英霊として現界された我が王に敬意を払い。
忠誠を誓い、忠義を示してきた。
そこへ『敬愛』の色を強めた頃の話である。
ください!
我が王たるギルガメッシュはよく出かけられた。
外出しない私と四六時中一緒では息が詰まるとのこと。
仕方のないことだ。
私は室内で読書をするのが日課だったから。
魔術師としての鍛錬にも時間を割いていると。
あっと言う間に一日が終わってしまうのだ。
そんな生活に突然、変化が起きた。
「時臣、送別のキスをしろ」
所謂『いってらっしゃいのキス』だ。
少し迷ったが。
妻と娘、意外と純情な弟子には見られたくありません、とだけ伝える。
「してもいいということだな?」
今にして思えばこれがいけなかったのだろう。
我が王はことあるごとにキスをするようになった。
いってらっしゃいのキスだけだったのが。
おかえりなさいのキスも求められるようになり。
朝起きたら、まずお前の顔を見たいと宣われたので。
おはようのキスを交わすようになった。
おはようがあるなら、おやすみもだろう!と。
半強制的におやすみのキスもするようなる。
頬へのキスを不満とし、全てマウストゥマウス。
実のところ、妻と交わしたキスより回数が多い。
そして妻子と弟子に隠すのもなかなか難しくなった。
「最近、ギルガメッシュと一緒にいる時間が多いようですが?」
「そのようなことはないよ。
君が見かけるタイミングがたまたまそうなだけだ」
「そうですか」
綺礼がそう思うのは無理もない。
ギルガメッシュの在宅中は、ほとんど一緒にいるのだ。
実は妻子といるより一緒にいる時間が長い。
そのうち、娘は泣いてしまうかも知れない。
そうなったら大変だ。
家訓に背くことになってしまう。
意を決して意見することにした。
「我が王、送迎のキス及び睡眠時のキスについてなのですが。
しばらく控えてはいただけませんか」
「何故だ!!!我のことが嫌いになったか!!!」
「そんなわけないでしょうっ!?
家族サービスさせてくださいって申しておるのです!」
「何分だ?」
「スリーデイズ」
ぴきっとギルガメッシュが固まった。
カタカタと体が震えだし、膝が落ちそうになる。
私の肩をがっしと掴んで。
「無理!!干からびてしまうっ!!せめて1日!」
「ノー、譲歩してもトゥーデイズ」
「長い!!1.5日!!」
「1.5日ですね?絶対ですね?」
「できるだけ努力しよう」
我が王が『私のため』に努力なさるという。
なんともったいなき言葉であろうか。
とりあえず、ヨダレ拭いてください。
結論から言うと、1.5時間しかもたなかった。
いってらっしゃいのキスがなかった時点でダメだったようで。
後ろに気配を感じたと思ったら、顎を掴まれて。
振り向きざまにキスされた。
ギルガメッシュは霧散して姿を消してしまうので。
あとには、ただ呆然と佇むだけの優雅な私が取り残される。
娘の冷ややかな目が頬に突き刺さった。
ウォータークローゼットで読書をしていると。
突然、ドアが開け放たれた。
娘との不幸な出会い頭の事故があってから。
ズボンは床まで落としきらないようにしていたので。
『見られは』しなかったが、きゃー!と悲鳴をあげてしまった。
両頬を手で挟まれて唇を奪われた。
相手は、当然の如く我が王である。
ドアを閉めないで霧散されたので。
妻が目の笑っていない笑顔で閉めてくれた。
もうキスされてなるものか、というわけで。
警戒心を漲らせ、徹底して近付けさせないようにした。
これでも魔術師である。
対策などいくらでもできる。
「せいやっ!!」
「!!!」
突然の足払い。
後ろに倒れそうになったところに、腰に手を添えられて。
まるで社交ダンスの反りだ。
そのまま、唇を奪われる。
ぶちゅーっとマンガでは効果音がつきそうだ。
滅多に伸びない筋が伸びたらしく。
