端と底を行き来するRPG

そのとき、きっと誰かの中心blog。
アーカイブにある作品は人事を尽くした盛者必衰の入れ替え制。

馬威駆乗りS

2011-11-01 00:00:00 | BASARA
趣味を持ったら、と言われたので。
じゃあ、と選んだのが。

Young Tiger の場合

家庭の事情で幼い頃から家事手伝いをしていた。
不器用、と言えば聞こえはいいが。
皿を割ったり、汁物を床に溢したりするので。
もっぱら買い出し部隊として活躍していた。
片付けたそばから、ものを破壊されてはたまらなかったのだろう。
要するに「邪魔だから」外に追い出されていたのだ。
しかし、外に出ることが好きだった俺は苦にも思っていなかった。
買い物メモを渡されてスキップしていたくらい。
その様子になぜか、佐助は微妙な顔をしていた。

高校生になり、背もすっかり伸びた。
趣味が「筋トレ」「買い出し」と言ってドン引きされた。
クラスの連中になんてもったいない、と嘆かれた。
特に女子に。
買い出しの戦利品を冷蔵庫に片付けながら、佐助に経緯を話す。
佐助がため息を吐きながら、手のひらで目元を覆った。
この行動は、あまり感心していないときにする。
そして、育て方間違ったかなぁ、と呟いた。
随分と小声だったから俺じゃなきゃ聞こえなかったろう。
耳はいい方らしいことは、身体検査で知った。

「……旦那、趣味持とっか」
「だから、筋トレと買い出し」
「それもいいけど、もっと若者っぽいやつ。
 見てくれはいいんだから、かまいなさいって」
「むぅ」

若者っぽいとは何ぞや?と問いたかったが。
それを言ったら叩かれることは予想が付いた。
なので、すっと思いついたものを言ってみた。

大型自動二輪免許を選択したのは何となくだ。
いきなり大型はキツイと言われたが、全力でやれば何とかなるだろう。
車体も軽々と起きあがらせて。
振動を太股と腕でぴたりと止めてみせれば文句は言われなかった。
伊達に十何年もママチャリを漕いではいない。
タイムセールスに間に合わせるために必死だった。
出遅れれば買えないのだから、死活問題である。
マイペースで教習を受け、半年ほどで免許を取得した。

バイクは高くて買えないなぁと諦めていたら。
佐助がコネで安く手に入れてくれた。
赤い車体に炎をデザインしたオンロードバイク。
レーサーレプリカタイプという分類のもの。
さすが佐助、俺の趣味をわかっている。
せっかくなので乗るだけ乗ってみる。
フルフェイスのメットを被って前傾姿勢。
まるでレーサーだな、と言うと本当にレースしないでよと返された。
競争相手がいなければ大丈夫だ。

新聞に載った曲芸集団の記事。
世の中には面白い人物がまだまだいるのだな、佐助!

「そうね、でもそんな人と知り合いになっちゃダメだよ」
「どこの誰とも分からぬのに、どうやって知り合うのだ」
「だって、目撃場所がここの近くだよ?
 一輪車で高速乗らないでしょ」
「それもそうだな」

そこまで話して腕時計を見る。
む、いかん、タイムサービスの時間だ。
鍵を引っ掴んで、飛び出していく。
いざというときは、やはりママチャリだ。

「ぬおおおおおおお!!!」

佐助がぼそりと何か言った。
おそらく、こうだ。

あーぁ、もう、台無し。

**********************

伊達政宗をやったら、幸村さんでしょう。
馬威駆乗りシリーズが続いたら、自分の首を絞めることになります。
だって、バイク乗ったことないもの…(ぇ

本日(11/1)は「ワンワンの日」らしいです。
そんな日に、真田幸村の話を載せられるとはなんという偶然。
自分のなかで幸村は「わんこ」でございます。


本編中に「真田幸村」の名前は一切出てきませんでした。
書き終わった後に気付いた。
書く隙がなかったというか、必要がなかった。
佐助の存在価値を知る。

高速一輪車と高速ママチャリを書きたかったんです。
本気を出した時のスピードは半端ない。

コメントを投稿