空の音色

poetry

早春

2007-02-26 | 


霧の森
かすむ空


おぼろ月
夢にとけ


君のいた
日々想う


あの日々を
あの日々よ





悲しみは
露に消え


また巡る
浅き春






2007-02-26 | 


スキップを
覚えたて
おかっぱが
ふわり揺れ

そよ風を
連れてきた
あの子春
まだ蕾




あどけない
目をしてて
笑うとね 
良いにおい

そよ風に
守られて
あの子春
甘えんぼ






2007-02-26 | 


砦で身をかがめていた春が
少しだけ顔を上げ
じっと辺りをうかがっている

うなじを撫でる風は仄白く

赤ん坊の乳くさいアクビ
額にふれる最初の雨粒
雛鳥の黄色いくちばし
虻の透き通った羽根の色
はたまた
恋人がくれた吐息のように

春はゆっくりと身を起こし
それから伸びをした



広野よ
堪え続けた命よ

春は手を広げ
おまえ達を抱き上げるだろう


ネジを巻かれた黒い森が
鳴り響く
この朝の日に








幸福

2007-02-19 | ひかり


こどもが
黄色い目やにをつけて
おはようと起きてきた

口の周りに
白い乳のような粉が
ついている

髪の毛はぽわぽわと
タンポポの綿毛のようで
吹けばそのまま
宙に浮かびそうだと思った



こどもが
小さなあくびを
ああんと声に出してするので
顔を洗いなさいと
洗面所に追い立てた

その間に
みそ汁を温めなおして
小さな茶碗に
ごはんをよそった


こどもが
まだ水滴のついた顔で
とことこと
食卓へ来るので
タオルで水滴をぬぐってやって
それから
席に促した


こどもは
小さな茶碗と
まだ上手にもてない
お箸を握って
ぼんやりごはんを
口へと運ぶ




朝の光が
こどもを包み
こどもの産毛が
光をはじく


こどもがこのまま
消えてしまいそうで
少し慌てて
ほらほらこぼさないでね
と誤魔化すみたいに
声を出してみる





幸福がこどもの姿をして
ここにいるのだ



幸福が行ってしまわないように
私はこどもを抱きしめる



きっとこの先
この子が大きくなったとしても
やっぱり私は抱きしめるだろう
こどもの姿をした幸福を


幸福の姿をした
私のこどもを






一日のはじまり

2007-02-18 | ひかり


朝の光が
つれてきた友達
小鳥の歌と
風のダンスと
カルピス色の空がお出迎え



朝の光が
つれてきた友達
今日も仲良く
すごせると良いね




ひと晩たって
元気になって
また会えたよね
よかったね


一日は無限大
子供の時間は永遠

永遠のカケラをつなげて
今日も
遊ぼう






その日

2007-02-17 | ひかり


その日

傷ついた夜空が
遠い宇宙にもたれて
泣きじゃくり


その日
生まれてきた星には
まだ名前もなく


その日
空き地の片隅で 
いちばん星を見つけた仔猫が
小さく鳴いた




その日
夜空は泣きつかれて眠り


その日
生まれたての星は
うれしさに眠れず


その日
仔猫は銀河に遊ぶ夢を見た





みんな ひとりぼっちだったけれど
みんな とても良い子だったよ







2007-02-17 | てのひらの海



子宮の奥の空洞は
確かにそこに存在はしているのでしょうが
私にはどうにも
架空のもののように思えてなりません


(時折呻くような声が聞こえてくる
大地が咽ているように思える
雷鳴が唸るようであり
無数の甲虫が蠢くようでもある)



体中のが煮えたぎるので
私は大きく口を開け
冷たい風を送りこもうと喘ぐのです


沸沸と滾る
熟し過ぎて腐った
果実のような匂いがします




深部からマグマ
音を立てながら
逃げ場所を求めて滲み出してくる
赤く黒く まだらに光るそれは
まるで私の内側に巣食っていた夕暮れ
じっとりと溶け出して
私は内部から
徐々に焼き殺されてゆく


