端と底を行き来するRPG

そのとき、きっと誰かの中心blog。
アーカイブにある作品は人事を尽くした盛者必衰の入れ替え制。

若き王の戦い

2009-03-20 22:40:26 | ティアクライス
構えた剣を横へなぎ払う。
相手はそれを予期していたようにひらりとかわし。
カウンターでジャンプ。
飛び掛ってきた相手に対し、彼は「うっ…!」と悲鳴をひとつ。
攻撃は当たらなかったものの、彼は疲弊していた。
手が痺れる。
喉はカラカラだ。
それでも、彼は勝たなければならなかった。

 男児たるもの強くあれ。
 王たるもの強くあれ。

彼は、その言葉に対し、答えが持てずにいた。
自分は「強くある意味」をどこに見出しているのか、と。


Fight of young King

「シャムスよ、お前は男児だ。
 男児たるもの強くなければいかん。
 頭だけがよくても、いい国は作れまいぞ」

父がよく言っていた言葉だ。
その言葉の裏に、なんとなくの”色気”も感じて。
好きな言葉ではなかった。

「シャムス、いいですか?
 あなたは、皇太子なのです。
 後の王となるべき者として強くありなさい」

母がよく言っていた言葉だ。
その言葉の後には必ず。
”この国の未来を背負って立っているのですから”と続いた。
自分に多大な期待を寄せている母に何も言えなかった。



「どうして強いかって?」

最終決戦を終え、日常に戻って3日後。
僕は”団長”に聞いてみた。
「なぜ、そんなに強いのですか」と。

「別に、俺は強くねぇぞ?
 強さだったら、ヴァズロフのおっさんの方が上だしな」
「そ、そうですが…」

本当のことだ。
強さだけで言うなら、リジッドフォークのヴァズロフ将軍より強い者はいない。
けれど、自分の求めている「強さ」ではなかった。
では…?

「何か、悩んでるんだったらさ。
 アスアドとかタージに聞いてみればいいんじゃね?
 俺なんかよりよっぽど答え持ってると思うぜ?」



「彼の強さの理由ですか…?」
「アスアドは知っていますか?」
「知っているというか…、そうではないかという意見はあります」
「聞かせてください」
「あくまで、私の見解にすぎませんが。
 彼のよく言う『やってみなければわからない』という言葉。
 あの言葉にこそ強さの理由があると考えます」

「『やってみなければわからない』
 それはつまり、『自分が絶対なんとかする』という意思。
 それに準ずる確固たる覚悟」

「シャムス様がなぜ今、強さを求めたいと思ったのか。
 それを整理してみてはいかがでしょう?」


アスアドと話したちょっとの時間。
僕の思考は、ある答えをはじき出していた。
そうか、そうだったのか。


「クラグバークへ一人で行くのですか?」
「うん、留守の間、マナリルのことを頼むよ」
「しかし…、シャムス様」
「タージ、お願いだ」

一緒に行こうとしてくれるタージを抑えて。
僕は一人準備を整えた。
夜明け前。
心配そうなタージを部屋に待機させて。
僕は決意を胸に決戦の地へ。
「アレ」がいるのは、今はあそこしかない。


「…見つけた」
目の前に広がる広い草原。
そこに一頭の獅子。
マルシナ平原の主だ。
体は小さいから、まだ子供なのだろう。
握り締めた剣の柄が汗ばむ。
僕は、あいつと戦う。

『成人の儀』
王家の男は14歳になったとき、獅子と対峙しなければならない。
ジャナムはなくなって、僕はまだ14になっていない。
やらなければいけない理由も、資格もない。
でも、「やりたい理由」が僕にはあるのだ。

「うわあああああああ!!」

振り下ろした剣は、カチンと音を立てて阻まれた。
しまった、と思ったがもう遅い。
振り下ろした剣は獅子の牙に当たって、ダメージを与えることが出来なかった。
グルルルと大きな牙をこちらに見せつけ、獅子は僕をにらむ。
瞬間、相手が突っ込んできて吹っ飛ばされた。
ごろごろと転がり、全身が満遍なく痛んだ。
いつもは、タージがいる。
僕が攻撃されそうになると、身を挺して守ってくれた。
傷つけば、傷を癒してくれた。
でも。
それじゃ…、ダメなんだ。

僕は、王だ。
王ならみんなを守らなきゃいけない。
君を、マナリルを守らなきゃいけない。
君はいつも心配そうに僕を見る。
怪我をしないか、襲われないか。
僕は王だ。
もう大丈夫だよと言いたい。
君にとって、胸を張れる王になりたい。
マナリルにとって、自慢の兄で、強い兄でいたい。

呼吸を整え、僕は剣を相手に向けなおした。
構えた剣を横へなぎ払う。
相手はそれを予期していたようにひらりとかわし。
カウンターでジャンプ。
飛び掛ってきた相手に対し、「うっ…!」と悲鳴をひとつ。
負ける…!!そう思ったとき。

 彼のよく言う『やってみなければわからない』という言葉。
 あの言葉にこそ強さの理由があると考えます。

 『やってみなければわからない』
 それはつまり、『自分が絶対なんとかする』という意思。
 それに準ずる確固たる覚悟。

確固たる覚悟。
そうだ、僕は。

「民を守れる王でありたいんだ」

グオオオオオオオ!!と獅子が突進してきた。
頭が冷静になった。
そうだ、来い。
ここはどこだ?
そう、草原だ。
君が削った大地。
さぁ、これを目にひっかけたらどうかな?

土を蹴り上げる。
ギャアア!と獅子が悲鳴を上げた。
こちらにも多少は飛んできたが、気にならなかった。
なんせ、こちらは”砂漠生まれ”だ。
耐性のない獅子には耐え難い痛みが目を襲う。
一気に間合いをつめ、相手めがけて剣を振り下ろす。
手ごたえあり。
ヒャアアア…という悲鳴と共に。
獅子は地面へと沈んだ。


男児たるもの強くあれ。
王たるもの強くあれ。

僕はこの言葉が好きじゃない。
男だから強くなきゃいけないというのは僕の性に合わない。
王だから強いというのも何か変だ。
僕は、民を守りたいから、安心させたいから強くありたい。
僕の「強さ」は、そこにありたい。

「おおおおおーーーー!!!!」

大声を上げて僕は高らかに剣を掲げた。
シャムス。
僕の名前だ。
意味は、太陽。

その名に恥じぬ、生き方を僕は歩みだせたろうか。


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誕生日おめでとう強化月間第三弾。
第二弾ではちょっと意地悪したので。(自分的には最高傑作なんだが)
某兎さんの大本命をちょいと書いてみました。
もらっていく、いかないは自由です。
アスアド率が何気に高いのは、私(わたし)用ですw
3月中ならリクエスト受けるので。
この機会を利用してエネルギー充填を図るのもひとつの手。

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