キスされたあと、妻の手を借りないと椅子から立ち上がれなくなった。
提示した1.5日の間、ひたすらキスされ続けた。
窓を開けたら、上からスパイダーマンキス。
風呂に入っていると、湯船から飛び出してキスをされ。
青のプラゴミ箱から飛び出してキスをされ。
挙げ句、部屋の床が突然開いてキスされた。
忍者か。
しかも、全てやるだけやって消えてしまう。
キスする以外のアクションはない。
残された私はどうすればいいのか。
妻と娘のクールな目元が一段と輝いて。
私の心は砕けそうだ。
「王!約束を反故するのですか!」
「我は王だ、やりたいと思ったらやるのが王だ」
「民草の意見を聞かずば、やがて滅びましょう!」
「滅びないもーん、我の国は滅びたりしないもーん」
「子供ですか!」
ギルガメッシュは、少し拗ねたように。
唇を尖らせて小さな声で言う。
「時臣とキスしたかっただけだ。
それはダメなことなのか?」
「ムードを作ってください。
さすれば、素直に流されましょう」
このように、と巻いていたスカーフを外し。
ギルガメッシュの顔を正面からソレで捕まえ。
己の顔をすっと近付けた。
あともう少しで唇が触れるという時に。
うわああ!と思い切り、肩を押された。
予想だにしていなかったので、一気に硬直。
体は時間を忘れたように一切動かない。
その間に、ギルガメッシュは乱れた息を整えている。
「時臣のくせに生意気だ!!!」
涙目になって訴えてくる。
解せぬ。
「お前は!我のキスだけ受けていればいいのだ!!」
「で、あれば。
もうなにも言いますまい、従来通り送迎のキスは致しましょう」
「オハヨウとオヤスミもだ!」
「承知いたしました」
ああ、やはり王にはドヤ顔が似合う。
こうして『時臣の乱』は収束した。
乱は終わったが変わったことがある。
王が愛おしそうにキスをくださるようになった。
忠誠を誓い、忠義を示してきた。
そこへ『敬愛』の色を強めた頃の話である。
ください!
我が王たるギルガメッシュはよく出かけられた。
外出しない私と四六時中一緒では息が詰まるとのこと。
仕方のないことだ。
私は室内で読書をするのが日課だったから。
魔術師としての鍛錬にも時間を割いていると。
あっと言う間に一日が終わってしまうのだ。
そんな生活に突然、変化が起きた。
「時臣、送別のキスをしろ」
所謂『いってらっしゃいのキス』だ。
少し迷ったが。
妻と娘、意外と純情な弟子には見られたくありません、とだけ伝える。
「してもいいということだな?」
今にして思えばこれがいけなかったのだろう。
我が王はことあるごとにキスをするようになった。
いってらっしゃいのキスだけだったのが。
おかえりなさいのキスも求められるようになり。
朝起きたら、まずお前の顔を見たいと宣われたので。
おはようのキスを交わすようになった。
おはようがあるなら、おやすみもだろう!と。
半強制的におやすみのキスもするようなる。
頬へのキスを不満とし、全てマウストゥマウス。
実のところ、妻と交わしたキスより回数が多い。
そして妻子と弟子に隠すのもなかなか難しくなった。
「最近、ギルガメッシュと一緒にいる時間が多いようですが?」
「そのようなことはないよ。
君が見かけるタイミングがたまたまそうなだけだ」
「そうですか」
綺礼がそう思うのは無理もない。
ギルガメッシュの在宅中は、ほとんど一緒にいるのだ。
実は妻子といるより一緒にいる時間が長い。
そのうち、娘は泣いてしまうかも知れない。
そうなったら大変だ。
家訓に背くことになってしまう。
意を決して意見することにした。
「我が王、送迎のキス及び睡眠時のキスについてなのですが。
しばらく控えてはいただけませんか」
「何故だ!!!我のことが嫌いになったか!!!」
「そんなわけないでしょうっ!?