耐えかねた私は
この実在する架空の場所に
死んでしまって冷たくなった満月
放りこんで眠りたい




貪りたいのです
数億光年の眠りを
膨張する未来を遮る
冬の夜のような静寂を


混沌の沈む空洞に
ひっそりと
ひとり









夜汽車

2007-02-17 | ひかり


夜汽車に乗れば良かった
今日私は

夜汽車に乗れば良かった
街の灯りを振り返ることなく
ためらいを置き去りにしたまま



夜汽車に乗れば良かった
あの日私は

手探りの明日を恐れずに
あやふやな記憶に惑わされないうちに


見知らぬ駅で迎える朝は
悲しい朝だと
なぜ思い込んでいたのだろう



夜汽車に乗ろう

小さな鞄を一つと
読みかけの詩集
必要なものはただそれだけ

遠のく汽笛を胸にしまって
朝がくれば見知らぬ駅に
静かに降り立てば良い



夜汽車に乗ろう
明日私は





がんばれ

2007-02-16 | 即興詩



力 
いれなくて
ほどほどでいいからさ

ふんわか
息をしてみて



すみっこなんて場所は
どこにもないのよ


みんながいる場所も
あなたがいる場所も



いつでもそこが
地球の真ん中







穴ぼこ

2007-02-16 | 即興詩


今、何もかもダメだって思う
ダメな時は、何やっても
ダメなんだって思う


今、わたし
穴ぼこの一番奥にはまっちゃってるって
想像したとき、
なんだかおかしくって
笑っちゃったよ


も、いいや


ここに、どれだけ長くとどまっていようと
ぼちぼちと、浮上していこうと
また、神様と
相談しながら決めるわ






娘が私にくれた詩(うた)

2007-02-16 | ひかり


おかあさん
あのね
だっこをしてよ


きょうね
がっこうで
かなしいことが
あったから




おかあさん
わたし
だっこがすきよ


だからね
わたしが
おとなになっても


ときどき
こうして
だっこをしてね


かなしくなったら
だっこを
してね






リボン

2007-02-07 | ゆびさきの森


夕暮れを振り返る
その向こう

永遠のリボンが
風にたなびいている



空を
この星ごと包むように

大切に
ひとめぐり
またひとめぐりして
限りないループを描く



染まりゆく青い黄昏を
やわらかく装い
待ち続けるしじまに
目印をつけながら


永遠のリボンは
今日も
静かに風に
たなびいている







魚の小骨

2007-02-07 | ゆびさきの森


言えなかった言葉が
魚の小骨化しちゃってさ

だから胸の奥
ちくんちくんと
少しだけ疼く


小骨にまた
次の小骨が引っかかって
それが少しずつ大きくなってゆき

ああ
魚の小骨の塊が
喉を塞ぐこともあるかしら


私はいよいよ寡黙になって
小骨の塊は
ますますふくれあがる




いつしかその塊が
魚に戻って泳ぐ日なんて
くるわけなんか
ないのにねぇ





ガシガシ

2007-02-05 | てのひらの海


時々
色々なことがわからなくなる

ここにいる私は
あそこにいた私とは違う私
頭の中に棲む私と
胸の中に棲む私と
子宮の中に棲む私は
そう
まるっきり違う私


今の私は
過去の私の未来形
まばゆく誇らしく幸福に満ちた
リョウサイケンボのキャリアウーマン?(うそつけ!)




本当の私はどこにもいない
本当の私はどこかに潜む
(マーマレードの小瓶で きろきろ うねる?)
(ローリエの葉の裏側に潜り込む?)


雨どいにはまって呻いてる
錆びついて グラグラの
もしかしてあれが
そうかもね



ほんもの
出てこい
洗ってあげる
ガシガシ こすって
消えちゃうほどに