端と底を行き来するRPG

そのとき、きっと誰かの中心blog。
アーカイブにある作品は人事を尽くした盛者必衰の入れ替え制。

LOVE PHANTOM07

2010-01-03 08:00:00 | ワンピース
なぁ、ロロノア。
俺、あんたを救いたいんだ。

LOVE PHANTOM

「怒りを鎮めろ、ロロノア。
 てめぇ、力で押さえつけられたいか?」
『あぁ?』
「滅することは無理でも、押さえるだけの力はあるぜ?
 試すか? 痛ェぞ?」
「待てよ!! こいつ、怨霊なんかじゃ!」
「荒ぶる魂はただでさえ凶器だ。
 死霊なんだぜ?
 このままじゃあ、怨霊と変わりゃしねぇよ」

そうだ、こいつ、死んでんだ。
どんなに人間くさい表情をしていても。
俺とこいつは相入れない。
交わることなんて出来ない。

「サンジ、一晩で結論を出せ。
 てめぇが追い出すか、俺が追い出すか。
 一緒にいるっていう選択肢はなしだ。
 お前には悪いが、今のままじゃ置いとけねぇ」

ゼフの表情は硬い。
自然、膝の上の握り拳が汗ばむ。
あんたを追い出す?

「…早いうちに決断をした方がいいわ。
 本来の守護霊でないことはリスクが大きいから」

リスクが大きい?
今までの守護霊が何かしてくれたか?
ゾロはいい奴だよ。
裏切られて傷ついたのはこいつなんだよ。
なのに、何でまたこいつを邪険にするんだ。
いや、分かってる。
どんな理由があっても、現世に残ってたらいけないってことくらい。

「…話し合っていいかな?」
「ほどほどにな」

ニコ・ロビンを見送り、湯呑みを片付ける。
ゼフに「いいか、一晩だぞ」と念を押されて。
俺は自室に引っ込んだ。

「…すっかり大事(おおごと)だ」
『そうだな』
「せっかく慣れてきたのに」

膝を抱えて、顔を埋める。
唇を噛んで感情を殺そうと努めた。
今の俺は、ひどく動揺していた。

『…サンジ』
「あんたは…やっぱり怨霊なのか?」
『…そうだ。
 お前を護ろうとするたび。
 お前を想うたび、俺は悪霊に近付く』
「おかしいだろ、そんなの…」
『何かに執着する気持ちが死霊の正体だから。
 最初は、誰かに感謝されたくてここに残ったんだがな。
 感謝はお前がしてくれた。
 けど、今度はお前に執着しちまった』
「…ゾロ?」
『サンジ、約束したよな?
 俺が怨霊になる前に成仏させてやるって』
「っ!! おい!」
『やってくれ、サンジ。
 俺、悪霊にだけはなりたくねぇんだ。
 お前を想うことが凶器なら、俺は腹を切る』

思わずその場に立ち上がる。
冗談じゃない!

「俺があんたを放せるわけないだろう!?
 執着してるのは俺だ!
 ゾロじゃねぇ!!」
『サンジ』
「何もかも全部捨てたっていいんだ!
 俺は…」
『サンジ』
「…ゾロを尊敬してるんだ」

涙が出る。
ずいぶんひどい裏切りにあったのに。
人間である俺を必死に護ってくれた。
法力の訓練もしてくれた。
ちょっと神職に興味を持たせてくれた。
きっかけは全部あんたなんだ。

『前にも言ったが、自力で成仏するのは無理だ。
 今はお前への未練がある。
 けど、成仏する気がある今なら。
 お前の法力と併せて成仏できるはずだ』

その日、俺は泣きながら経文を読んだ。
鼻水も涙も止まらなかった。
あの日、俺に懐いた幽霊。
武芸の神様で、怨霊で、俺の守護霊になった。

『ありがとな、サンジ』

そして、消える間際に。
感謝されたがってた奴に感謝されてしまった。
ちくしょう、俺は感謝されることなんてしてねぇ。

『…何かしたろ?』
『迷惑だったか?』
『いや、助かった』

『ありがとう』

感謝するのは、俺のほうなのに。

**********************

相手を想う気持ちが凶器。
触りたくても触れない。
欲しくても欲してはいけない。
全ては自分が幽霊だから。

あ、れ?
なんかすごく重い展開になってない?
うおおおお、マジか。
なんでこんなことに。

次回、最終回。

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