惑う僕は隅に移動して、二人を見守る。

「やぁー!!」

先に切り込んだのはトキコ。
見た目どおりの女剣士らしい動き。
一方のザングスは「おぅ!」と気合を入れて、その場に立ち、受け止める。
カァーン、と木刀のぶつかり合う音があたりに響く。
気がざわめいて、僕も思わず雄たけびを上げたくなる。

「ちぃっ、やるじゃないか!」

間合いを取って、構えなおす。
ヤバイ!

「ザングスっ!!」
「でんこうせっか!!」

衝撃波がザングスを襲う。
ある程度完成しているでんこうせっかは耐えられる攻撃ではない!!
しかし、僕の心配は余計だったらしい。
ザングスはひょいっと後ろに大きく動いて、間合いをさらに広げたのだ。
これなら、攻撃は届かない。

「わりぃ、俺の負けでいいから、この勝負終わりな!」
「な、なんでっ!!」
「トキコ、終わりだ」
「止めるな、アラン! なんでだ、逃げるのか!」

負けず嫌いなザングスがそう言ったのだ。
トキコを引きずって、僕は帰る旨を告げた。


別の日。
僕は不良に絡まれた。
ザングスが気に入らないらしく、そばにいる僕をとっちめることにしたらしい。
なんで本人にいかないんだ?といつものように聞くと。
うるせぇ!とミゾオチに一発。
思わず咳き込んでいると、たったった!と足音がする。

「大人数で何してんの!」
「なんだぁ!?」

きりりと髪を結んだ女の子が、そこに立っていた。
足が震えているのが、相手に分かったらしく。
途端にいやな笑みを浮かべている。

「女がいきがってんじゃねぇぞ!」
「ひゃ!」

力で押さえつけられたら、もう負けだ。
両手を掴まれて、身動きが取れなくなってしまった。
イタイイタイ!と上げる声が、まるで「女」だ。
自分も痛みで意識が飛びそうで、とても助けてやれない。
と、荒っぽい足音が遠くからしたと思った瞬間。
「がふっ!」と一人が飛んだ。
「あ!?」と言ってる間にもうひとり。

「ヒーローは遅れてくるもんだ」
「ざ、ザングス!」

彼の足元は裸足だった。
なるほど、靴を飛ばしたのか。
不良の顔から余裕が消えて、トキコを盾に逃げようとしている。

「く、来るなよ!」
「行かねぇよ」

それっ、と踵を返そうとする不良に聞こえるか聞こえないか。
僕の耳にはギリギリ届いた声。

「俺は、ね」

シュン!と風が通り抜ける。
ぐおっ!!と妙な声を上げて、倒れる不良を見てようやく分かった。
ザングスは「でんこうせっか」を放ったのだ、と。


「あ、ありがと…」
「いやいや、俺こそすまなかったな」
「??? どうして、謝るんです?」
「あいつはほっとけ。諦めろ」
「う…、うん」
「おい?」
「トキコとの実戦のおかげで、でんこうせっかが出来たし。
 借りが出来たな」
「そ、そんなこと…」
「何かあったらな、俺のとこに来いよ。 な!」

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「う…うん?」
「アラン! 大丈夫か!」

随分昔の夢を見た気がする。
ぼーっとする頭で何が起きたか整理する。
いつものように歩いていたら、そう、衝撃があったのだ。
ザングスがほっとして、「傍らに立つ」もう一人に怒鳴る。

「トキコ! 手加減したのか!」
「うるさい! ザングスのことを独占するのが悪い!」
「お前、アラン派だったじゃねぇか!」
「今はザングスなの!!」

あー、うるさい。
最近分かったことなのだが、以前トキコは僕のことが好きだったようだ。
連日、僕を独占するザングスを疎ましく思って決闘。
そして助けられて、ときめいてしまったということだ。
女の心と秋の空とはよく言ったもので。

「何かあったらな、俺のとこに来いって言った!」
「何もねぇだろうよ!?」
「寂しい!」
「ふぇぁ?」
「声になってないですよ、ザングス」

さて、どうしましょうかね。

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幼馴染ーずで、三角関係。
修羅場ってるよねー?

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