端と底を行き来するRPG

そのとき、きっと誰かの中心blog。
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変わらない距離

2013-06-10 00:00:00 | 友情が愛情だった5題
友情が愛情だった5題
- ずっと隣にいたのに、気付いたのは今更 -

5.変わらない距離

俺は、ひとりだった。
別に好きでなっているわけではなかったが。
今まで一緒にいた『相棒』とクラスが分かれたのだ。
どれだけ記憶を辿っても。
彼がいなかったことなどない1年であった。

放課後を告げるチャイム。
部室に足を向けて。
ようやく『日常』を取り戻す。

「よっ!」

彼を見ずに廊下を歩く。
声かけもしないし、目も合わせない。
彼も何も言わず、付かず離れず、右側に気配をさせる。

「新しいクラスはどう?」
「…―無色だな」

そう、前の座席に騒がしい気配がない。
常に隣にあった安心感がない。
色がない。
息苦しささえ感じて、ひたすら読書で紛らわす。

「言ったろ?
 何でもない日常は尊いってさ」

ああ、そうだな。
きっとお前の性格だから、もう隣に誰かがいるのだろう。
それが友人でも、仲間でも。
はたまた恋人でも、俺には何も口出し出来ない。
何かを言う筋合いもない。
親でも、兄弟でも、そして今や同級生でもない。
同じ部活のPGとSG。
ただ、それだけのつながり。

「俺が緑間の隣にいたのはね。
 当たり前だったけど『特別』なことだったんだよ」

彼の左側。
俺の右側。
互いの指定位置。
いる方が珍しくなった。

この距離間がもどかしい。
気付いたのは今更で。
歩み寄らなかったのは俺の落ち度で。
彼は待っていてくれたのだ。
それなのに。

高尾和成。
俺が友情と思って愛情を注いでいたひと。

変わらない距離。
それが、今はひどく残酷だった。

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何も生み出さない話。
彼らはずっと『チームメイト』

自分ルール発動
・緑間と彼の台詞しか出さない
・緑間以外の名前は出さない
・『彼』の名前は一回だけ呼ぶ

イメージでぽつぽつ書いていったらすごく暗い感じの話になった。
夏は比較的明るいかな。
彼が恋愛に臆病だとこうなる、ってことなんだろうなぁ。
帰りの電車でガーッと書いたので、若干BGMの影響もあると思う。

1.と5.は、同じ文章構成にしています。
台詞を少しだけ変えたり、白文も意図的に同じものを使っていたり。
一年前と『変わらない』っていうことを表現したかったからです。

ふたりには幸せになってほしいけど。
相手が必ずしも『彼』ではないことを知る。

お題コンプ。
おは朝で鍛えた直感での文章構成が火を噴いたぜ。

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