家族サービスさせてくださいって申しておるのです!」
「何分だ?」
「スリーデイズ」
ぴきっとギルガメッシュが固まった。
カタカタと体が震えだし、膝が落ちそうになる。
私の肩をがっしと掴んで。
「無理!!干からびてしまうっ!!せめて1日!」
「ノー、譲歩してもトゥーデイズ」
「長い!!1.5日!!」
「1.5日ですね?絶対ですね?」
「できるだけ努力しよう」
我が王が『私のため』に努力なさるという。
なんともったいなき言葉であろうか。
とりあえず、ヨダレ拭いてください。
結論から言うと、1.5時間しかもたなかった。
いってらっしゃいのキスがなかった時点でダメだったようで。
後ろに気配を感じたと思ったら、顎を掴まれて。
振り向きざまにキスされた。
ギルガメッシュは霧散して姿を消してしまうので。
あとには、ただ呆然と佇むだけの優雅な私が取り残される。
娘の冷ややかな目が頬に突き刺さった。
ウォータークローゼットで読書をしていると。
突然、ドアが開け放たれた。
娘との不幸な出会い頭の事故があってから。
ズボンは床まで落としきらないようにしていたので。
『見られは』しなかったが、きゃー!と悲鳴をあげてしまった。
両頬を手で挟まれて唇を奪われた。
相手は、当然の如く我が王である。
ドアを閉めないで霧散されたので。
妻が目の笑っていない笑顔で閉めてくれた。
もうキスされてなるものか、というわけで。
警戒心を漲らせ、徹底して近付けさせないようにした。
これでも魔術師である。
対策などいくらでもできる。
「せいやっ!!」
「!!!」
突然の足払い。
後ろに倒れそうになったところに、腰に手を添えられて。
まるで社交ダンスの反りだ。
そのまま、唇を奪われる。
ぶちゅーっとマンガでは効果音がつきそうだ。
滅多に伸びない筋が伸びたらしく。
キスされたあと、妻の手を借りないと椅子から立ち上がれなくなった。
提示した1.5日の間、ひたすらキスされ続けた。
窓を開けたら、上からスパイダーマンキス。
風呂に入っていると、湯船から飛び出してキスをされ。
青のプラゴミ箱から飛び出してキスをされ。
挙げ句、部屋の床が突然開いてキスされた。
忍者か。
しかも、全てやるだけやって消えてしまう。
キスする以外のアクションはない。
残された私はどうすればいいのか。
妻と娘のクールな目元が一段と輝いて。
私の心は砕けそうだ。
「王!約束を反故するのですか!」
「我は王だ、やりたいと思ったらやるのが王だ」
「民草の意見を聞かずば、やがて滅びましょう!」
「滅びないもーん、我の国は滅びたりしないもーん」
「子供ですか!」
ギルガメッシュは、少し拗ねたように。
唇を尖らせて小さな声で言う。
「時臣とキスしたかっただけだ。
それはダメなことなのか?」
「ムードを作ってください。
さすれば、素直に流されましょう」
このように、と巻いていたスカーフを外し。
ギルガメッシュの顔を正面からソレで捕まえ。
己の顔をすっと近付けた。
あともう少しで唇が触れるという時に。
うわああ!と思い切り、肩を押された。
予想だにしていなかったので、一気に硬直。
体は時間を忘れたように一切動かない。
その間に、ギルガメッシュは乱れた息を整えている。
「時臣のくせに生意気だ!!!」
涙目になって訴えてくる。
解せぬ。
「お前は!我のキスだけ受けていればいいのだ!!」
「で、あれば。
もうなにも言いますまい、従来通り送迎のキスは致しましょう」
「オハヨウとオヤスミもだ!」
「承知いたしました」
ああ、やはり王にはドヤ顔が似合う。
こうして『時臣の乱』は収束した。
乱は終わったが変わったことがある。
王が愛おしそうにキスをくださるようになった。
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